ヒーローズエイト〜神に選ばれし8人の戦士達による新八犬伝最強救世主伝説〜

蒼月丸

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第四章 エルフの森の怪物騒動

第百十三話 新たな敵、アルバータドラゴン

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 零夜達は箱から転移して元の広場に戻り、メディアが前に出て説明を行おうとしていた。因みにラビリンはいつの間にか帰ったそうだ。

「全員揃ったわね。今回の件については合同チームで行うわ。リリア、説明を」
「はい」

 メディアの合図でリリアは自身のバングルからウインドウを召喚し、今回の目的地であるアルフェリア支部基地の画像を見せた。その基地は西部劇を元にした建物だが、全体が黒くて怖いとしか言えないだろう。

「アルフェリア支部基地はグラディアス世界にあるエルフの森の近くにありますが、そこには手強い怪物がいるとの情報があります」
「怪物?どんな奴だ?」

 リリアの説明に誰もが疑問に感じる中、アミリスが零夜達の前に移動し始める。その様子だと何か知っているのか皆が気になるが、彼女は真剣な表情をしながら一枚の手紙を取り出す。

「数日前にお祖父ちゃんから手紙が届いたわ。数年前に討伐したばかりのアルバータドラゴンが復活したって」
「アルバータドラゴンか……あの虹色のクリスタルドラゴンだな」

 アミリスの話にソニアは真剣な表情で考えていて、マーリンや杏も同様に真剣な表情をしていた。

「知っているのか?」
「ああ。数年前に奴が襲撃してしまい……アタイの仲間や家族も亡くなったからな……」
「「「!?」」」

 ソニアは目に涙を浮かべながら俯いていて、零夜達は彼女からの衝撃の事実に驚きを隠せなかった。彼女が今の姿になったのには、この出来事が切欠なのだろう。
 同時にソニアの村はアルバータドラゴンで壊滅してしまい、村における生き残りは彼女一人となってしまったのだ。

「アタイは杏と共に盗賊団に入って義賊として活動し、今の姿となったからな」
「ああ。因みにアタシも彼女とは同じ境遇だ」

 日和の質問に涙を指で拭いたソニアと杏が説明し、彼女達は納得の表情をする。ソニアと杏の連携がとても良く、神業となるコンビネーションも見事としか言えない。その切欠となった原因に皆が納得していたのだ。
 因みに杏も故郷をアルバータドラゴンに滅ぼされていて、オーガ族の最後の生き残りと言われているのだ。

「しかし、アークスレイヤーの奴等にやられてしまい、盗賊団は壊滅。アタイと杏は離れ離れになってしまい、その時にアミリスと出会ったんだ」
「アタシはマーリンと出会い、今があるからな。まあ、アークスレイヤーに捕まってしまった事は想定外だったけど……」

 ソニアと杏がこれまでの経緯を零夜達に説明し、アミリスとマーリンは苦笑いしながら頷く。 
 杏とマーリンはアークスレイヤーに捕まってしまった事は情けなさを感じているが、零夜達が助けてくれたからこそ今がある。もし、そうでなかったらどうなっていたか分からないし、死んでいる可能性があったのかも知れないだろう。

「アルバータドラゴンはお祖父ちゃん達や皆の力を合わせて討伐したけど、多くの犠牲者が出てしまったわ。その数は二千人以上」

 アミリスからの衝撃的な説明に、ミミ達は驚きを隠せずにいた。アルバータドラゴンの威力は凄まじく、下手すれば全滅する恐れもある。更に多くの犠牲者まで出すぐらいだから、今までよりもかなり難易度が高いと言えるだろう。
 ミミ達がアルバータドラゴンの恐怖で不安になる中、零夜、風子は真剣な表情をしながら落ち着いていた。

「奴との戦いはそれ程危険な展開が待ち受けているみたいだな。なら、そのドラゴンの卵を手に入れるのもありだと思うが」

 風子からの提案に零夜も頷きながら同意する。確かにドラゴンの卵を手に入れて孵化させ、育てれば貴重な戦力になる。チームにとっても個人にとっても、重宝するアイテムなのは間違いない。

「確かにそうですね。俺もその卵を欲しいですが、増殖できれば良いのですが……」

 零夜もドラゴンの卵が欲しくなるが、その卵は一つぐらいが普通だと言える。増える事ができればいいと考える中、アルビダが笑顔で彼の肩に手を置く。

「私なら増殖が可能だ。その事については任せてくれ」
「じゃあ、お願いします」

 零夜からの一礼にアルビダが笑顔で頷く。彼女は海賊だけでなく、物を増やす事も可能。ここぞという時に頼りになる存在だ。
 その直後、アミリスが彼に近付いて睨みつけてきた。どうやら話が別の方向に進んでいたので、黙ってはいられなかったのだろう。

「話の腰を折らないで。卵を回収するのは良いけど」
「はい……(卵を回収するのは良いのか……)」

 零夜は心の中で思いながらも謝罪し、アミリスは皆に対して説明を続ける。

「数年前は皆の力を合わせて討伐し終えたけど、アークスレイヤーによって復活したとなると更に強化しているわ。そうなると……私達が力を合わせて戦うしかないわ!」

 アミリスの宣言と同時に、全員が真剣な表情で一斉に頷く。このまま一致団結してアルバータドラゴンを倒しに向かおうとしたその時だった。


「確かにそれは同意見だけど、メディアのチームと組むのは嫌になるわね」
「そのムカつく声……奴ね!」


 メディアが怒りの表情で声のした方を向いた途端、水色のロングヘアとアラビア服を着た女神が姿を現す。その隣にはピンク色のボブヘアで、オーバーオールを着ている妖精までいるのだ。

「アミール……まさかあなたがプリンセスヴァルキリーズを率いているとはね……」

 クロエと呼ばれた女神の姿に、メディアが冷や汗を流してしまう。だが、彼女は平然とした表情でメディアに視線を移してきた。

「久し振りね。あなたもチームを結成しているけど、プリンセスヴァルキリーズの方が一枚上手だという事を忘れないで」

 アミールが零夜達に対して宣戦布告してしまい、彼等は思わず静かにキレてしまう。しかし、彼女の言った通り、プリンセスヴァルキリーズは実力者揃いだ。
 最強女侍の夏原風子、実力者である剣士のポーラ、努力家の魔術師のアナ、心優しき僧侶のメイリー、風子に仕えるメイドファイターの花咲夢子はなさきゆめこ、ドワーフの中でも最強女戦士のセリア、九尾の魔術格闘家である天狐、伝説の女海賊のアルビダ、そしてサポートフェアリーのリリアンヌで構成されている。まさにこのメンバーは最強軍団其の物としか言えない。

「ふざけんじゃないわよ!」

 アミールの余裕の笑みにメディアがカンカンに怒り、我慢できずに彼女に襲い掛かる。
 メディアはそのままアミールを前かがみにした状態で、腰側にある片脚を相手の手前側にある脚に絡め、相手の頭側にある脚を対戦相手の頭部に引っ掛けた状態にする。更に自分に対し外側になる腕を相手の背中側に直角に曲げ、自らの片腋に抱え込んだ。
 これぞメディアのプロレス技である卍固めだ。怒りまで加わるととても痛い。

「いだだだだ!」
「調子に乗るな、アホ女神!」

 アミールは痛そうに悲鳴を上げ、メディアは怒りの表情で青筋を立てていた。これに零夜達が唖然とするのも無理はない。

「アミール様はメディア様のライバルでありますが、アークスレイヤーを倒す同志です。しかし、この二人は仲が悪くて、対抗戦で決着を着けようかと……」
「まあ、これは仕方が無いかもな……」

 リリアンヌの説明に零夜達がため息をつく中、すぐにアミリスが手を叩いて全員の方を向く。

「ともかく、まずはエルフの森に向かってお祖父ちゃんの話を聞くわよ。もしかしたら倒す方法が見つかるかも知れないわ」
「確かにそうね。すぐに転移するわよ!」

 アミリスの説明とマーリンの合図によって、全員がキビキビと動き出す。
 グラディアスに向かうメンバーはブレイブペガサス、プリンセスヴァルキリーズの合同チーム。更に美津代さんとサンペイも加わっている。
 アーニャ達はヒーローアイランドの防衛に務める事になり、グラディアスに向かう零夜達を見送ろうとしていた。

「必ず生きて帰ってね!」
「ああ!任せろ!」

 アーニャからのエールに零夜は笑顔で応え、彼等はそのままグラディアスへと転移。次の任務へと向かったのだった。 
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