ヒーローズエイト〜神に選ばれし8人の戦士達による新八犬伝最強救世主伝説〜

蒼月丸

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第四章 エルフの森の怪物騒動

第百二十話 隠された怪物

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「酷い目に遭った……」

 フリードは頭に包帯を巻かれていて、苦痛の表情をしながら頭を抑えていた。零夜を馬鹿にするとこうなる事を理解したと思うが、その様子だと懲りてないみたいだ。
 零夜はため息をつきながらも、フリードに接近する。

「お前さ。人を馬鹿にすると、こういう事になるのを分かっていたのか?」
「分からないさ。確かにアミリスが連れてきた仲間は良いとしても、一人だけ男性がいるのはおかしいだろ!羨ましさにも程があるんだよ!」
(((そっちか……)))

 零夜からの指摘にフリードは彼を指さし、嫉妬の表情で叫んでいた。それにアミリス達が呆れてしまうのも無理ない。
 確かに零夜達のチームは女性が多く、男性はたったの一人。他の人から見れば羨ましいどころか殺したくなる気持ちが強くなるだろう。しかし、相手が零夜の様な強い人なら、返り討ちに遭ってしまうのは確定だろう。

「あのさ……決められた事は仕方がないだろ?俺は仲間を大切にし、最後まで一致団結して諦めずに突き進む覚悟だ。お前とは考えが違うんだよ」

 零夜からの容赦ない指摘にフリードは憤慨してしまい、すぐに包帯を解いて彼を指差してきた。彼がミミに噛まれた傷はあっという間に完治していて、誰もが驚くのも無理はない。
 フリードには零夜と同じく自己回復能力があるので、どんな傷でも回復する効果がある。たとえどんなにやられても、自力で傷を治す事ができるのだ。

「だったら決闘だ!お前とは戦わなくては意味がない!」

 フリードが怒りで零夜に対して決闘宣言をするが、それを見たエムールは彼に接近する。そのまま自らの左手に高圧電流を纏わせ、フリード身体に電流を流し始めた。

「アババババ!」

 エムールによる電流を流されたフリードは悲鳴を上げてしまい、あまりの威力に全身の骨格まで見えていた。比較的骨格に異常はなかったが、身体は痺れて大ダメージを受けてしまった。

「馬鹿者!お主がハーレムを恨んで喧嘩をふっかけるから、皆から馬鹿にされるのじゃ!お前も選ばれし戦士であるのなら、少しは馬鹿さ加減を自覚しろ!」

 エムールからの怒号にフリードは前のめりにバタリと倒れてしまい、そのままピクピクと痙攣。この光景に誰もがポカンとしてしまい、零夜に至っては唖然としながら口を開けていた。
 いきなり決闘宣言かと思ったが、まさかの結末によってぶち壊しに。これは誰もが唖然とするのも無理ないが、自業自得の一面もあるのだ。

「すまないのう。こいつは本当のバカ野郎じゃ。選ばれし戦士である事は確認済みじゃが、ハーレムぶち壊しという馬鹿な野望を掲げておる。全く困った者じゃ」

 エムールはため息をつきながらフリードの性格に呆れていて、ため息をつくしかなかった。
 それもその筈、フリードはお調子者でチームワークを考えずに行動する。更に自らの野望の為に動く悪い癖もあるので、エムールにとっては悩みの種である。彼が改心するには時間が掛かりそうだ。

「そうだったのですか……けど、あれでも選ばれし戦士で良いのか気になります……」
「私もそう思いました……」

 零夜とルリカはフリードがなんで選ばれし戦士である事を疑問に感じながらも、目の前の光景に唖然としていた。フリードにとっては自業自得としか言えないが、彼はゆっくりと起き上がって自力で立ち上がった。

「うぐ……今日はここまでだ……じゃあな……」

 フリードはヨロヨロと歩きながら帰っていき、その様子に零夜達は唖然とするしかなかった。エムールはそんな事は気にせず、零夜達に視線を移して話を続ける。

「さて、お主等はアルバータドラゴンを倒すと言っていたな。じゃが、ヒューラーはもう一匹の怪物を召喚したそうじゃ」
「えっ?もう一匹いるのですか?」

 エムールからの説明に美津代が疑問に思い、ミミ達も疑問に思いながらざわつき始めてしまう。しかし、アミリス、ソニア、マーリン、杏は冷静に落ち着いていて、その怪物が何なのかをすぐに察していた。

「お祖父ちゃん。もしかすると……最凶の怪物であるベルセルクが復活したの?」
「「「ベルセルク?」」」

 アミリスの質問に零夜達は疑問に感じてしまうが、エムールは真剣な表情でコクリと頷く。その様子だと何かあったに違いないだろう。

「そうじゃ。その怪物についてじゃが、わしは数十年前に戦った事がある。アミリス達だけでなく、お前さん達にも話しておかなくてはならないようじゃな」
「えっ!?あの怪物と戦った事があるのですか!?」

 エムールの説明に零夜達は驚きを隠せず、話を聞いていたエルフ達もざわついてしまう。中にはベルセルクを知らない人達もいるが、あの化物の復活で不安になるのも無理ないだろう。

「そうじゃ。ここではまずいからわしの家で話すとしよう。戦士達はわしに付いてきてくれ」

 エムールの指示と同時に、零夜率いる戦士達は彼に同行する事に。他のエルフ達はそれぞれの仕事に戻り始めた。



 アミリスとエムールの家に入った零夜達は、それぞれの椅子に座り始める。木の中にある家なので自然の香りがするのは勿論、太陽の光による温かさを感じているのだ。

「全員入ったな。お茶については既に用意しておるぞ」
「へ?いつの間にですか!?」

 零夜達が目の前の方を見ると、なんと彼等の前にお茶の入ったグラスが用意されていた。お茶の数は人数分あるのは勿論、お茶菓子もお皿に多く乗せられていた。しかし、お茶菓子の量が多過ぎるのが問題だと思うが……

「すいません、わざわざ……(クッキーの大きさが大き過ぎるのがちょっとな……)」

 零夜はすまなさそうな表情で一礼し、お茶菓子であるクッキーを食べ始める。
 用意されたサクサクとした食感を感じるが、一枚の大きさがでか過ぎるのが欠点だ。その大きさは半径五センチメートルで、零夜も心の中でそう思うしかなかった。
 
「気にするな。アミリスよ、お前もメディアによる選ばれし戦士の一人だとは驚いた。わしの孫娘として誇りに思うぞ」 
「うん……大した事じゃないし、未熟な部分もあるからね。まだまだこれから頑張らないと!」

 エムールの笑みにアミリスは苦笑いした後、力こぶを見せながらウインクで決意を固める。その様子にエムールもコクリと頷き、全員に視線を向け始める。

「さて、本題じゃ。わしは数十年前にベルセルクと戦った事がある。あれは正に死闘というべきじゃったな」

 エムールは当時の事を振り返りながらしみじみと感じているが、零夜達は冷や汗を流しながら驚きを隠せずにいた。エムールが苦戦していたとなると、手強い敵である事に間違いないだろう。 
 
「エムール様が苦戦されたのですか?」
「うむ。その事について話すとしよう」

 エムールはそのまま零夜達にその時の事を話し始めた。彼とその仲間達がベルセルクと戦った記憶の事を……
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