ヒーローズエイト〜神に選ばれし8人の戦士達による新八犬伝最強救世主伝説〜

蒼月丸

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第六章 山口観光騒動記

第百八十六話 鳥丸の意外な正体

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「覚悟しろ、戦士達!」

  鳥丸は空を飛びながら零夜達に襲い掛かり、スピードを上げながら攻めに向かう。するとルリカが真剣な表情でシールドを構え、カウンターバリアで弾き返した。

「がはっ!こいつめ……これでも喰らえ!」

 カウンターバリアで弾き返された鳥丸は態勢を整え直した後、そのまま背中の羽を手裏剣の様に投げ飛ばした。それもルリカによって弾き返されたその時、零夜が飛び出して鳥丸に襲い掛かってきたのだ。

「零夜様!?」
「自ら死に急ぐつもりか!なら、丁度いい……な!?」

 鳥丸が襲い掛かる零夜に立ち向かおうとするが、彼の手を見て冷や汗を流してしまう。なぜなら零夜の手には電流が纏わっていて、今にも発電しそうな勢いをしているのだ。

「こいつを喰らえ!スパークハンド!」
「ギャアアアアアアアア!!」

 零夜の電流を纏った手が鳥丸の身体に当たり、彼は高圧電流によって感電してしまう。おまけに骨格が浮き彫りになり、写真を撮る人が続出していく。
 鳥丸は風属性である為、電気や岩、氷に弱い。更に水に濡れてびしょ濡れになっていたので、電流を流されたら倍のダメージを受けてしまう。最初から野良犬のおしっこをかけられなければ、こんな事にはならなかっただろう。

「零夜の手から電流が……」
「今の技はエレメンタルハンド。属性によって、様々な効果を得られるからね」

 ルリカ達がこの光景にざわつく中、アミリスが零夜の技について真剣に説明する。
 エレメンタルハンドは様々な属性能力を両手に纏わせ、相手に触れたと同時にその効果を発動する。炎なら発火、水なら水流、電気なら高圧電流など、相手にダメージを与えていく技なのだ。
 すると鳥丸の身体から突如煙がボワンと出てしまう。零夜はすぐにその場から離れたと同時に、キララが空を飛んで風を起こそうとしていた。

「鳥丸の身体から煙が出たようね!それなら、ウィンドマジック!」

 キララは強烈な風を起こし、立ち込める煙を吹き飛ばし始める。煙が全て消えたその直後、鳥丸の変わり果てた姿に誰もが驚いていた。

「こ、これが……鳥丸なのか!?」
「よく見ると……ヒョロヒョロの男じゃないの!」
「まさかあの仕事人の真の姿が、この様な人だなんて……」

 なんと鳥丸は強烈な攻撃でやられてしまい、能力を失って元の姿に戻っていた。それは身体がヒョロヒョロの状態で、筋肉や贅肉も殆どない。どうやら彼は何者かによって、今の姿にされたのだろう。

「だ、大丈夫なのか!?」
「大丈夫じゃない……俺、アークスレイヤーのとある男に騙されて……こんな姿に……」

 零夜の呼びかけに対し、男は彼等に事情を説明。そのまま塵となって消滅してしまった。操られたとは言え、死んでしまうのは残酷過ぎるとしか言えないだろう。

「恐らく今回の敵についてだけど、何者かによって姿を変えさせられたに違いないわ。アークスレイヤーならやりかねないからね」
「アミリスの言う通りね。もしかするとこの旅行……恐らく刺客が次々と出てくる可能性もあるから、十分気を付けないと……」

 アミリスとマーリンの推測に、零夜達も真剣な表情で頷く。楽しい筈の旅行はまさかこんな展開になるとは思ってもなく、刺客達との戦いは避けられなくなってしまった。その元凶を倒さない限りは、戦いは終わらないだろう。
 すると、零夜のバングルから通信が入り、すぐにウインドウを起動。トラマツとノースマンが画面に映っていた。

『今、刺客が出ていなかったか?』
「なんとか倒したが、その正体はヒョロヒョロの男だった」
『やっぱりか!襲い掛かってきた奴だが、アークスレイヤーの仕事人軍団『デビルキラーズ』の奴等だ!』
「「「デビルキラーズ!?」」」

 画面越しからのトラマツの真実に、零夜達は驚きを隠せないのも無理はない。アークスレイヤーに仕事人集団を仕込んでいたのは、彼等としても想定外と言えるからだ。

『デビルキラーズは鳥丸だけじゃなく、他の六つのエリアにも刺客を用意している。そしてそいつ等を倒した途端、親玉が出てくる事になるそうだ』
「じゃあ、この旅行はデビルキラーズとの戦いでもあるのね。私達選ばれし戦士はどんな場所でも、アークスレイヤーとの戦いは避けられないみたいね……」

 ノースマンからの説明にヒカリ達はガックリと項垂れてしまう。折角楽しい旅行ができると思っていたのに、アークスレイヤーとの戦いは避けられない運命である事は間違いない。奴等は神出鬼没で何処から出て来るのか分からず、対応する方も一苦労なのだ。

『だが、岩国と柳井エリアの敵はいないみたいだ。その辺でゆっくり観光を楽しみ、スタンプを手に入れたら次のエリアに赴いてくれ。健闘を祈る』

 トラマツとノースマンとの通信が終わり、ウインドウも消えていく。取り敢えずはこのエリアにいる刺客を無事に倒した為、後はこの辺りでゆっくりと観光を楽しむことになった。いきなりのハプニングで驚いてしまったが、無事に観光の続きを楽しめる事ができただけでも良いだろう。

「やれやれ……取り敢えずは錦帯橋を渡ったら、東風のソフトクリームでも食べようぜ」
「そ、そうね……先に進もうか……」

 零夜達はそのまま錦帯橋を渡り切って東風に向かおうとしたその時、人々が彼等の姿を見て驚きを隠せず歓声を上げていた。何故なら選ばれし戦士達が山口に来たという事で、皆が駆け付けてくるのも無理はないのだ。

「うわっ!まさか歓声を浴びるなんて……」
「もしかすると皆、私達のファンなのかな?」

 ルリカがこの状況に驚く中、コーネリアが疑問に感じている。この様な体験をしたのは初めてであり、どう対応すれば良いのか分からないのも無理なかった。

「そうかも知れないみたいね。その時はファンサービスしておかないと!」
「そうね。じゃあ、渡り切ってからファンサービスしちゃおうか!」

 日和と倫子の提案に全員が賛同し、そのまま歩きながら錦帯橋を渡っていく。そして渡り終えた直後、多くの方達が駆けつけてきた。皆、零夜達がこの場所に来る事は知らなかったが、先程の戦いで駆け付けるのも無理ないだろう。

「はーい、押さないで!一緒に写真撮りましょう!」
「順番に並んでください!」

 倫子と日和の合図にファンの皆はルールを守り、彼女達と共に記念撮影を行った。カメラについては各自スマホを持っていて、そのカメラ機能で写真を撮っているのだ。

「凄い人気としか言えないな……」

 零夜が倫子と日和の人気にポカンとしている中、三人の女性が彼の元に駆け付けてきた。彼の活躍に興味を示してきたのだろう。

「今の戦い、見事でした!」
「私、感動してファンになりました!写真お願いします!」
「あっ、はい!」

 零夜もファンの女性と写真を撮り始め、かなり有意義な時間を過ごす事ができた。まさか自身にもファンが付く事になっていたのは驚きを隠せずにいたが、初めての経験で楽しむ事が出来たのだ。

(こういうのも悪くないかもな!)

 零夜は心の中でそう思いながら、次々とファンの方と写真を撮り始める。そのファンサービスが終わったのは、それから数分後の事だった。
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