太陽と月

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朔也の葛藤

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陽の親として戸籍に記載されるのは、血縁云々ではなく陽を幸せにできる人間であるべきだと小園は言っていた。

改めてその言葉の重みを考える朔也は、己の邪心に益々嫌悪を抱く。

先日、久しぶりに吾妻と仕事以外の話をする時間があったのだが、その際

『お前がこんなにも純粋な愛情を注げるヤツだったなんて』

と心底感心されたのだ。吾妻は皮肉でも世辞でもなく言っていた。

だが、純粋な愛情だけを注いでいるのかと言ったら、そうとは言いきれないのだ。

陽は朔也と共に生活するようになって3か月経った今でも、トイレに朔也を伴う。そこで無自覚放尿ショーを見せられる度、その場で陽を押し倒したい衝動に駆られるのだ。
後は理性と欲望の鬩ぎ合いとなるのだが今は辛うじて理性が勝っているギリギリの状態が続いている。

『それは、お前が健康な証拠だ』

と一蹴されたが、15歳の少年に三十路の男が抱く感情としては随分不健全な気もする。

『まぁ、今お前があの子に手を出したら俺からの鉄拳が下るがな』

吾妻は陽が未成年だから言っているわけではない。陽の意思が介在しないところで朔也が欲望をぶつけるようなことを許さないと言っているのだ。

『それに』

と続く言葉はふざけているわけではなく心底陽を心配している様子がわかる。

『陽くんが壊れてしまう』

体格差のことを言っているのだ。
食生活のおかげだろう。この3ヶ月で少し体が大きくなった陽だが、それでもまだまだ小さい。
長身の朔也に比べれば30センチ以上は低いのだ。
確かに何かすれば陽の体が壊れかねない。

『朔也のデカイし』

と朔也の股間に視線を向ける吾妻のソレも同等の大きさなのだが。

『なぁ、維新』

珍しく口ごもる朔也は少々自信喪失気味だ。
この先、陽は朔也をどのような位置付けで認識するのか。

これまで見たことのない臆病な朔也に吾妻は周囲から見えている事実だけを伝える。

『それはこれからのお前次第だ』

まだまだ心が育っていない陽に、朔也の存在がどう認識されているのか、これからどんな想いを寄せられるのか正しく朔也次第だろう。
現状では朔也に対する嫌悪感はないのだから、それをどんな方向に持っていくのか。

ビジネスであれば緻密な画策の下、相手を掌で踊らせることなど他愛もなくこなす朔也だが、陽に対しては様々な躊躇いがあるのだ。

幸か不幸か一切の先入観のない陽に互いは恋人同士で、だからこそ体の関係も当たり前。
性差など気にすることなく、愛し合う者同士は体を繋げる。
陽は朔也をそう言った意味で愛してる。
そんな刷り込みが不可能なわけではない。
況してや経験のない陽の体に快楽を覚えさせれば、簡単に堕ちてくるはずだ。

それでも陽と心でも繋がりたいと思う己の思考に気恥ずかしさすら感じるのだが、やはり今吾妻が言ったことが全てなのだろう。

『これからの俺次第、か。』

純粋な愛情と爛れた情欲はいつまで朔也の中で戦い続けるのだろうか。
少なくても今は情欲の方を勝者とするわけにはいかないだろう。
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