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再燃する憎悪
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篠崎と、その小飼が動き出したとの情報を受けて、泳がせたまま何日か盗聴器の世話になっている。
『なんか天海の様子がおかしいんッスよねぇ』
盗聴器が拾った音声データは、今回も鮮明に4人の男の声を拾っている。そのうちの1人は篠崎だが、残りの3人の声は聞いたこともない。
前回盗聴していた時には、炎星会の中枢を担う幹部の面々が揃っていたにも関わらず、今回は朔也にも吾妻にも知った声は篠崎のみだ。
地位も名誉も失った篠崎に付く人間、余ほど篠崎に忠誠を誓った人間か小銭で動く小物か、おそらく後者だろう。
『何でもいいから報告しろ』
焦燥感の滲む声色で篠崎が促せば
『天海って言ったら仕事ばっかしてたイメージありません?』
と続く報告に篠崎も他の2人も同意の相槌を打つ声が聞こえる。
『それなのに』
朔也のマンションを張り込んだここ数日間、朔也は夕方早い時間には必ず帰宅するのだと、何ともお粗末な報告を上げているのだ。
報告はこれだけなのか?朔也も吾妻も言葉を失う。
コンシェルジュの風間曰く、ここ数日、随分とわかりやすい監視をしてる輩がエントランスの前を彷徨いていたと言うのだが、年格好から言って朔也がマンションの駐車場出入口で見た男と同一人物だろう。
明星会の組事務所にも1人、いかにも怪しげな男が張り付いていたが、留守番の若衆から気付いていないふりができないほどわかりやすい監視に、逆に何か仕掛けてくるのではと吾妻に連絡があったほどだ。
篠崎サイドとしては秘密裏に機が熟すのを待っているつもりなのだろうか。
お粗末なことこの上ないが、朔也の自宅マンションを監視していることが少々気がかりではある。
万が一にも陽を危険な目には遭わせたくない。愚鈍な奴らに陽の存在が露呈する可能性は低いものの暫くは陽をどこかに隠した方がいいのかもしれない。
幸い陽は楠瀬と鹿島にはよく懐いている。
くどいようだが朔也が嫉妬するほどに懐いている。
陽を隠して、その間にけりを付けてしまえばいい。
マンションのセキュリティに不安がある訳ではないが、陽には見せたくないないような事が起こらないとも限らない。
つまりは朔也が誰かを傷付けるような事が。
こちらからは仕掛けるつもりはない。篠崎が朔也に手を出しやすい瞬間を作るだけのことだ。
もっとも、その瞬間すら見逃しかねない輩が揃っているようだが。
短ければ半日、長くても2~3日でけりをつけられる。
いや、2~3日でけりをつけなければ、陽の予防接種のスケジュールが狂ってしまう。
朔也にとって、陽の健やかな成長に関わる事が最重要事項なのだ。
『吾妻、箱根の段取りだ』
国内外問わず複数の別荘を所有する朔也だが、今回は一番近場の別荘を利用する。移動時間が長くなれば、陽が体調を崩しかねない。
また、セキュリティ面も自宅マンションと同程度の用意ができている。
『申し訳ないが咲恵さんにも同行してもらおう』
『なんか天海の様子がおかしいんッスよねぇ』
盗聴器が拾った音声データは、今回も鮮明に4人の男の声を拾っている。そのうちの1人は篠崎だが、残りの3人の声は聞いたこともない。
前回盗聴していた時には、炎星会の中枢を担う幹部の面々が揃っていたにも関わらず、今回は朔也にも吾妻にも知った声は篠崎のみだ。
地位も名誉も失った篠崎に付く人間、余ほど篠崎に忠誠を誓った人間か小銭で動く小物か、おそらく後者だろう。
『何でもいいから報告しろ』
焦燥感の滲む声色で篠崎が促せば
『天海って言ったら仕事ばっかしてたイメージありません?』
と続く報告に篠崎も他の2人も同意の相槌を打つ声が聞こえる。
『それなのに』
朔也のマンションを張り込んだここ数日間、朔也は夕方早い時間には必ず帰宅するのだと、何ともお粗末な報告を上げているのだ。
報告はこれだけなのか?朔也も吾妻も言葉を失う。
コンシェルジュの風間曰く、ここ数日、随分とわかりやすい監視をしてる輩がエントランスの前を彷徨いていたと言うのだが、年格好から言って朔也がマンションの駐車場出入口で見た男と同一人物だろう。
明星会の組事務所にも1人、いかにも怪しげな男が張り付いていたが、留守番の若衆から気付いていないふりができないほどわかりやすい監視に、逆に何か仕掛けてくるのではと吾妻に連絡があったほどだ。
篠崎サイドとしては秘密裏に機が熟すのを待っているつもりなのだろうか。
お粗末なことこの上ないが、朔也の自宅マンションを監視していることが少々気がかりではある。
万が一にも陽を危険な目には遭わせたくない。愚鈍な奴らに陽の存在が露呈する可能性は低いものの暫くは陽をどこかに隠した方がいいのかもしれない。
幸い陽は楠瀬と鹿島にはよく懐いている。
くどいようだが朔也が嫉妬するほどに懐いている。
陽を隠して、その間にけりを付けてしまえばいい。
マンションのセキュリティに不安がある訳ではないが、陽には見せたくないないような事が起こらないとも限らない。
つまりは朔也が誰かを傷付けるような事が。
こちらからは仕掛けるつもりはない。篠崎が朔也に手を出しやすい瞬間を作るだけのことだ。
もっとも、その瞬間すら見逃しかねない輩が揃っているようだが。
短ければ半日、長くても2~3日でけりをつけられる。
いや、2~3日でけりをつけなければ、陽の予防接種のスケジュールが狂ってしまう。
朔也にとって、陽の健やかな成長に関わる事が最重要事項なのだ。
『吾妻、箱根の段取りだ』
国内外問わず複数の別荘を所有する朔也だが、今回は一番近場の別荘を利用する。移動時間が長くなれば、陽が体調を崩しかねない。
また、セキュリティ面も自宅マンションと同程度の用意ができている。
『申し訳ないが咲恵さんにも同行してもらおう』
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