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歪んだ愛情
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見合いの翌日から不知火亜美の熱烈で少々滑稽なアプローチが始まった。
貞操観念とか傅くと言った言葉の意味を調べ、自分なりに考えてみたとか、聞いたことがない言葉だったから、すぐにわからなかっただけで
『私は、既にそれを持ち合わせていますわ』
とまで言い切る。
なかなかに大物なのかもしれないが、興味はない。
『朔也さん次は何時お逢いできますの?』
多忙を理由に具体的な約束はせずにいるが、その間も亜美の監視は続けている。
取り巻きの男共とお楽しみになるようなことがあれば、態とらしい偶然を装って、この見合い話を断るネタにと思ってのことだ。
しかし亜美も亜美なりに本気なのだろう。料理教室とスポーツジム以外は特段外出することもなく、口から出任せの朔也の理想の女性像に近付こうと努力しているように見えなくもない。
実際には、そうすることで、朔也に尽くしていると勘違いをして自己満足に浸っているだけなのだが。
しかし、監視を続けて一週間、漸く亜美が動き始めてくれた。
1日おきに通っているスポーツジムで少し泳いだ後、普段は利用しないラウンジへと足を向けたのだ。
そこには他の利用者に混じり既に男が1人。亜美の姿を認めると軽く片手を上げ自身の存在をアピールしている。
2~3言葉を交わし、亜美から中身の厚い白い封筒を受け取った男は飲みかけのコーヒーもそのままで足早にラウンジを後にした。
そして、朔也の周辺が五月蝿くなったのはその翌日からだ。
亜美から金を握らされた輩が何やら嗅ぎ回っている。気配を殺すつもりもないのだろう。朝の出勤から夜の帰宅まで、隙なく尾行された。
それだけであれば、特に気にする必要はないのだが、夕暮れ時に1度マンション全体が停電したのだと言う。
システムをくまなく確認した風間が、マンションのセキュリティシステムに何者かがハッキングした可能性が払拭できないのだと言う。
尾行は撒き餌だったのか?マンションのセキュリティシステムに入り込むことが目的だったのか?
不知火亜美は何を調べようとしているのか。世間知らずで奔放な女性だからこそ、悪気もなく予想外の事をしかねない。
篠崎の時以上に相手の出方が予想し難いが陽に被害が及ばなければ何も言うつもりはない。
しかし、万が一陽に何かあれば、亜美だけではない。金で動く小飼の男にも、そして不知火議員にも命を以て償ってもらうことになる。
詳細の調査を吾妻に指示し、自宅マンションの中であっても、いつも以上に陽から離れない朔也だった。
貞操観念とか傅くと言った言葉の意味を調べ、自分なりに考えてみたとか、聞いたことがない言葉だったから、すぐにわからなかっただけで
『私は、既にそれを持ち合わせていますわ』
とまで言い切る。
なかなかに大物なのかもしれないが、興味はない。
『朔也さん次は何時お逢いできますの?』
多忙を理由に具体的な約束はせずにいるが、その間も亜美の監視は続けている。
取り巻きの男共とお楽しみになるようなことがあれば、態とらしい偶然を装って、この見合い話を断るネタにと思ってのことだ。
しかし亜美も亜美なりに本気なのだろう。料理教室とスポーツジム以外は特段外出することもなく、口から出任せの朔也の理想の女性像に近付こうと努力しているように見えなくもない。
実際には、そうすることで、朔也に尽くしていると勘違いをして自己満足に浸っているだけなのだが。
しかし、監視を続けて一週間、漸く亜美が動き始めてくれた。
1日おきに通っているスポーツジムで少し泳いだ後、普段は利用しないラウンジへと足を向けたのだ。
そこには他の利用者に混じり既に男が1人。亜美の姿を認めると軽く片手を上げ自身の存在をアピールしている。
2~3言葉を交わし、亜美から中身の厚い白い封筒を受け取った男は飲みかけのコーヒーもそのままで足早にラウンジを後にした。
そして、朔也の周辺が五月蝿くなったのはその翌日からだ。
亜美から金を握らされた輩が何やら嗅ぎ回っている。気配を殺すつもりもないのだろう。朝の出勤から夜の帰宅まで、隙なく尾行された。
それだけであれば、特に気にする必要はないのだが、夕暮れ時に1度マンション全体が停電したのだと言う。
システムをくまなく確認した風間が、マンションのセキュリティシステムに何者かがハッキングした可能性が払拭できないのだと言う。
尾行は撒き餌だったのか?マンションのセキュリティシステムに入り込むことが目的だったのか?
不知火亜美は何を調べようとしているのか。世間知らずで奔放な女性だからこそ、悪気もなく予想外の事をしかねない。
篠崎の時以上に相手の出方が予想し難いが陽に被害が及ばなければ何も言うつもりはない。
しかし、万が一陽に何かあれば、亜美だけではない。金で動く小飼の男にも、そして不知火議員にも命を以て償ってもらうことになる。
詳細の調査を吾妻に指示し、自宅マンションの中であっても、いつも以上に陽から離れない朔也だった。
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