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そして未来へ
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朔也はイライラしている。今週に入ってから、ずっとイライラしている。
理由はただ1つ。吾妻のスケジュール管理に無理があるからだ。
もっとも少々無理をしたからと言って朔也の身体が壊れるわけではないし、実際、朔也が疲労を感じるほど詰まったスケジュールでもない。
ただ、帰宅時間が今までよりも遅くなってしまうのだ。
今週に入ってからは表の仕事、裏の仕事と夜の会食が続き、陽と1度も夕食を共にしてはいない。
吾妻に苦情を入れても「仕事なのだから」の一言で一蹴されてしまう。
朝だけは一緒に食事を摂り、同じ自動車で出掛けているが、車窓から外を眺める陽は何かを考えているようにも見える。
若しくは夕食を共にできないせいで拗ねてしまったのだろうか。
いや。それは考え難い。夕食を共にできないだけで、風呂には一緒に入っている。昨日は陽の茎を擦り自慰の手伝いもしたが、いつも通りで嫌がる素振りもなかった。
そしてトイレにも誘われる。これまた、いつも通りで朔也の目の前で用を足していた。
いつも通り、同じベッドで眠り、眠りにつくまでは他愛の会話を楽しむ。
なんとも説明し難いが、とにかく違和感があるのだ。
それとなく楠瀬と鹿島に探りを入れてみたが、頓珍漢な返答しか得られなかった。
ただ、陽が悩んだり困ったりしている様子はない。
それならいいと納得すれば良いのだが、どうも違和感が拭えない。
正体不明の違和感だが、悪い感じはしないのが余計に腑に落ちない。
グルグルと考える朔也に吾妻がぴしゃりと言い放つ。
『とりあえずは』
来週いっぱいまで、この状態が続くのだと。
つまり、来週いっぱい我慢すれば、陽との蜜月を過ごせると言いたいのだろう。
だが、朔也がいない食卓で、楠瀬と鹿島、時には咲恵や佐伯も食事を共にしていると聞けば、朔也の嫉妬心に着火しないわけがない。
そして、そんな朔也の胸の内を知って面白おかしく挑発するのは、やはり吾妻維新ただ1人だ。
『心配いらない』
陽くんは朔也のいない夕食を、それなりに楽しんでいるから。
鼻で笑った吾妻を憎々しく思いながらも、現実を受け入れざるを得ない。
来週を乗り越えれば、また元のような生活に戻れ
る。
いや。これを期に陽の独立心が一気に芽生えてしまうようなことがあったら?
ただの妄想と言うには、あまりにも恐ろしい想像をして、そんな風には訪れない未来に1人怯える朔也だった。
他の誰にもわからないほどの表情筋の動きだが、吾妻にはわかる。
赤くなったり青くなったりしながら、不要な心配をする朔也の脳内の状態が。
でも。
当初の計画通り、朔也には内緒でパーティーの準備を進めるのが陽のたっての希望だった。
陽の意思を尊重するのは、延いては朔也の意思を尊重することに繋がっている。
やや言い訳染みてるとは思うが、そうでも思わなければ、真実が口から溢れそうになる。
来週いっぱいは、それを避けたい吾妻だった。
理由はただ1つ。吾妻のスケジュール管理に無理があるからだ。
もっとも少々無理をしたからと言って朔也の身体が壊れるわけではないし、実際、朔也が疲労を感じるほど詰まったスケジュールでもない。
ただ、帰宅時間が今までよりも遅くなってしまうのだ。
今週に入ってからは表の仕事、裏の仕事と夜の会食が続き、陽と1度も夕食を共にしてはいない。
吾妻に苦情を入れても「仕事なのだから」の一言で一蹴されてしまう。
朝だけは一緒に食事を摂り、同じ自動車で出掛けているが、車窓から外を眺める陽は何かを考えているようにも見える。
若しくは夕食を共にできないせいで拗ねてしまったのだろうか。
いや。それは考え難い。夕食を共にできないだけで、風呂には一緒に入っている。昨日は陽の茎を擦り自慰の手伝いもしたが、いつも通りで嫌がる素振りもなかった。
そしてトイレにも誘われる。これまた、いつも通りで朔也の目の前で用を足していた。
いつも通り、同じベッドで眠り、眠りにつくまでは他愛の会話を楽しむ。
なんとも説明し難いが、とにかく違和感があるのだ。
それとなく楠瀬と鹿島に探りを入れてみたが、頓珍漢な返答しか得られなかった。
ただ、陽が悩んだり困ったりしている様子はない。
それならいいと納得すれば良いのだが、どうも違和感が拭えない。
正体不明の違和感だが、悪い感じはしないのが余計に腑に落ちない。
グルグルと考える朔也に吾妻がぴしゃりと言い放つ。
『とりあえずは』
来週いっぱいまで、この状態が続くのだと。
つまり、来週いっぱい我慢すれば、陽との蜜月を過ごせると言いたいのだろう。
だが、朔也がいない食卓で、楠瀬と鹿島、時には咲恵や佐伯も食事を共にしていると聞けば、朔也の嫉妬心に着火しないわけがない。
そして、そんな朔也の胸の内を知って面白おかしく挑発するのは、やはり吾妻維新ただ1人だ。
『心配いらない』
陽くんは朔也のいない夕食を、それなりに楽しんでいるから。
鼻で笑った吾妻を憎々しく思いながらも、現実を受け入れざるを得ない。
来週を乗り越えれば、また元のような生活に戻れ
る。
いや。これを期に陽の独立心が一気に芽生えてしまうようなことがあったら?
ただの妄想と言うには、あまりにも恐ろしい想像をして、そんな風には訪れない未来に1人怯える朔也だった。
他の誰にもわからないほどの表情筋の動きだが、吾妻にはわかる。
赤くなったり青くなったりしながら、不要な心配をする朔也の脳内の状態が。
でも。
当初の計画通り、朔也には内緒でパーティーの準備を進めるのが陽のたっての希望だった。
陽の意思を尊重するのは、延いては朔也の意思を尊重することに繋がっている。
やや言い訳染みてるとは思うが、そうでも思わなければ、真実が口から溢れそうになる。
来週いっぱいは、それを避けたい吾妻だった。
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