『踊り子令嬢』と言われて追放されましたが、実は希少なギフトでした

Ryo-k

文字の大きさ
20 / 22
3章

20.お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様――――――――

しおりを挟む
場所は変わって公爵領。
サーシャがいなくなってからの侯爵領は、かつての栄華が嘘のような有り様。


何故か公爵領だけ自然災害が襲い……

何故か公爵領の使用人に調度品を持ち逃げされたり……

運悪く公爵家の全員が食べ物にあたって3日間寝込む羽目になったり……

ここのところ良くない日々が続いていた。


「貴様! またわしに黙ってドレスなんぞ買いおって!」

「何で貴方にいちいち言わないといけませんの!」

「うるさい! 今家には金がない! 貴様だって分かっているだろ!」

「そんなの私の知ったことじゃありませんわ!」

と最近では毎日喧嘩ばかりで、
使用人たちもこの状況に不味いと感じたのか次々と辞めていき、残っているのは古くからいる侍女長と執事長だけ。
その二人も、今月いっぱいで辞めることになっている。

「お父様、お母様」

言い合いをしている二人のことなんかお構いなく、突然屋敷にシェイラが転移してきた。
二人は言い争いをさっさとやめて、シェイラに縋りついた。

「シェイラ! いいところに来た! 今領地が大変なんだ」

「『聖女』のギフトで何とかしてちょうだい!」

「……お姉様は?」

「あいつか。安心してくれ、あいつはとっくに追い出したからな」

「そうよ。あの疫病神がいなくなって貴方も大喜びでしょう?」

「……そう」

サーシャを屋敷から追い出したこと。
二人にとっては取るに足らないことだったが、シェイラにとってはそうではなかった。

シェイラは淡々と二人を見つめている。
シェイラの様子に、自然とたじろいでしまう。

「――がいない」

「シェイラ? どうしたの……?」

心配するそぶりを見せている二人の言葉はシェイラの耳に入っていない。

「お姉様がいないお姉様がいないお姉様がいないお姉様がいないお姉様がいないお姉様がいないお姉様がいないお姉様がいないお姉様がいないお姉様がいないお姉様がいないお姉様がいない」

「ひぃ……!」

呪詛を唱えているかのような、その恐ろしさに腰を抜かしてしまう公爵夫人。
更にシェイラの様子に反応するように、外は激しい嵐が突然襲ってきていた。

実はこの嵐は公爵家だけをピンポイントで襲っていた。

更にシェイラの魔力が増大して部屋中に広がっていった。
それはとどまることを知らず、屋敷のあちこちが悲鳴を上げるようにギシギシと音を立てている。

「シェイラ! 早くこれを沈めろ!」

「そうよ! 『聖女』の貴方をここまで育ててきたのよ。その恩を返しなさい!」

二人の懇願はシェイラには全く届いていなかった。
それどころか被害は悪化する一途をたどっていることが、シェイラの答えであるかのようだった。


公爵家の惨状は屋敷を跡形もなく破壊しつくすまで止まることはなかった。
シェイラがいなくなった後の公爵家には、かつての栄華の面影は跡形もなく無くなっていた。
公爵夫妻の失敗はただ一つ。


――サーシャを追放したこと


シェイラのサーシャへの気持ちに全く気付いていなかったが故に、サーシャを屋敷から追い出し。
結果としてシェイラの怒りを買った。それだけのこと。


公爵領の経営は崖から転げ落ちるようにみるみる悪化していき、事業を起こせば忽ち失敗し借金だけが凄まじい勢いで膨らんでいった。
それでも公爵夫妻は、贅沢することをやめられなかった。


更に『聖女』シェイラが、王国から行方不明となってしまった。
公爵夫妻は、娘の監督責任も取らされる羽目になり、国から莫大な制裁金を請求されることになった。
持っていた領地のほぼすべてを売り払っても、借金は欠片も減らないほどの借金だった。
一生かかっても返済することは絶対に不可能なほど。


もはや公爵は爵位剥奪寸前となるまで転がり落ちていった。

ここまで落とすほどに、シェイラはサーシャのことが好きで……

サーシャをないがしろにした二人のことが許せなかったようだ……




「お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様――――――――――――――」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで

六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。 乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。 ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。 有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。 前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

魔力0の貴族次男に転生しましたが、気功スキルで補った魔力で強い魔法を使い無双します

burazu
ファンタジー
事故で命を落とした青年はジュン・ラオールという貴族の次男として生まれ変わるが魔力0という鑑定を受け次男であるにもかかわらず継承権最下位へと降格してしまう。事実上継承権を失ったジュンは騎士団長メイルより剣の指導を受け、剣に気を込める気功スキルを学ぶ。 その気功スキルの才能が開花し、自然界より魔力を吸収し強力な魔法のような力を次から次へと使用し父達を驚愕させる。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

処理中です...