亡国の老騎士と猫魔法士と吸血鬼の城と

お好みナッツ

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老騎士と若者達と吸血鬼の城と

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 朝、村長の家に集まって集会を開いた。
 もちろん拐われた少女とゾンビやヴァンパイアの事だ。先ず村長がヨハン達3人には事の成り行きを説明した。

 この領域内を納める領主がヴァンパイアどもを従え、この領内にある村々に生贄の催促に来るのだ。断った近隣の村が皆殺しにされた事を知った村長は我慢できず他国のギルドに依頼として討伐を依頼した。
 そしてイーサン、ジュロム、ザードルの3人が
 昨晩襲って来たヴァンパイアどもを倒すためセントラシア公国からここへ派遣されて来たのだ。

「貴方達にも是非とも協力を要請したいのだ
 どうか我々とこの村々を救って下さいよ」

 村長は深刻な表情でピックル達を見つめ、祈るように両手を合わせて頼み込んだ。

「ピックル、困ったニャ! オイラ達とんでもない所に来てしまったニャ」

「大丈夫だって、愛するボミエと一緒ならアタシは何処へでも行くよ」

 息ピッタリにガシッと抱き合うチビ亜人2人を横目にヨハンはため息を吐く、彼はあまり気が乗らなかったのだ。聖教国が崩壊し、亡命先のマリナ・デル・ベーラでのんびりと余生を謳歌するつもりだった彼にとってこの様な事態に巻き込まれてしまう事だけは出来るだけ避けたかった。

 そんなヨハンにイーサンは近づきひざまずくと
 ヨハンの両手を握り締め、力強い眼差しで彼に懇願した。

「ヨハン殿、船の上で見た貴方の剣技をどうかこの村々のために振るっていただけないだろうか」

 ヨハンはしぶしぶ頷いた。断る事が出来なかったのだ。実際、ヨハン達3人は海賊どもに売り飛ばされそうになっていたところをイーサンに助けてもらった借りがあるのだから………



 朝食後、村長に挨拶をするとすぐに村を立ち、ヴァンパイアどもが住み着いていると言われているエル・セイグラム城へと向かう途中、森の中で若い男女が待ち構えていた。

 彼らは我々と共に戦いたいと声をかけて来たので
 イーサンは快く受け入れた。彼らの話によるとどうやら隣村の村長がイーサン達に協力しようと近隣の村々からそこそこ戦えそうな人材を集めていたそうだ。

 レンジャーのヤニス

 軽戦士のアナシア

 守備兵士のマルチェスク


 の3名である。


 ヨハンはチラッと3人を見た。
 まず最初に感じたのが若い……とにかく若い
 おそらくは14歳~17歳あたりといったところか、
 何というかウエストは細く、その艶々な肌がエネルギッシュなのを物語っている。そして何よりも目に輝きがある。そんな彼らはヨハンからすれば孫ほど歳の離れた存在であった。

 もちろん彼らにとっては目の前にいる爺さんや小柄な亜人達などどうでもよく、彼らは村々の村長達から話に聞いていた英雄イーサン・ローグフェルドの事だけが気になって仕方が無かった。

「そういえばローグフェルドさんって何歳なんですか?」

「オレは今年でもう36になるのかな、君たちからすればつまらないオッサンだよハハッ」

 若者の失礼な質問に不機嫌な態度ひとつ取らず
 丁寧に答えるイーサンだった。

 イーサンとくらべてなのかヨハンの事を見てクスクスと笑いだす若者達を見てボミエは満悦だった。

「あの爺ガキどもに馬鹿にされてるニャ」

「アハハッ!いい気味だね」

 ようやく真っ白な城が見えて来た。周辺には視界を遮ぎるような濃い霧がかかっていて、そこから引き返す事が出来ないようになっているようだ。
 突然、視線を感じた。それはあまりにもドス黒く悪に満ちた邪悪な力を持った感覚であった。
 気のせいか自分の意思とは別に足が前に進んでいるような気がした。ヨハンは周囲に目を配ると
 若者達は先程のような勇ましい雰囲気とは打って変わり恐怖のあまり怯え出していた。目を逸らして見ると彼らの足はガクガクと震えていた。
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