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最悪の出会い

上京①

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「自意識過剰なんだよ。あんた」
微笑を浮かべながら私にそう言い放った男がとても眩しく見えたのは何故だろう。


私(雨宮玲/18歳)はこの春に東京に上京し、低くはないが決して高くもない偏差値の大学、所謂中堅大学に入学した。
高校ではそれなりに友達もいたし、部活帰りに下らない話で盛り上がりながらコンビニに寄ったりもした。特に問題を起こすこともなく、只々平穏にこの年まで生きてきた。何が言いたいのか。詰まるところ平凡なのだ。今までの生活の中で特段変わった出来事はない。

何故だろう。

私が小学3年の頃から読み続けている愛読書(漫画)によると、既に私は高校生のうちに部活の先輩とクラスの同級生に挟まれてそれはそれは素晴らしい恋愛ライフを謳歌しているはずであった。自分で言うのも何だが、顔は悪くないはずである。上の中、低く見積もっても中の上といったところだと思う。性格もそれなりで悪くない方だと思うし何だったらそれなりに良い方だとも思う。
しかし、流石の私もこの歳になれば漫画のような出来事が起こることなど、小さい頃からのイケメンの幼馴染がいない限り無理だと気付き始めた。それならばこの大学入学を機に自分から作れば良いのだと思い付く。

「来ぬのなら 捕まえに行こう イケメンを」

我ながら良い出来だ。

そんなことを考えている内に大学の最寄り駅に着いた。流石日本の首都東京、人の数が尋常じゃないくらいに多い。通勤ラッシュの流れに巻き込まれつつも何とか駅の改札を抜けようとした時、「ビビー!!」と嫌な音が鳴り響いた。スイカの残高不足だ。この人混みの中、チャージ機器のところまで行くのは至難の業だ。後ろにいる人達の視線が痛い。どこからか「チッ、早くしろよ」と言う声が飛んでくる。(被害妄想)都会の怖さを緊々と感じ泣きそうになった瞬間、横から目深にニット帽を被りサングラスをした長身の男が一言
「邪魔」
と言い放ち無理矢理改札を過ぎていった。あまりの事に呆然としていると、あっという間に人の波に流され気付いた頃には改札の端で突っ立っていた。

「何なのあいつ! 女の子が困ってたら普通『大丈夫?』の一言くらいかけるでしょ!?」

無神経な男に怒りを露わにしながらも、やはり現実は厳しいと上京して早くも痛感する。

大学で、此れからの大学生活についての軽い説明とレクリエーションが終わった後、余りの人混みに疲れ一刻も早く家に帰りたいと思いながら校舎を出た私を待っていたのは、既に大学の校門までの道に列を作りながら今か今かと新入生を待ち構えている沢山のサークル員だった。人混みとは無縁の田舎に住んでいた私がこの人混みの中から上手く抜け出せるわけもなく、よく知りもしないサークルのパンフレットを両手一杯に抱えながら、気づいた時にはイケメンの沢山いるサークルの新歓に参加していた。    
(こんな時でもイケメンのいるサークルを選ぶなん    て我ながら恐ろしく図太い神経をお持ちで…)
と心の中で感心したのは言うまでも無い。

「何時も 探し求めろ イケメンを」 
                  雨宮玲 
































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