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二十四章
Ⅴ
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総勢で三十人(?)のノームを捕まえ終えたときには、不思議と達成感があった。『炎縛』を発動していているとはいえ、気が抜けない。こうでもしないと、せっかく捕まえたノームがまた逃げだして最初からやり直しになってしまう。
「ワー、ツカマッタ-」
「ツカマッタネー」
「タノシカッター」
こいつら、俺達の苦労を知ってか知らずか呑気にキャッキャと笑ってやがる。まるで子供だ。
「デモイヌノコヘタッピ―」
「ネー」
「チョロイネー」
「チョロイチョロイ-」
「ですから私はウェアウルフだとあれほど」
「待ったルウ! せめて八つ裂きにするのはここを突破してからだ!」
「・・・・・・・・・ちっ」
爪を迫らせていたルウをなんとか説き伏せる。俺もそうだけど、ルウはノーム達に完全に手玉にとられていたからイライラもひとしおだろう。スタミナと体力は俺以上にあるとはいえ、からかわれながら追わされたことで冷静さを失い、寸前に躱されるということを何度かしていた。
まぁ、それは俺も同じだけど。まだ最初の段階なんだけど、俺達だけぐったりと疲労困憊。
「皆さん元気でございますね~~。お腹はすきませんか~~?」
「お前はへこたれねぇなぁ」
三人の中で一番の不安材料であったアンナが、以外とすいすい捕まえていったことは意外だったし、それに今も疲れた様子なんて微塵もない。魔物以上の化け物なんじゃないか?
まぁ、アンナのせいで黒焦げになったり捕まえられたノーム達が逃げだしたりしたから、どっこいどっこいなんだけど。
「孤児院の子供達とよく鬼ごっこをしておりますので慣れております。それに皆さん素直な心の持ち主なのでどこにいるのかわかるのでございますよ~~」
? それって、子供と遊び慣れているからどこにいるか大体予想ができるってことだろうか?
「く、これが野菜しか食べない人の力だというのですか・・・・・・・・・」
「違うはずだよ?」
「く、ですがまだ勝負はここからでございます。お肉の力を見せつけてやりましょう。ねぇご主人様?」
「俺も仲間に入ってるの?」
正直、野菜派か肉派かなんて心底どうでもいいんだけど。
「『もふもふタイム』禁止にしますよ?」
「お肉大好き! 野菜敵! だめぜったい!」
「なにやら物騒でございますね~~」
く、愛には逆らえない。
「ア~~~タノシカッタ~~」
「ネ~~」
「サッキノニンゲンヨリタノシカッタ~~」
「モットアソビタイ~~」
「いや、お前ら当初の目的忘れてるだろ」
「「「「?」」」」
全員揃ってきょとんとしている図は、間抜け以外のなにものでもない。なにも伊達や酔狂でこいつらの戯れに付き合っていたわけではないのだ。
「私達はこの遺跡の次に進みたいのです。貴方達を捕まえれば次に進めるのでしょう?」
「「「「?」」」」
「どうすればよいのですか?」
「「「「?」」」」
「・・・・・・・・・」
「だめだルウ! ここでノーム達を殺したら! だから拳と足を下ろしてくれ!」
ルウをなんとか止めるけど、このままじゃ打つ手なしなのは変らない。まさかここまで付き合わせておいて、なんの意味もなかったなんてことは勘弁してもらいたい。
「あららら~~。きっと遊ぶのに夢中でおもいだせないのでございますね~~。大丈夫でございますよ~~? ゆっくり時間をかけてでかまいません」
切羽詰まっている俺達とは正反対、どこまでもおっとりと慈愛に満ちた破顔でノーム達を撫でるアンナには敬意すら持てる。女神かこいつ。
「? ご主人様、アンナ様が」
「ん?」
「ア、ソウダソウダ! ヤクメノコッテタ!」
「ヤクメ――! ヤクメヤクメ――!」
急にそわそわ、もぞもぞとしだしたノーム達。ぎゅ、ぎゅ、と互いに身を寄せ合ってさながらおしくら饅頭だ。
「ニンゲン、コレトイテ!」
「トイテトイテ!」
「ジャナイトデキナイ!」
乞われるままに『炎縛』の発動をやめる。するとノーム達は先程よりもぎゅ、ぎゅ、ぎゅううううう~~~っと寄せ合い、わっせわっせと仲間の背中に登っていく。人一人分の高さにまでなると、青白い光に包まれて目を覆った。
「デキタ! デキタデキタ!」
眩んだ目を開けると、ノーム達は一人もいやしなかった。代わりに遺跡に侵入するときと同じ扉がずん、とそびえ立っている。
「トオッテ! トオッテ!」
扉から、ノーム達の幾重にも重なった大音声が発せられる。ノーム達が扉に変化したらしい。
「これも、魔法なのでしょうか?」
「ああ、そうだろうな」
どんな仕組みなのか、それを調べたい欲求がうずうずしてくる。おそるおそる手を伸ばし、触れてみるけど硬い材質の感触はない。透けていて、スカッと空ぶってしまった。仕方ない。帰ったときじっくりと調べよう。
「まぁ、この扉がノームさん達なのでしょうか?」
「ソウソウ!」
「ボクタチツカイステ!」
「デモマタヨミガエル! ソウイウケイヤク! ダイマドウシコワイ!」
なんか凄いおそろしいこと口走ってるけど。大魔導師はこのノーム達になにをしたんだ?
「マタネ、マタネ!」
「アンナ、ユーグ!」
「イヌ!」
「ご主人様、どうにかしてこの扉壊せませんか?」
「今の俺には無理かな」
「この役立たず」
さっさとここを去ろう。グレフレッド達もうそうだけど、ルウのストレスがこのままじゃまずい。
「「「「アンナ、マタネ――!」」」」
「はぁ~い、またでございますよ~~~」
三人と、そして魔物達で門扉をくぐる。ゆっくり閉まっていくにつれて、先を照らしていた光が狭まり、重々しい施錠音と衝突音と共に、完全に闇に包まれる。
「ワー、ツカマッタ-」
「ツカマッタネー」
「タノシカッター」
こいつら、俺達の苦労を知ってか知らずか呑気にキャッキャと笑ってやがる。まるで子供だ。
「デモイヌノコヘタッピ―」
「ネー」
「チョロイネー」
「チョロイチョロイ-」
「ですから私はウェアウルフだとあれほど」
「待ったルウ! せめて八つ裂きにするのはここを突破してからだ!」
「・・・・・・・・・ちっ」
爪を迫らせていたルウをなんとか説き伏せる。俺もそうだけど、ルウはノーム達に完全に手玉にとられていたからイライラもひとしおだろう。スタミナと体力は俺以上にあるとはいえ、からかわれながら追わされたことで冷静さを失い、寸前に躱されるということを何度かしていた。
まぁ、それは俺も同じだけど。まだ最初の段階なんだけど、俺達だけぐったりと疲労困憊。
「皆さん元気でございますね~~。お腹はすきませんか~~?」
「お前はへこたれねぇなぁ」
三人の中で一番の不安材料であったアンナが、以外とすいすい捕まえていったことは意外だったし、それに今も疲れた様子なんて微塵もない。魔物以上の化け物なんじゃないか?
まぁ、アンナのせいで黒焦げになったり捕まえられたノーム達が逃げだしたりしたから、どっこいどっこいなんだけど。
「孤児院の子供達とよく鬼ごっこをしておりますので慣れております。それに皆さん素直な心の持ち主なのでどこにいるのかわかるのでございますよ~~」
? それって、子供と遊び慣れているからどこにいるか大体予想ができるってことだろうか?
「く、これが野菜しか食べない人の力だというのですか・・・・・・・・・」
「違うはずだよ?」
「く、ですがまだ勝負はここからでございます。お肉の力を見せつけてやりましょう。ねぇご主人様?」
「俺も仲間に入ってるの?」
正直、野菜派か肉派かなんて心底どうでもいいんだけど。
「『もふもふタイム』禁止にしますよ?」
「お肉大好き! 野菜敵! だめぜったい!」
「なにやら物騒でございますね~~」
く、愛には逆らえない。
「ア~~~タノシカッタ~~」
「ネ~~」
「サッキノニンゲンヨリタノシカッタ~~」
「モットアソビタイ~~」
「いや、お前ら当初の目的忘れてるだろ」
「「「「?」」」」
全員揃ってきょとんとしている図は、間抜け以外のなにものでもない。なにも伊達や酔狂でこいつらの戯れに付き合っていたわけではないのだ。
「私達はこの遺跡の次に進みたいのです。貴方達を捕まえれば次に進めるのでしょう?」
「「「「?」」」」
「どうすればよいのですか?」
「「「「?」」」」
「・・・・・・・・・」
「だめだルウ! ここでノーム達を殺したら! だから拳と足を下ろしてくれ!」
ルウをなんとか止めるけど、このままじゃ打つ手なしなのは変らない。まさかここまで付き合わせておいて、なんの意味もなかったなんてことは勘弁してもらいたい。
「あららら~~。きっと遊ぶのに夢中でおもいだせないのでございますね~~。大丈夫でございますよ~~? ゆっくり時間をかけてでかまいません」
切羽詰まっている俺達とは正反対、どこまでもおっとりと慈愛に満ちた破顔でノーム達を撫でるアンナには敬意すら持てる。女神かこいつ。
「? ご主人様、アンナ様が」
「ん?」
「ア、ソウダソウダ! ヤクメノコッテタ!」
「ヤクメ――! ヤクメヤクメ――!」
急にそわそわ、もぞもぞとしだしたノーム達。ぎゅ、ぎゅ、と互いに身を寄せ合ってさながらおしくら饅頭だ。
「ニンゲン、コレトイテ!」
「トイテトイテ!」
「ジャナイトデキナイ!」
乞われるままに『炎縛』の発動をやめる。するとノーム達は先程よりもぎゅ、ぎゅ、ぎゅううううう~~~っと寄せ合い、わっせわっせと仲間の背中に登っていく。人一人分の高さにまでなると、青白い光に包まれて目を覆った。
「デキタ! デキタデキタ!」
眩んだ目を開けると、ノーム達は一人もいやしなかった。代わりに遺跡に侵入するときと同じ扉がずん、とそびえ立っている。
「トオッテ! トオッテ!」
扉から、ノーム達の幾重にも重なった大音声が発せられる。ノーム達が扉に変化したらしい。
「これも、魔法なのでしょうか?」
「ああ、そうだろうな」
どんな仕組みなのか、それを調べたい欲求がうずうずしてくる。おそるおそる手を伸ばし、触れてみるけど硬い材質の感触はない。透けていて、スカッと空ぶってしまった。仕方ない。帰ったときじっくりと調べよう。
「まぁ、この扉がノームさん達なのでしょうか?」
「ソウソウ!」
「ボクタチツカイステ!」
「デモマタヨミガエル! ソウイウケイヤク! ダイマドウシコワイ!」
なんか凄いおそろしいこと口走ってるけど。大魔導師はこのノーム達になにをしたんだ?
「マタネ、マタネ!」
「アンナ、ユーグ!」
「イヌ!」
「ご主人様、どうにかしてこの扉壊せませんか?」
「今の俺には無理かな」
「この役立たず」
さっさとここを去ろう。グレフレッド達もうそうだけど、ルウのストレスがこのままじゃまずい。
「「「「アンナ、マタネ――!」」」」
「はぁ~い、またでございますよ~~~」
三人と、そして魔物達で門扉をくぐる。ゆっくり閉まっていくにつれて、先を照らしていた光が狭まり、重々しい施錠音と衝突音と共に、完全に闇に包まれる。
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