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本編
悪魔と二人だけの秘密-1
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十夜のいない帰り道、紗綾は圭斗と並んで歩いた。
昨日と同じでありながら、まるで気分が違う。幸いだったのはリアムとは帰り道が全く逆方向だったことだろうか。
そうしていれば自然と圭斗がいる帰り道はあと何回残されているのかと考えてしまう。
圭斗はあんなことがなければ紗綾が一生関わることのなかったかもしれない種の人間だ。
そう思えば思うほど何を話せばいいかわからなくなる。
「ねぇ、先輩。俺が部活、さよならさせられるかも、って思ってます?」
不意に圭斗が言い、紗綾はどきりとした。
どうして、今、考えていることがわかってしまったのか。
「先生から聞いたの……?」
「やっぱりそうっスか」
もう嵐は話したのか。圭斗はどんな気分なのか。
紗綾が何を言ったらいいかわからないでいると、そのまま圭斗は続ける。
「生贄は一年に一人、仮入部なんて言ってるのは、俺かあいつかどっちかでいいってことでしょ? しかも、あいつの方が後から来たのに俺の方が不利」
「ロビンソン君はサイキックだって……」
サイキック、オカ研にとって非常に重要なことだ。
圭斗が紗綾と同じように何でもないなら、彼は必要ないことになってしまう。
「本人の言ってることなんて当てにならないっスよ。特にあいつ変人だし、幽霊いる家に住んでたとか、悪さすると投げ飛ばすとか。イギリス人的なネタっスよ、絶対」
「でも……」
追いかけられたこともあり、紗綾もリアムのことはちょっと変な子だと認識している。
しかしながら、幽霊が見えて、暴力を働くとなると紗綾には思い浮かぶ人物がいる。嵐が言うように嘘ではないだろうと思ってしまう。
「だって、それが本当なら仮入部なんてまどろっこしいことしないでさっさと俺を追い出せばいいだけのことなんスから」
嵐もあまり気乗りがしないようだったが、彼には決定権がないとも言える。
全てはオカ研においては絶対的権力を持つ魔女の采配次第だ。
だから、歓迎会まで引き延ばすのだろう。魔女に絶対的な選択をさせるために。
「俺は絶対に辞めないっスよ。だって、紗綾先輩が俺を釣ったんスから」
「釣ったって……」
確かに圭斗を生贄として差し出したのは紗綾だが、圭斗は自ら生贄になったのだ。
「責任とって下さいってことで」
責任などと言われると紗綾は増々どうしたらいいかわからなくなる。
無責任と言われるかもしれないが、苦手な言葉であるのは間違いない。
「ねぇ、俺を信じてよ、紗綾先輩」
その眼差しから圭斗が真剣だということはわかるが、紗綾は頷くことができなかった。
たとえ、紗綾が信じても、魔女は非情な判断を下すだろう。
彼は魔女の恐ろしさを知らない。
「信じてくれれば絶対に大丈夫っスから」
絶対なんてないと紗綾は思う。
そんな言葉は魔女の前では無意味だ。魔女こそが唯一の絶対であるのだから。
「まあ、仮に俺がさよならさせられたって、繋がりが切れるわけじゃないっスよ」
確かにその通りかもしれない。
たとえ、今年の生贄がリアムになったとしても、彼にその気があればいつでも会える。
けれど、代わりにリアムが部室にいることになると不安が大きい。
「俺はいつだって紗綾先輩に会いに行く。いっそ、先輩を連れ出そうか? 幸せにするって約束したし、俺にはできると思うっスよ」
圭斗は軽く言っているようだが、紗綾はドキドキしていた。
彼は紗綾にとって未知の人間だからこそ、本気がわからない。
「圭斗君は何でそんなに自信があるの?」
紗綾は意を決して聞いてみることにした。
彼はいだって自信に満ちている。紗綾には羨ましく思えるほどに。
「うーん……お守りがあるからっスかね」
少し考えるような素振りを見せてから、圭斗はシャツの下からペンダントを手繰り寄せて紗綾に見せた。
「お守り?」
「そう、俺の宝物。婆ちゃんからもらったんス」
赤い石が非常に印象的なとてもシンプルなペンダントだった。
もしかしたら、護符なのかもしれないと紗綾は思う。
昨日と同じでありながら、まるで気分が違う。幸いだったのはリアムとは帰り道が全く逆方向だったことだろうか。
そうしていれば自然と圭斗がいる帰り道はあと何回残されているのかと考えてしまう。
圭斗はあんなことがなければ紗綾が一生関わることのなかったかもしれない種の人間だ。
そう思えば思うほど何を話せばいいかわからなくなる。
「ねぇ、先輩。俺が部活、さよならさせられるかも、って思ってます?」
不意に圭斗が言い、紗綾はどきりとした。
どうして、今、考えていることがわかってしまったのか。
「先生から聞いたの……?」
「やっぱりそうっスか」
もう嵐は話したのか。圭斗はどんな気分なのか。
紗綾が何を言ったらいいかわからないでいると、そのまま圭斗は続ける。
「生贄は一年に一人、仮入部なんて言ってるのは、俺かあいつかどっちかでいいってことでしょ? しかも、あいつの方が後から来たのに俺の方が不利」
「ロビンソン君はサイキックだって……」
サイキック、オカ研にとって非常に重要なことだ。
圭斗が紗綾と同じように何でもないなら、彼は必要ないことになってしまう。
「本人の言ってることなんて当てにならないっスよ。特にあいつ変人だし、幽霊いる家に住んでたとか、悪さすると投げ飛ばすとか。イギリス人的なネタっスよ、絶対」
「でも……」
追いかけられたこともあり、紗綾もリアムのことはちょっと変な子だと認識している。
しかしながら、幽霊が見えて、暴力を働くとなると紗綾には思い浮かぶ人物がいる。嵐が言うように嘘ではないだろうと思ってしまう。
「だって、それが本当なら仮入部なんてまどろっこしいことしないでさっさと俺を追い出せばいいだけのことなんスから」
嵐もあまり気乗りがしないようだったが、彼には決定権がないとも言える。
全てはオカ研においては絶対的権力を持つ魔女の采配次第だ。
だから、歓迎会まで引き延ばすのだろう。魔女に絶対的な選択をさせるために。
「俺は絶対に辞めないっスよ。だって、紗綾先輩が俺を釣ったんスから」
「釣ったって……」
確かに圭斗を生贄として差し出したのは紗綾だが、圭斗は自ら生贄になったのだ。
「責任とって下さいってことで」
責任などと言われると紗綾は増々どうしたらいいかわからなくなる。
無責任と言われるかもしれないが、苦手な言葉であるのは間違いない。
「ねぇ、俺を信じてよ、紗綾先輩」
その眼差しから圭斗が真剣だということはわかるが、紗綾は頷くことができなかった。
たとえ、紗綾が信じても、魔女は非情な判断を下すだろう。
彼は魔女の恐ろしさを知らない。
「信じてくれれば絶対に大丈夫っスから」
絶対なんてないと紗綾は思う。
そんな言葉は魔女の前では無意味だ。魔女こそが唯一の絶対であるのだから。
「まあ、仮に俺がさよならさせられたって、繋がりが切れるわけじゃないっスよ」
確かにその通りかもしれない。
たとえ、今年の生贄がリアムになったとしても、彼にその気があればいつでも会える。
けれど、代わりにリアムが部室にいることになると不安が大きい。
「俺はいつだって紗綾先輩に会いに行く。いっそ、先輩を連れ出そうか? 幸せにするって約束したし、俺にはできると思うっスよ」
圭斗は軽く言っているようだが、紗綾はドキドキしていた。
彼は紗綾にとって未知の人間だからこそ、本気がわからない。
「圭斗君は何でそんなに自信があるの?」
紗綾は意を決して聞いてみることにした。
彼はいだって自信に満ちている。紗綾には羨ましく思えるほどに。
「うーん……お守りがあるからっスかね」
少し考えるような素振りを見せてから、圭斗はシャツの下からペンダントを手繰り寄せて紗綾に見せた。
「お守り?」
「そう、俺の宝物。婆ちゃんからもらったんス」
赤い石が非常に印象的なとてもシンプルなペンダントだった。
もしかしたら、護符なのかもしれないと紗綾は思う。
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