スリーヤミーゴス~不仲な美男美女トリオは犯罪がお好き?~

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第二章

永遠の花嫁 03

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「興味ねぇっての」
「嘘吐き。針千本飲んでよ」

 捺樹の責めるような視線に大翔は大仰に肩を竦めた。彼は嘘を吐いているつもりなど少しもないのだろう。大翔はひねくれた捺樹に比べれば素直な人間だ。

「どうにでもなっちまえよ。俺には関係ねぇ。ただし、面倒なことには巻き込んでくれるな。俺の聖域で不快なものも見せるな」

 大翔は今を生きる人間には興味を抱けない。安楽椅子探偵として完璧に過去の事件を解き明かす彼の欠陥だ。あるいは、才能の代償なのか。
 それが嘘ではないと捺樹も知っているはずなのに、と颯太は疑問を抱く。
 大翔自身が気付いていないだけだと言うのだろうか。現在の闇を見詰める捺樹の眼力ならあり得る話だ。しかし、振り返ってみても颯太にはわからなかった。

「その言葉忘れないでよ。まあ、忘れさせてあげないけどね」
「俺はてめぇにもあいつにも興味はねぇ。特にてめぇはめんどくせぇ。大体、何でてめぇがあいつにそこまで入れ込むのかもわからねぇ。絶対に解き明かしたくねぇ謎だ」
「お前の側の言葉で言うなら、音楽性の違いって奴じゃないかな?」
「はっ、てめぇなんか、そんな円満な理由で抜けさせねぇよ。解雇だ、解雇。むしろ、今すぐ辞めてくれ、俺はてめぇの入部を受理したつもりはねぇ」

 捺樹は冷やかしに来てクロエに一目惚れし、大翔に断りもなく直接校長に承認させて犯研に入り込んだと言う。
 そして、自分の手の内を見せた二人目の探偵に校長は大喜びだったと言う。いっそ、探偵部に名前を変えないかという提案までしてきたほどだと聞いている。つまり、校長の探偵好きによってこの犯研は成り立っているとも言えるだろう。

「独裁は崩壊を招くよ。君のバンドもいつまでもつか……解散ライヴくらいならお情けで行ってあげてもいいよ」

 ふふふふふっ、と捺樹が怖いほど綺麗に笑う。颯太は同性ながら妙な色気を感じてぞっとしてしまった。
 《ドラグーン》の大ファンとしては聞き捨てならないが、黙っておくのが賢明だと判断するほどには恐ろしいものだった。

「うちのバンドには、てめぇみてぇなぶっ壊れた奴はいねぇからな。心配無用だ」
「心配なんかするわけないでしょ? 俺にとって、お前は目障りなだけなんだから」
「安心しろ、てめぇはアウトオブ眼中だ」

 捺樹の敵視は一方的なもので、大翔はただ煩わしいと思っているだけだが、それで捺樹が落ち着くならば誰も苦労しない。とにかく彼はクロエが絡むと面倒臭い男だった。

「じゃあ、その内、俺がクロエを連れて辞めても?」
「もう構わねぇよ」

 大翔は自分が安楽椅子探偵であることを隠し、謎解きは犯研の活動の一環となっている。表向き大翔は単なるミステリー好きという認識だ。
 安楽椅子探偵としても、自ら連絡をとることはない。颯太もお目にかかったことはないが、大翔には目であり耳であり鼻であり手足である人物がいるらしい。

「ああ、今度の生贄はおちびちゃんね」

 大翔は他人からの評価さえ興味はない。謎さえ解ければ手柄が自分のものである必要もない。クロエと捺樹が抜ければ今度は颯太一人に擦り付ければいいだけの話だ。


 ガラリと扉が開き、クロエが入ってくる。部室に入るのにノックすることもないのだが、微妙なタイミングに颯太はビクリとした。

「何の話?」

 緊迫した空気を感じ取ったのかクロエが首を傾げれば重苦しさは一瞬にして弾け飛んだ。

「クロエ!」

 捺樹はパッと表情を明るくして飛び付かんばかりだったが、すぐに紅茶の用意にかかる。

「それじゃあ、今日も一緒にいてあげられなくてごめんね」

 砂時計をセットし、クロエの前にカップを置いて捺樹は鞄を掴む。よほど差し迫っているのか、もう帰るようだ。

「最近、若い女の子が失踪してるって話だから気を付けて。みんな、君ほど可愛くなかったけど」

 思い出したように捺樹がくるりと振り返る。それは演出なのかもしれない。

「これ持ってて。これからは毎日、片時も離さないで。何か嫌な予感がするんだ」

 捺樹はコートのポケットから取り出したネックレスをクロエの首にかける。今までのネックレスとは違い、かなり大振りな物である。
 即座に外そうとするクロエの手を彼は包み込んで許さなかった。

「これが嫌なものを引き寄せる気がするんだけど……」

 クロエは訝しげにしている。またネックレスかと迷惑がっているのだろう。

「俺が必ず君を守るから」

 強く、深い愛情を感じられる言葉だった。捺樹はそっとクロエの頭を引き寄せて、彼女の額に自分の唇を押し当てる。それは、とてもドラマティックに見えた。喉元に万年筆が突き付けられ、両手を挙げて離れるまでは。
 だが、颯太は現実になるなどとは思わなかった。クロエも大翔もそうだろう。
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