昨日見た夢の話をしようか〜たまに予知夢が見られる令嬢ですけど、私は聖女ではありませんよ?〜

陰陽@4作品商業化(コミカライズ他)

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第20話 ファースト……キス?

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「目を閉じちゃ駄目だよ。」
 そう言って、ゆっくりと顔を近付けてくるアドリアン王子。
「え?ちょ、触れないって……。」

「黙って。」
 近付いてくるアドリアン王子を押し戻そうとした右手を、アドリアン王子が左手でそっと包み込むように掴んでくる。

 近付いてくる顔を直視出来ない。
 思わず目を閉じてしまう。──ムニッ。
 ん?なんか思ってたのと違う?

 てっきりキスされるのだとばかり思ったんだけど、アドリアン王子の唇が特別かたいとかじゃなければ、私の唇に触れているのは、アドリアン王子の唇以外の何かだ。

 思わず目を開けると、私の唇に右手の人差し指を当てて、人差し指越しにキスしながら、じっと私の目の奥を覗き込んでいるアドリアン王子とバッチリ目があってしまう。

 ~~!!!~~!?☆!!!!!
 こんなの、直接されるより恥ずかしい!

 アドリアン王子は私から離れると、
「目を閉じたら駄目だと言ったのに。」
 とクスリと笑って、
「これはお仕置きしなくちゃ駄目かな?」

 と、私の右手を握っていた左手を引き寄せて、そっと私の手に口づけながら、悩ましく私を流し見てくる。

 無理!こんなの無理ぃ!!!

「君……?体が光って……。」

 その時だった。私の頭の中に流れ込んでくるたくさんの映像の数々。
 これは……、王都?

 休日にエミリアとよく行く、カフェの向かいの宝石店に、深夜泥棒が入り、宝石店の従業員に見つかって殺してしまい、宝石店に火を放って逃げた。

 こんなの、見たことない。
 これってまさか……。
 星読みの聖女の力!?

 呆然としている私に、
「どうした?」
 とたずねてくるアドリアン王子。

「力が……、発動したかも知れません。」
「なにが見えたんだ?」
 私はさっき見た映像をアドリアン王子に伝えた。

「わかった。さっそく警備隊に伝えよう。
 どうやらうまくいったようだ。」
 そう言って1人納得している。

「こっ、この為にあんな恥ずかしいことを?
 私にああいうことをしたら、星読みの力が発動するからって……!」

「違うぞ?確かにそれもあるが……。
 本当はもっと直接的なことをするように、母上からは言われていたんだが、さっきも言った通り、君を大切にしたかったから、私が我慢をして、折り合いをつけた結果だ。」

「ちょっ……、直接されるより、こっちのほうが、よっぽど恥ずかしいですよ!」
 私は左手の拳を握りしめて主張した。

「なら、いつでも直接してもいいということかな?」
「そっ、そういうわけじゃありません!」

「わかっているさ。君が嫌がっているのは、私が嫌なのではなく、こういうことすべてが恥ずかしいからだろう?」

「当たり前ですよ!慣れてないんですから。
 アド……、ミュレールさんは、こういうことに慣れてらっしゃるみたいですけど。」

「心得違いだな。私も初めてだよ?」
「絶対嘘ですっ!」
「……本当だ。こういうことをするのも、……人を好きになるのも。」

 真剣な眼差しで言われて、思わずドキッとする。
「──そして、この先君以外に、したいとも思わない。」

「し、信じられません。」
 信じられないと言うより、信じてしまったら、何か自分が大きく変えられそうで怖い。

「困ったな、どうしたら信じてくれる?」
 本当に困った風に、眉を下げて微笑んでくる。なんて言ったらいいのだろう。

 膝の上で、アドリアン王子に掴まれていないほうの左手を、ギュッと握りしめて目線をそらす。

「君は私と婚約してくれたけれど、私の本気を信じてくれていないようだ。少しずつ、信じてもらうしかないだろうね。こういうことにも、少しずつ慣れて欲しいしね。」

「な、慣れるって……。」
「何度も触れ合えば、そのうち慣れるよ。
 本番までに、少しずつ君を慣らしていくから、そのつもりでいて。」

 聖女の力の開放にもつながるしね、と言ってアドリアン王子が微笑む。
 いつもの人をくったような笑顔だ。

 さっきのでも心臓が潰れそうだったのに、いったいこの先私に何をするつもりなの!?
 思わず腰が引けて後ろに下がる。

「おや。これでも君を怖がらせないように、我慢しているつもりなんだから、あんまり怖がらないで欲しいな。
 ──私だって傷付くんだよ?」

 その顔は卑怯だわ!
 いつもクールな男の人が、子犬が甘えるみたいな表情をするなんて!
 これを見たことがあるのが私だけなんて!

「……怖がってはいません。
 ちょっとびっくりしただけです。」
 そう言うしかないじゃない。ていうか、頭撫でたい!なんか耳まで見える気がする!

 なんかいいように踊らされてる気がする!
 ニコニコしているアドリアン王子は、自宅に到着するまで、私の手を握ったまま離さなかったのだった。

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