養っていただかなくても結構です!〜政略結婚した夫に放置されているので魔法絵師として自立を目指したら賢者と言われ義母にザマァしました!(続く)
陰陽@4作品商業化(コミカライズ他)
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第15話 未来からの助け①
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フェルディナンド様が魔法でウンガー卿を捕縛する。いったい目の前で何が起こっているのだろう。私は混乱するばかりだった。
「私はお前の企みを知り、こちらにいらっしゃるフィリーネ嬢に、日にちを戻す絵を描いて貰ってやって来たのだ。もうすべて私にバレているのだ。大人しく観念したまえ。」
私が絵を描いた?
私はキョトンとしてフェルディナンド様が持っている、日付だけのカレンダーの絵を見た。確かに描いた記憶はないけれど、あのタッチは間違いなく私のものだった。
「フィリーネ嬢、──その契約書の裏面を確認してみるといい。驚くことだろう。
隠匿魔法は解除してある。」
私はそう言われて、契約書をひっくり返すと、裏面にも文字があることに気が付いた。
「なんなのこれは……。──ただし保証書類作成料とは別にクサーヴァー・ウンガーに売却価格の5割を支払うものとする。またクサーヴァー・ウンガーに断りなく絵を売却した場合は、すべての権利をクサーヴァー・ウンガーに渡すものとする、ですって……!?」
「そうだ。この男は、召喚魔法、それどころか時間を戻す魔法までを生み出すことの出来るフィリーネ嬢の絵を狙い、私が出張に行っている間に、勝手にあなたに会って契約をしてしまったのだ。それを知った私は、あなたに日にちを巻き戻す絵を描いて貰い、ここまでやってきたというわけだ。」
つまり未来の私はこの男に騙されて、お金を巻き上げられてしまったということなの?
魔塔には許可なく中には入れない、王族ですら不可侵の領域。ましてや職員と面会の連絡をつける手段なんてものもない。誰かにこの男の悪事を訴えることも出来なければ、契約書の魔法による強制力まで存在する。
私が絵を描かなければそれまでだけど、手数料を引かれて半分近くでも手元に残るのであれば、私は自立の為に絵を売ったことだろう。この男の手にお金が渡ることに納得がいかなくとも。私は契約書を握りしめて、迎えていたであろう暗雲の未来に歯噛みした。
フェルディナンド様は私に向き直ると、
「安心してくれ。もう君に誰も危害を加えない。私がすべてうまくやるから。」
と言ってくれた。そして──いきなり私を優しく抱きしめた。──!?????
「……君が無事で良かった……。」
「フェ、フェルディナンド様!?」
困惑している私に、
「ああ、そうか、今のフィリーネ嬢は私を知らないんだったな。突然すまない。だが今少しこうさせてくれ。本当に心配したんだ。」
フィリーネ嬢と呼ばれてドキリとする。貴族女性は夫や婚約者以外の男性に、許可することなく名前を呼ばれるなんてことはない。未来の私は既に伯爵夫人ではないのかしら?
「……。はい……。」
そんな風にさみしげに言われては、強く拒絶も出来なかった。きっと未来のフェルディナンド様は、私の為に頑張ってくれたのだ。
「──これから私は未来に戻る。今の私は君を知らない。冷たくあしらうかも知れない。
だけどこれだけは覚えておいてくれ。やがて私は君を愛する男の一人になるだろう。」
「──え?」
「何事ですか!?大きな音がしましたが!」
突然バタンとドアがあき、さっきの女性職員を含めた多数の職員が部屋に入って来る。
「フェ、フェルディナンド様、人が……。」
「ファルケンベルク卿、……君はいったいこの女性になにを?」
「ああ、邪魔が入ってしまったか。」
焦った様子の職員たちを前に、私から離れて悠然と立ち上がり、テーブルの上の契約書を男性職員に手渡した。
「私はクサーヴァー・ウンガーが、魔法絵師たちに詐欺の契約書を書かせ、搾取している事実を突き止めた。──この契約書を見て欲しい。これと同じものを多数の魔法絵師を騙して書かせていたのだ。」
「嘘だ!デタラメだ!──ムグッ!?」
フェルディナンド様の魔法がウンガーの口を塞ぐ。フェルディナンド様は服の中から手紙を取りだして女性職員に手渡した。
「私は未来に戻らねばならない。これを明日戻って来る私に手渡して欲しい。騙された魔法絵師たちの名前の書かれたリストだ。私ならうまいことやる筈だ。」
女性職員は、わかりましたとうなずいた。
「それと、これは新たな時間操作魔法の宿った絵だ。すぐに判定に移って欲しい。確認され次第、フィリーネ嬢名義の魔法使用権の権利証を作成し、契約を交わしてくれ。──これは革命だ。これから忙しくなるぞ。」
そう言って私の描いた壁掛け時計の絵を別の職員に手渡した。
「過去の私が事態を把握し、魔法使用権の権利証、及び契約書が作成されるまでは時間がかかるだろう。また改めて呼び出させて貰うから、それまで自宅で待っていてくれフィリーネ嬢。必ず君にとって良きようにする。」
「はい、わかりました……。」
「──では私は戻る。」
フェルディナンド様は、日にちのみが描かれた、カレンダーの魔法絵を右から左に撫でて、その姿を私たちの前から消した。
他の職員たちが捕縛されたウンガーを連れて行き、ウンガーは裁判にかけられることになった。私は魔塔の職員たちに何度もお詫びをされて、自宅に帰ることとなった。
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「私はお前の企みを知り、こちらにいらっしゃるフィリーネ嬢に、日にちを戻す絵を描いて貰ってやって来たのだ。もうすべて私にバレているのだ。大人しく観念したまえ。」
私が絵を描いた?
私はキョトンとしてフェルディナンド様が持っている、日付だけのカレンダーの絵を見た。確かに描いた記憶はないけれど、あのタッチは間違いなく私のものだった。
「フィリーネ嬢、──その契約書の裏面を確認してみるといい。驚くことだろう。
隠匿魔法は解除してある。」
私はそう言われて、契約書をひっくり返すと、裏面にも文字があることに気が付いた。
「なんなのこれは……。──ただし保証書類作成料とは別にクサーヴァー・ウンガーに売却価格の5割を支払うものとする。またクサーヴァー・ウンガーに断りなく絵を売却した場合は、すべての権利をクサーヴァー・ウンガーに渡すものとする、ですって……!?」
「そうだ。この男は、召喚魔法、それどころか時間を戻す魔法までを生み出すことの出来るフィリーネ嬢の絵を狙い、私が出張に行っている間に、勝手にあなたに会って契約をしてしまったのだ。それを知った私は、あなたに日にちを巻き戻す絵を描いて貰い、ここまでやってきたというわけだ。」
つまり未来の私はこの男に騙されて、お金を巻き上げられてしまったということなの?
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私が絵を描かなければそれまでだけど、手数料を引かれて半分近くでも手元に残るのであれば、私は自立の為に絵を売ったことだろう。この男の手にお金が渡ることに納得がいかなくとも。私は契約書を握りしめて、迎えていたであろう暗雲の未来に歯噛みした。
フェルディナンド様は私に向き直ると、
「安心してくれ。もう君に誰も危害を加えない。私がすべてうまくやるから。」
と言ってくれた。そして──いきなり私を優しく抱きしめた。──!?????
「……君が無事で良かった……。」
「フェ、フェルディナンド様!?」
困惑している私に、
「ああ、そうか、今のフィリーネ嬢は私を知らないんだったな。突然すまない。だが今少しこうさせてくれ。本当に心配したんだ。」
フィリーネ嬢と呼ばれてドキリとする。貴族女性は夫や婚約者以外の男性に、許可することなく名前を呼ばれるなんてことはない。未来の私は既に伯爵夫人ではないのかしら?
「……。はい……。」
そんな風にさみしげに言われては、強く拒絶も出来なかった。きっと未来のフェルディナンド様は、私の為に頑張ってくれたのだ。
「──これから私は未来に戻る。今の私は君を知らない。冷たくあしらうかも知れない。
だけどこれだけは覚えておいてくれ。やがて私は君を愛する男の一人になるだろう。」
「──え?」
「何事ですか!?大きな音がしましたが!」
突然バタンとドアがあき、さっきの女性職員を含めた多数の職員が部屋に入って来る。
「フェ、フェルディナンド様、人が……。」
「ファルケンベルク卿、……君はいったいこの女性になにを?」
「ああ、邪魔が入ってしまったか。」
焦った様子の職員たちを前に、私から離れて悠然と立ち上がり、テーブルの上の契約書を男性職員に手渡した。
「私はクサーヴァー・ウンガーが、魔法絵師たちに詐欺の契約書を書かせ、搾取している事実を突き止めた。──この契約書を見て欲しい。これと同じものを多数の魔法絵師を騙して書かせていたのだ。」
「嘘だ!デタラメだ!──ムグッ!?」
フェルディナンド様の魔法がウンガーの口を塞ぐ。フェルディナンド様は服の中から手紙を取りだして女性職員に手渡した。
「私は未来に戻らねばならない。これを明日戻って来る私に手渡して欲しい。騙された魔法絵師たちの名前の書かれたリストだ。私ならうまいことやる筈だ。」
女性職員は、わかりましたとうなずいた。
「それと、これは新たな時間操作魔法の宿った絵だ。すぐに判定に移って欲しい。確認され次第、フィリーネ嬢名義の魔法使用権の権利証を作成し、契約を交わしてくれ。──これは革命だ。これから忙しくなるぞ。」
そう言って私の描いた壁掛け時計の絵を別の職員に手渡した。
「過去の私が事態を把握し、魔法使用権の権利証、及び契約書が作成されるまでは時間がかかるだろう。また改めて呼び出させて貰うから、それまで自宅で待っていてくれフィリーネ嬢。必ず君にとって良きようにする。」
「はい、わかりました……。」
「──では私は戻る。」
フェルディナンド様は、日にちのみが描かれた、カレンダーの魔法絵を右から左に撫でて、その姿を私たちの前から消した。
他の職員たちが捕縛されたウンガーを連れて行き、ウンガーは裁判にかけられることになった。私は魔塔の職員たちに何度もお詫びをされて、自宅に帰ることとなった。
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