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第42話 大胆なお願い②

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「アルベルト、もう少し耐えてくれ。今ロープで縛ってやるから。ロープを貸してくれ。お前はアルベルトを手伝って、男を縛りやすく出来るよう、体をおさえていてくれ。」

 アルベルトのお父さまも、細身なのにアルベルト同様かなり力が強いらしく、2人がかりでおさえつけられた御者の男は、工房長にロープでグルグル巻きにされ、後ろ手にロープで縛られて、木にくくりつけられていた。

「明日役人を呼びに行こう。今日はここに置いておく他ないな。ごくろうさん、アルベルト。それにしても何があったんだ。」

「じいちゃん、この人、こないだ家を見に来たお客さん。こいつに襲われてた。だから捕まえた。たまたま通りかかって良かった。」

「本当に助かったけど、どうしてあなたも、こんな時間にこんな場所を歩いていたの?」
 私は正直それが不思議だった。自宅からも遠いのに、明かりもないのに、どうして?

「この時間にしか手に入らない素材がある。
 まだ工房で作業してた。だからそれを取りに来た。そうしたら見つけた。」

 そういえば、工房のほうは明かりがついていたわね。帰る時の目印に明かりをつけたまま、作業途中に素材を取りに来たということかしら。職人さんも大変ね。

「今日はうちに泊まるといい。あの家もあいてるけど、こんなことがあって1人は心配。
 それに怖くて寝られない、きっと。」

「ええ?でも、申し訳ないわ……。」
「そうしなさい。うちは男ばかりだが、家族が他にもいる中で、おかしなことをしようと考える奴はいない。部屋もあいているし。」

 工房長もそう言ってくれた。
 確かに、ガゼボを借りて休むつもりでいたけれど、こんなことがあったんじゃ、1人じゃ怖くて眠れそうもないわ……。

 私はお言葉に甘えることにして、工房長の自宅にお邪魔することにした。
「お風呂、まだ温かい?入って寝る。」
 アルベルトが工房長に声をかける。

「こら、お客さまを先にしなさい。
 お風呂がまだ温かいから、入って下さい。
 着替えは用意しておきますので。」

「いえ、私はお孫さんの次で結構です。
 少し気持ちを落ち着かせたいですし。」
 私は両手のひらを見せて断った。

「そうですか?では、暖炉に薪をくべて差し上げましょう。うちはあまり日が差し込まないので地面が温まらないせいか、夜は少し冷えますからな。湯冷めするといけない。」

「ありがとうございます。」
「部屋、案内する。」
 アルベルトがそう言って、先に立って歩いて行く。私はそのあとをついて行った。

「ここ。お弟子さんの部屋。今はいないから使って。着替え、持ってくる。」
「ありがとう。何から何までごめんなさい。
 朝には出て行くから……。」

「気にしないで。朝ご飯も食べて行って。俺が作るから。たいしたものじゃないけど。」
「あなたが料理をするの?」

「じいちゃんたちと交代で作ってる。
 明日は俺の番。だいぶ慣れた。」
「へえ……。」

 お母さまがいらっしゃらないから、男性陣で交代で料理をしているのね。
「──アルベルト。」

 部屋を出て行こうとしたアルベルトが、振り返って片目だけを扉の端からのぞかせる。
「え?」
「俺の名前。」

「ああ、ええ、知っているわ。
 私が呼んでも構わないの?」 
 年上の女性には全員緊張すると言っていたから、遠慮していたつもりだったけれど。

「構わない。村の人みんなそう呼ぶ。」
「そう、わかったわ、アルベルト。」
 そう言うと、アルベルトはそのまま出ていき、着替えを持って戻って来てくれた。

「先、風呂、入る。終わったら呼びに来る。
 トイレはそこを出て左。」
「ありがとう。待っているわね。」

 待っている間に、工房長が部屋を尋ねて来て、部屋の暖炉に薪をくべて火をつけてくれた。温かな薪の熱と、やわらかく揺れる明かりが、動揺した心を落ち着かせてくれる。

 暖炉に手のひらを近付けて温まった。外で冷えたからか、急に現実に戻ったような気がしたからか、トイレに行きたくなって来た。
 外に出て左に曲がりトイレを目指す。

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