養っていただかなくても結構です!〜政略結婚した夫に放置されているので魔法絵師として自立を目指したら賢者と言われ義母にザマァしました!(続く)
陰陽@4作品商業化(コミカライズ他)
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第53話 新婚気分はまだ早過ぎる②
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「な、何をおっしゃってるんですか!からかうのはやめてください!もう……!」
「はは、じゃあまた後でな。着替えたらダイニングキッチンまで降りて来てくれ。」
そう言って、レオンハルトさまは着替えを手に部屋を出て行った。──そう思っていたら、私が着替えの入った袋を、枕元寄りのベッドの脇から拾い、服のボタンに手をかけようとした瞬間、再び部屋のドアが開いて、
「──俺が覗くって手もあるな。」
と言ってニヤリと笑ってきた。
私がまだ着替えていないことを見越してのことだろうけど、なんてことするのかしら。
「もう!からかわないで下さい!レオンハルトさまはいちいち冗談をおっしゃらないと死ぬんですか!?早く着替えて、朝ごはんの準備をしてらして下さい!私も着替えたら、すぐに降りて手伝いに伺いますから!」
「ははは。怒った顔も可愛いな。」
またそんな冗談を言いつつ、レオンハルトさまは今度こそ部屋を出て行った。
枕でも投げつけてやればよかったかしら。
でも、抱きしめられていた恥ずかしさが、今のやり取りで薄れたのも事実だ。
……ひょっとして、その気まずさをどうにかする為だった、とか?
よくわからない方だわ。
でも、少なくとも嫌な感じが少しもしなかったのは、レオンハルトさまの人徳なのかしら。それとも私が……レオンハルトさまを好もしく思っているから……とか?まさかね。
私はまだ恋をしている場合じゃないもの。
そんな気にはなれないわ。イザークとの離婚が落ち着くまでは、浮ついた気持ちになっていたら駄目よ。冷静にならなくちゃね。
パジャマを脱いで服を着替えると、1階に降りてダイニングキッチンへと向かう。キッチンからはいい香りが漂っていた。
「よう、来たか。サラダを作るのを手伝ってくれるか?そこに材料は並べてある。」
言われて見ると、テーブルの上に何種類かの新鮮な野菜と、ボウルが置かれていた。
けれど、よく見ると、包丁もまな板も置いていなかった。これでどうしろと?
「あの……、包丁は?」
「ああ、すまない。使ってたもんでな。だがレタスなんかは、手でちぎったほうがうまいぜ?包丁を使い終わるまで、レタスをちぎってボウルの中に入れておいてくれないか。」
「わかりました。」
キッチンで手を洗わせていただいて、言われるがままに手でレタスをちぎって、ボウルの中に入れていく。しばらくすると、包丁を使い終えたレオンハルトさまが、包丁の持ち手をこちらに向けて、ほら、と差し出した。
包丁で、トマト、キュウリ、玉ねぎ、ハムを切っていき、ボウルの中で、砂糖、塩、お酢、オリーブオイルを入れ、フォークとスプーンでざっくりとあえていく。
こうして夫婦2人で料理を作るというのもいいわね。願わくば、いずれは2人で並んで料理の出来る、大きなキッチンがほしいわ。
……待って。私今、それに似たことをしていないかしら?レオンハルトさまに抱きしめられたまま、ベッドで目が覚めて。そのまま2人で朝ごはんを作っているだなんて。
いやだ、そう考えたら、なんだか恥ずかしくなってきてしまったわ。私、何をしているのかしら。レオンハルトさまの家で朝食なんて食べずに、そのまま帰れば良かったのに。
そうよ、お礼にレオンハルトさまの家を掃除するつもりだったじゃない。それだけして帰れば良かったんだわ。何を図々しく食事をいただこうとしてしまったのかしら。
「どうした?1人で百面相なんかして。」
出来たてのオムレツをテーブルに運びながら、混乱している私に微笑むレオンハルトさま。私がサラダを作り終えたのを見て、取り皿とナイフとフォークを持って来る。
────────────────────
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「はは、じゃあまた後でな。着替えたらダイニングキッチンまで降りて来てくれ。」
そう言って、レオンハルトさまは着替えを手に部屋を出て行った。──そう思っていたら、私が着替えの入った袋を、枕元寄りのベッドの脇から拾い、服のボタンに手をかけようとした瞬間、再び部屋のドアが開いて、
「──俺が覗くって手もあるな。」
と言ってニヤリと笑ってきた。
私がまだ着替えていないことを見越してのことだろうけど、なんてことするのかしら。
「もう!からかわないで下さい!レオンハルトさまはいちいち冗談をおっしゃらないと死ぬんですか!?早く着替えて、朝ごはんの準備をしてらして下さい!私も着替えたら、すぐに降りて手伝いに伺いますから!」
「ははは。怒った顔も可愛いな。」
またそんな冗談を言いつつ、レオンハルトさまは今度こそ部屋を出て行った。
枕でも投げつけてやればよかったかしら。
でも、抱きしめられていた恥ずかしさが、今のやり取りで薄れたのも事実だ。
……ひょっとして、その気まずさをどうにかする為だった、とか?
よくわからない方だわ。
でも、少なくとも嫌な感じが少しもしなかったのは、レオンハルトさまの人徳なのかしら。それとも私が……レオンハルトさまを好もしく思っているから……とか?まさかね。
私はまだ恋をしている場合じゃないもの。
そんな気にはなれないわ。イザークとの離婚が落ち着くまでは、浮ついた気持ちになっていたら駄目よ。冷静にならなくちゃね。
パジャマを脱いで服を着替えると、1階に降りてダイニングキッチンへと向かう。キッチンからはいい香りが漂っていた。
「よう、来たか。サラダを作るのを手伝ってくれるか?そこに材料は並べてある。」
言われて見ると、テーブルの上に何種類かの新鮮な野菜と、ボウルが置かれていた。
けれど、よく見ると、包丁もまな板も置いていなかった。これでどうしろと?
「あの……、包丁は?」
「ああ、すまない。使ってたもんでな。だがレタスなんかは、手でちぎったほうがうまいぜ?包丁を使い終わるまで、レタスをちぎってボウルの中に入れておいてくれないか。」
「わかりました。」
キッチンで手を洗わせていただいて、言われるがままに手でレタスをちぎって、ボウルの中に入れていく。しばらくすると、包丁を使い終えたレオンハルトさまが、包丁の持ち手をこちらに向けて、ほら、と差し出した。
包丁で、トマト、キュウリ、玉ねぎ、ハムを切っていき、ボウルの中で、砂糖、塩、お酢、オリーブオイルを入れ、フォークとスプーンでざっくりとあえていく。
こうして夫婦2人で料理を作るというのもいいわね。願わくば、いずれは2人で並んで料理の出来る、大きなキッチンがほしいわ。
……待って。私今、それに似たことをしていないかしら?レオンハルトさまに抱きしめられたまま、ベッドで目が覚めて。そのまま2人で朝ごはんを作っているだなんて。
いやだ、そう考えたら、なんだか恥ずかしくなってきてしまったわ。私、何をしているのかしら。レオンハルトさまの家で朝食なんて食べずに、そのまま帰れば良かったのに。
そうよ、お礼にレオンハルトさまの家を掃除するつもりだったじゃない。それだけして帰れば良かったんだわ。何を図々しく食事をいただこうとしてしまったのかしら。
「どうした?1人で百面相なんかして。」
出来たてのオムレツをテーブルに運びながら、混乱している私に微笑むレオンハルトさま。私がサラダを作り終えたのを見て、取り皿とナイフとフォークを持って来る。
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