養っていただかなくても結構です!〜政略結婚した夫に放置されているので魔法絵師として自立を目指したら賢者と言われ義母にザマァしました!(続く)
陰陽@4作品商業化(コミカライズ他)
文字の大きさ
大中小
184 / 192
第68話 聖女伝説とライバルの登場⑤
しおりを挟む
「私の力がお役に立てれば幸いです。早速試してみてもよろしいでしょうか?」
「ええ、お願いするわね。」
私はブリギッテさまの前で、絵を左から右に撫でた。すると魔法陣は発動し、眩い光に包まれる。それがブリギッテさまの全身を包みこんで、ブリギッテさまは不思議そうにそれを眺めていた。
「さあ、これでよくなったと思います。立ってみていただけませんか?ブリギッテさま。」
「なにか変化があったようには感じなかったけれど……。少し怖いわ。」
そう言って、ブリギッテさまは立とうとはしなかった。
「私が手助けしますよ、おばあさま。手を添えますので、立ってみて下さい。」
そう言って、シュテファンさまがブリギッテさまに手を差し出した。
「わかったわ……。そこまでシュテファンが言うのであれば……。」
恐る恐る立ち上がるブリギッテさま。
「──!!痛くないわ!足も腰も、どこも痛くないの!なんてことかしら!」
「良かったです。これからはもとの通りの生活が可能になると思いますわ。」
私がそうニッコリと微笑むと、
「聖女さま……。」
ブリギッテさまは感動したように、両手を口元で揃えて私をウルウルと見つめてくる。
「聖女さまだなんて大げさですわ。私は私の出来ることをしたまでですもの。」
謙遜する私に、
「シュテファン。あなた、この女性と結婚なさいな。」
と突然言い出した。
「おばあさま?何をいきなり……。」
シュテファンさまも驚いている。
「わたくしはあのコゼット・バーリルとかいう女が気に入らなかったのです。息子たちがなんだかんだ言っているようですが、我が家の当主はまだわたくし。シュテファンとあの女を結婚させて、シュテファンを婿に出すと言うのなら、当主は息子に譲らず、シュテファンに譲ります。そしてこの方を妻に迎えなさい。これは当主命令ですよ!」
「おばあさま、彼女はまだ人の妻ですよ。」
「まだ?まだということは、離婚の意思がおありということかしら?フィリーネさん。」
「はい、確かに私は離婚に向けて動いておりますが……。」
突然の申し出に困惑しかない。
「でしたらなんの問題もないでしょう。聖女の肩書の前に、離婚歴なんて些細なことよ。王族に目をつけられる前に、はやく周囲を固めることね。……これでも祖母ですもの。孫の気持ちはわかっていてよ、シュテファン。」
「おばあさま……。」
そう言われて赤面するシュテファンさま。
「わがフィッツェンハーゲン侯爵家は、いつでもあなたを受け入れる準備があるということだけは、覚えておいてちょうだいね。」
そう言ったブリギッテさまは、先程までの弱々しげな態度はどこへやら。現当主としての威厳を保った堂々とした姿で、そうキッパリと宣言したのだった。
村長さんの治療の約束をしていたこともあったので、それをシュテファンさまがブリギッテさまに伝えて、その日はそのまま失礼させていただくことになったのだけれど、まさか離婚もする前から、ご家族から嫁に来いだなんて言われるとは思わなかったわね……。歓迎して下さるのは有り難いけれど。
帰りの馬車の中で、アルベルトは終始不機嫌そうだった。
「……お嫁に行くつもりなの?」
アルベルトがぼそっと言う。
「え?まだ考えていないわ。まだ離婚もしていないし、誰かとどうこうなるなんて、考えられる立場じゃないもの。」
「そう、良かった。」
少しだけ機嫌がなおったみたいね。その足で村長さんの家に行き、アルベルトが来たことで、村長さんは私たちを出迎えてくれた。
「ご挨拶が遅くなり、大変申し訳ありませんでした。新しくこの村に住まわせていただいております、フィリーネと申します。」
貴族の名前はあえて伏せることにした。貴族が住むなんて、面倒しかないものね。知っている人だけ知っていればいいわ。
────────────────────
X(旧Twitter)始めてみました。
よろしければアカウントフォローお願いします。
@YinYang2145675
少しでも面白いと思ったら、エピソードごとのイイネ、または応援するを押していただけたら幸いです。
ランキングには反映しませんが、作者のモチベーションが上がります。
「ええ、お願いするわね。」
私はブリギッテさまの前で、絵を左から右に撫でた。すると魔法陣は発動し、眩い光に包まれる。それがブリギッテさまの全身を包みこんで、ブリギッテさまは不思議そうにそれを眺めていた。
「さあ、これでよくなったと思います。立ってみていただけませんか?ブリギッテさま。」
「なにか変化があったようには感じなかったけれど……。少し怖いわ。」
そう言って、ブリギッテさまは立とうとはしなかった。
「私が手助けしますよ、おばあさま。手を添えますので、立ってみて下さい。」
そう言って、シュテファンさまがブリギッテさまに手を差し出した。
「わかったわ……。そこまでシュテファンが言うのであれば……。」
恐る恐る立ち上がるブリギッテさま。
「──!!痛くないわ!足も腰も、どこも痛くないの!なんてことかしら!」
「良かったです。これからはもとの通りの生活が可能になると思いますわ。」
私がそうニッコリと微笑むと、
「聖女さま……。」
ブリギッテさまは感動したように、両手を口元で揃えて私をウルウルと見つめてくる。
「聖女さまだなんて大げさですわ。私は私の出来ることをしたまでですもの。」
謙遜する私に、
「シュテファン。あなた、この女性と結婚なさいな。」
と突然言い出した。
「おばあさま?何をいきなり……。」
シュテファンさまも驚いている。
「わたくしはあのコゼット・バーリルとかいう女が気に入らなかったのです。息子たちがなんだかんだ言っているようですが、我が家の当主はまだわたくし。シュテファンとあの女を結婚させて、シュテファンを婿に出すと言うのなら、当主は息子に譲らず、シュテファンに譲ります。そしてこの方を妻に迎えなさい。これは当主命令ですよ!」
「おばあさま、彼女はまだ人の妻ですよ。」
「まだ?まだということは、離婚の意思がおありということかしら?フィリーネさん。」
「はい、確かに私は離婚に向けて動いておりますが……。」
突然の申し出に困惑しかない。
「でしたらなんの問題もないでしょう。聖女の肩書の前に、離婚歴なんて些細なことよ。王族に目をつけられる前に、はやく周囲を固めることね。……これでも祖母ですもの。孫の気持ちはわかっていてよ、シュテファン。」
「おばあさま……。」
そう言われて赤面するシュテファンさま。
「わがフィッツェンハーゲン侯爵家は、いつでもあなたを受け入れる準備があるということだけは、覚えておいてちょうだいね。」
そう言ったブリギッテさまは、先程までの弱々しげな態度はどこへやら。現当主としての威厳を保った堂々とした姿で、そうキッパリと宣言したのだった。
村長さんの治療の約束をしていたこともあったので、それをシュテファンさまがブリギッテさまに伝えて、その日はそのまま失礼させていただくことになったのだけれど、まさか離婚もする前から、ご家族から嫁に来いだなんて言われるとは思わなかったわね……。歓迎して下さるのは有り難いけれど。
帰りの馬車の中で、アルベルトは終始不機嫌そうだった。
「……お嫁に行くつもりなの?」
アルベルトがぼそっと言う。
「え?まだ考えていないわ。まだ離婚もしていないし、誰かとどうこうなるなんて、考えられる立場じゃないもの。」
「そう、良かった。」
少しだけ機嫌がなおったみたいね。その足で村長さんの家に行き、アルベルトが来たことで、村長さんは私たちを出迎えてくれた。
「ご挨拶が遅くなり、大変申し訳ありませんでした。新しくこの村に住まわせていただいております、フィリーネと申します。」
貴族の名前はあえて伏せることにした。貴族が住むなんて、面倒しかないものね。知っている人だけ知っていればいいわ。
────────────────────
X(旧Twitter)始めてみました。
よろしければアカウントフォローお願いします。
@YinYang2145675
少しでも面白いと思ったら、エピソードごとのイイネ、または応援するを押していただけたら幸いです。
ランキングには反映しませんが、作者のモチベーションが上がります。
79
あなたにおすすめの小説
年に一度の旦那様
五十嵐
恋愛
愛人が二人もいるノアへ嫁いだレイチェルは、領地の外れにある小さな邸に追いやられるも幸せな毎日を過ごしていた。ところが、それがそろそろ夫であるノアの思惑で潰えようとして…
しかし、ぞんざいな扱いをしてきたノアと夫婦になることを避けたいレイチェルは執事であるロイの力を借りてそれを回避しようと…
【完】夫から冷遇される伯爵夫人でしたが、身分を隠して踊り子として夜働いていたら、その夫に見初められました。
112
恋愛
伯爵家同士の結婚、申し分ない筈だった。
エッジワーズ家の娘、エリシアは踊り子の娘だったが為に嫁ぎ先の夫に冷遇され、虐げられ、屋敷を追い出される。
庭の片隅、掘っ立て小屋で生活していたエリシアは、街で祝祭が開かれることを耳にする。どうせ誰からも顧みられないからと、こっそり抜け出して街へ向かう。すると街の中心部で民衆が音楽に合わせて踊っていた。その輪の中にエリシアも入り一緒になって踊っていると──
【書籍化決定】愛など初めからありませんが。
ましろ
恋愛
お金で売られるように嫁がされた。
お相手はバツイチ子持ちの伯爵32歳。
「君は子供の面倒だけ見てくれればいい」
「要するに貴方様は幸せ家族の演技をしろと仰るのですよね?ですが、子供達にその様な演技力はありますでしょうか?」
「……何を言っている?」
仕事一筋の鈍感不器用夫に嫁いだミッシェルの未来はいかに?
✻基本ゆるふわ設定。箸休め程度に楽しんでいただけると幸いです。
前世の記憶しかない元侯爵令嬢は、訳あり大公殿下のお気に入り。(注:期間限定)
miy
恋愛
(※長編なため、少しネタバレを含みます)
ある日目覚めたら、そこは見たことも聞いたこともない…異国でした。
ここは、どうやら転生後の人生。
私は大貴族の令嬢レティシア17歳…らしいのですが…全く記憶にございません。
有り難いことに言葉は理解できるし、読み書きも問題なし。
でも、見知らぬ世界で貴族生活?いやいや…私は平凡な日本人のようですよ?…無理です。
“前世の記憶”として目覚めた私は、現世の“レティシアの身体”で…静かな庶民生活を始める。
そんな私の前に、一人の貴族男性が現れた。
ちょっと?訳ありな彼が、私を…自分の『唯一の女性』であると誤解してしまったことから、庶民生活が一変してしまう。
高い身分の彼に関わってしまった私は、元いた国を飛び出して魔法の国で暮らすことになるのです。
大公殿下、大魔術師、聖女や神獣…等など…いろんな人との出会いを経て『レティシア』が自分らしく生きていく。
という、少々…長いお話です。
鈍感なレティシアが、大公殿下からの熱い眼差しに気付くのはいつなのでしょうか…?
※安定のご都合主義、独自の世界観です。お許し下さい。
※ストーリーの進度は遅めかと思われます。
※現在、不定期にて公開中です。よろしくお願い致します。
公開予定日を最新話に記載しておりますが、長期休載の場合はこちらでもお知らせをさせて頂きます。
※ド素人の書いた3作目です。まだまだ優しい目で見て頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。
※初公開から2年が過ぎました。少しでも良い作品に、読みやすく…と、時間があれば順次手直し(改稿)をしていく予定でおります。(現在、146話辺りまで手直し作業中)
※章の区切りを変更致しました。(9/22更新)
【完】夫に売られて、売られた先の旦那様に溺愛されています。
112
恋愛
夫に売られた。他所に女を作り、売人から受け取った銀貨の入った小袋を懐に入れて、出ていった。呆気ない別れだった。
ローズ・クローは、元々公爵令嬢だった。夫、だった人物は男爵の三男。到底釣合うはずがなく、手に手を取って家を出た。いわゆる駆け落ち婚だった。
ローズは夫を信じ切っていた。金が尽き、宝石を差し出しても、夫は自分を愛していると信じて疑わなかった。
※完結しました。ありがとうございました。
【改稿版】夫が男色になってしまったので、愛人を探しに行ったら溺愛が待っていました
妄夢【ピッコマノベルズ連載中】
恋愛
外観は赤髪で派手で美人なアーシュレイ。
同世代の女の子とはうまく接しられず、幼馴染のディートハルトとばかり遊んでいた。
おかげで男をたぶらかす悪女と言われてきた。しかし中身はただの魔道具オタク。
幼なじみの二人は親が決めた政略結婚。義両親からの圧力もあり、妊活をすることに。
しかしいざ夜に挑めばあの手この手で拒否する夫。そして『もう、女性を愛することは出来ない!』とベットの上で謝られる。
実家の援助をしてもらってる手前、離婚をこちらから申し込めないアーシュレイ。夫も誰かとは結婚してなきゃいけないなら、君がいいと訳の分からないことを言う。
それなら、愛人探しをすることに。そして、出会いの場の夜会にも何故か、毎回追いかけてきてつきまとってくる。いったいどういうつもりですか!?そして、男性のライバル出現!? やっぱり男色になっちゃたの!?
誓いを忘れた騎士へ ―私は誰かの花嫁になる
吉乃
恋愛
「帰ってきたら、結婚してくれる?」
――あの日の誓いを胸に、私は待ち続けた。
最初の三年間は幸せだった。
けれど、騎士の務めに赴いた彼は、やがて音信不通となり――
気づけば七年の歳月が流れていた。
二十七歳になった私は、もう結婚をしなければならない。
未来を選ぶ年齢。
だから、別の男性との婚姻を受け入れると決めたのに……。
結婚式を目前にした夜。
失われたはずの声が、突然私の心を打ち砕く。
「……リリアナ。迎えに来た」
七年の沈黙を破って現れた騎士。
赦せるのか、それとも拒むのか。
揺れる心が最後に選ぶのは――
かつての誓いか、それとも新しい愛か。
お知らせ
※すみません、PCの不調で更新が出来なくなってしまいました。
直り次第すぐに更新を再開しますので、少しだけお待ちいただければ幸いです。
悪女役らしく離婚を迫ろうとしたのに、夫の反応がおかしい
廻り
恋愛
第18回恋愛小説大賞にて奨励賞をいただきました。応援してくださりありがとうございました!
王太子妃シャルロット20歳は、前世の記憶が蘇る。
ここは小説の世界で、シャルロットは王太子とヒロインの恋路を邪魔する『悪女役』。
『断罪される運命』から逃れたいが、夫は離婚に応じる気がない。
ならばと、シャルロットは別居を始める。
『夫が離婚に応じたくなる計画』を思いついたシャルロットは、それを実行することに。
夫がヒロインと出会うまで、タイムリミットは一年。
それまでに離婚に応じさせたいシャルロットと、なぜか様子がおかしい夫の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる