幼馴染に恋した俺。

三日月

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4. 馬鹿

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「じゃ、ありがと綾」

「どういたしまして、お姫様」

「ちょっと、何言ってんの」


怜の家に到着し、一礼しながらそう言うと、怜は嫌そうに表情を歪めた。
ブツブツと何か言い始めてしまった怜を見て、なんだか面白くなって吹き出した。


「そんなに真に受けなくてもいいのに」

「受けてないから!」


やっぱり可愛いのは怜の方だな。
そう考えていた時に、突然俺に影が落ちた。
驚いて顔を上げると近距離に怜がいて、慌てて後ずさる。
この近距離で顔面国宝を拝むのはまずい。
あたふたと目を泳がせていると、頬に手を添えられて流石に死ぬと重い口を開いた。


「れ、怜、ちょっと近いかもしれない」

「近いかもしれないってなに?」

「わ、かんないけど、とにかく近いんだって」

「別によくない?友達だし」


友達……
そっか、これは友達だと当たり前の距離なんだ…
気分が落ちて俯いてしまう。
なに友達って言われたくらいで落ち込んでんだよ。
いいじゃないか、友達で。
元々望みはないって、分かってただろうが。


「悪い、怜、俺帰る」


怜の言葉なんて待たずに踵を返して元来た道を戻った。
こんなんじゃ、怜に嫌われるぞ。
そうは思うけど今回のは俺の気持ちが踏み躙られることになって、耐えられそうになかった。
軽く誘惑に似ている。


「怜の馬鹿…、」

─────────────

家に帰って校則違反であるパーカーを脱ぎ捨てる。
ベッドにダイブして溜め息を吐く。


「鈍感…なのか、分かんねーな…」


誰もいない部屋に虚しく俺の声が響いた。
独り言なんて、いつ振りだろう。
大体俺は人といてもあまり喋らない性格だし。
怜といても俺から話を振ることはない。
返事だけして会話が成り立っている感じ。

俺は一人暮らしをしていて、契約は親がしているけれど家賃は俺がバイトをして稼いだ金で払っている。
バイトは週4でシフトを入れていて、20時半あたりから終電までの約2時間半働いている。
時給は1600円程。
都内ということもあり高め。
バーバイトをやっていて、10時以降は深夜時給が反映されるから助かっている。


"ピロリン"


スマホが鳴って点灯した画面を見ると、怜からのLINEだった。
ロック解除して既読を付ける。


『送ってくれた時、なんか気に触ること言った?』


前置きもなく本題に入るところが怜らしい。
ふっ、と軽く笑ってからキーボードを打った。


『別になんもない』

『急に帰って悪かった』


連続でそう送ると、数秒で既読が付いて返信がきた。


『急に帰るなら何かあったんじゃないの?』

『気になるんだけど』


そう言われてもなんて返したらいいのか分からないから無理だよ。
悶々と考えていたら5分が経過していた。
はっと気付き、急いで一旦文字を打ってみる。


『関係ないでしょ』


内容を自分で見ていて、とても不機嫌そうと言うか嫌味な感じというか。
取り敢えず最低な文だったから全消しする。
なんでこんなに返信ひとつで頭抱えてんだ、俺は。
半ばやけくそになって、たった今消した文をもう一度入力した。
そしてそのまま送信。
あーあ、普通好きな人にこんな文送んないよね。
完璧怒ってんじゃんって思われるじゃん。
もう既読は付いてる。
今更 送信取消しても逃れることは無理だろう。
諦めてスマホをベッドに投げて風呂場に向かった。
怜とは喧嘩をしたことがない。
今回もそこまで大きいものにはならないと思う。
まぁ、もしそうなったとしても俺が謝って終わりだろうな。
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