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狐獣人アコン
ソウルイーター
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魂喰らいが近くに居る。復讐の旅は思ったより早く終わりそうだ。
森の奥へと進むにつれ、コンちゃんの尻尾がどんどん逆だっている。
不思議と魔物に出会わないのは、魂喰らいを恐れて逃げた後なのかもしれない。
静かな森の奥から、木々をなぎ倒すような轟音が聞こえる。
走り出したコンちゃんを追うように俺も走った。
視界が開けたとき、誰かが戦っていた。
一方は、大鎌を持つ黒いボロ布の霊体……魂喰らいだろう。
もう一方は、物々しい甲冑を着た騎士だった。
敵の敵は味方だと思う。協力して倒そうと思った矢先に、騎士は膝をついた。
半透明の体が粒子となって崩れていき、やがて風とともに消えた……。
強そうな騎士は負けてしまったが、魂喰らいも無傷ではないはずだ。
このチャンスを逃す手はない。
「魂喰らい! 父様と母様の魂、返して貰う!!」
「そうだそうだ。お義父さんとお義母さんの魂を返して!!」
魂喰らいが振り返る。ローブの奥は、何も見えない。
人の形をしているが、足はないし浮いている。まるで死神だ。
「【ネクロファイア】」
「【ストーンバレット】」
俺たちの息の合った連撃を、魂喰らいはゆらりと避けた。
ひと目見たときから思っていたが、今までの魔物とは格が違う。
「【ネクロファイア】【ネクロファイア】【ネクロファイア】」
黒い炎をワープするように避ける。その場でぐるりと回る。
遊ばれている。力を奪った相手の無力さを、あざ笑うようだった。
それでいて、少しずつ確実に近づいてきている。まるで死の宣告だ。
「くっ、コンは負けない! 【ネクロファイア】」
当たったところで、ダメージを与えられるのか疑問……いや、愚問だ。
コンちゃんがあんなに頑張っているのに、俺が諦めては夫として妻として失格だ。
「【ゴーレム生成】」
クズ魔石をつかみ取り、周囲に撒き散らす。
マッドゴーレム・ストーンゴーレム・トレントゴーレムが次々に生まれる。
戦いは数だ。俺の最大戦力で反撃のきっかけを――。
魂喰らいが振るった大鎌が、周囲を薙ぎ払った。
ゴーレムたちから生気が失われ、朽ち果てて崩れ去っていく……。
「嘘でしょ……?」
揺らめく影が形を作り、干からびた指が俺に向けられる。
まるで遊びの邪魔をするなと言われた気分だ。
それは勘違いではなく、ワープした魂喰らいが俺の前に現れた。
間近で見ると、不安定ながらも圧倒的な存在感に息が詰まる。
体が動かない。見えない力に縛られている。
大鎌が迫っているのに、俺は避けようとすることすら許されなかった。
「きゃあぁぁぁぁっ!?」
大鎌が体を通り抜けた。死んだと思ったが、外傷はない。
ただ、気力をごっそり抜き取られたのが分かった。
地べたに崩れ落ち、顔を上げるのがやっとだ。
まさか、これが【ソウルドレイン】なのか……。
凄く嫌な気分だ。もう逆らう気力も湧いてこない。
もう一度、大鎌に当たれば、きっと俺はここで死――。
「だめっ!! リサはやらせない!!」
コンちゃんが両手を広げ、俺と魂喰らいの間に立った。
庇ってくれるのは嬉しいけど、コンちゃんには使命がある。
「コンちゃん……逃げて……」
俺はもうダメだ。ただ一度、得体の知れない精神攻撃を受けただけで心が折れた。
コンちゃんは、この怖さを知っていながら復讐を誓い、今もこうして立っている。
やっぱり、コンちゃんは強いね……。
「一人ぼっちはもう嫌! コンは、コンは……っ。絶対ここを動かない!!」
魂喰らいの大鎌が、コンちゃんの体に当たる直前……動きが止まった。
また遊ばれているのだろうか?
「父様……母様……」
コンちゃんの両親の魂は、魂喰らいに取り込まれている。
自分の娘を守るため、必死に抵抗しているのかも知れない。
初めて訪れた転機なのに、俺たちは反撃する術を持たない。
膠着状態が続いたが、やがて魂喰らいは姿を消した……。
「た、助かったのかな……」
「リサ……ごめんなさい」
「俺こそごめんね。まるで力になれなくて……」
「違う。リサは悪くない。全部コンが悪い。魂喰らいに勝てないことは分かっていた。でも、気持ちを抑えられなかった」
「俺がコンちゃんの立場なら、同じことをしたよ」
「それでも、コンのせいでリサを危ない目に合わせた。ごめんなさい」
「ちっとも危なくなかったよ。俺のほうが危ない女だよ」
冗談っぽい軽口を言える気力が戻ってきた。
でも、コンちゃんの表情はますます曇っている。
「勝てないって分かっていたのに……大事な友達まで失くすところだった。コンは、コンは弱――」
「コンちゃんは強いよ。相手はもっと強かった。それだけだよ」
「リ、リサ……」
「俺ももっと強くなる。次は必ず勝とうね」
「……うんっ」
この恨みはらさでおくべきか。
どこに消えても見つけ出し、必ずぶち殺してやる。
しかし、相手は強い。かなり上位の魔物のようだ。
仲間だ。仲間が必要だ……いや、待てよ?
俺の愛情はコンちゃんに向けられるもので、他の相手の都合を考えるのは面倒だ。
どうせなら戦える奴隷が欲しい。うん、それがいいね♡
新スキル【オナペット】を習得しました。
称号『敗北者』を取得しました。
称号『臆病者』を取得しました。
森の奥へと進むにつれ、コンちゃんの尻尾がどんどん逆だっている。
不思議と魔物に出会わないのは、魂喰らいを恐れて逃げた後なのかもしれない。
静かな森の奥から、木々をなぎ倒すような轟音が聞こえる。
走り出したコンちゃんを追うように俺も走った。
視界が開けたとき、誰かが戦っていた。
一方は、大鎌を持つ黒いボロ布の霊体……魂喰らいだろう。
もう一方は、物々しい甲冑を着た騎士だった。
敵の敵は味方だと思う。協力して倒そうと思った矢先に、騎士は膝をついた。
半透明の体が粒子となって崩れていき、やがて風とともに消えた……。
強そうな騎士は負けてしまったが、魂喰らいも無傷ではないはずだ。
このチャンスを逃す手はない。
「魂喰らい! 父様と母様の魂、返して貰う!!」
「そうだそうだ。お義父さんとお義母さんの魂を返して!!」
魂喰らいが振り返る。ローブの奥は、何も見えない。
人の形をしているが、足はないし浮いている。まるで死神だ。
「【ネクロファイア】」
「【ストーンバレット】」
俺たちの息の合った連撃を、魂喰らいはゆらりと避けた。
ひと目見たときから思っていたが、今までの魔物とは格が違う。
「【ネクロファイア】【ネクロファイア】【ネクロファイア】」
黒い炎をワープするように避ける。その場でぐるりと回る。
遊ばれている。力を奪った相手の無力さを、あざ笑うようだった。
それでいて、少しずつ確実に近づいてきている。まるで死の宣告だ。
「くっ、コンは負けない! 【ネクロファイア】」
当たったところで、ダメージを与えられるのか疑問……いや、愚問だ。
コンちゃんがあんなに頑張っているのに、俺が諦めては夫として妻として失格だ。
「【ゴーレム生成】」
クズ魔石をつかみ取り、周囲に撒き散らす。
マッドゴーレム・ストーンゴーレム・トレントゴーレムが次々に生まれる。
戦いは数だ。俺の最大戦力で反撃のきっかけを――。
魂喰らいが振るった大鎌が、周囲を薙ぎ払った。
ゴーレムたちから生気が失われ、朽ち果てて崩れ去っていく……。
「嘘でしょ……?」
揺らめく影が形を作り、干からびた指が俺に向けられる。
まるで遊びの邪魔をするなと言われた気分だ。
それは勘違いではなく、ワープした魂喰らいが俺の前に現れた。
間近で見ると、不安定ながらも圧倒的な存在感に息が詰まる。
体が動かない。見えない力に縛られている。
大鎌が迫っているのに、俺は避けようとすることすら許されなかった。
「きゃあぁぁぁぁっ!?」
大鎌が体を通り抜けた。死んだと思ったが、外傷はない。
ただ、気力をごっそり抜き取られたのが分かった。
地べたに崩れ落ち、顔を上げるのがやっとだ。
まさか、これが【ソウルドレイン】なのか……。
凄く嫌な気分だ。もう逆らう気力も湧いてこない。
もう一度、大鎌に当たれば、きっと俺はここで死――。
「だめっ!! リサはやらせない!!」
コンちゃんが両手を広げ、俺と魂喰らいの間に立った。
庇ってくれるのは嬉しいけど、コンちゃんには使命がある。
「コンちゃん……逃げて……」
俺はもうダメだ。ただ一度、得体の知れない精神攻撃を受けただけで心が折れた。
コンちゃんは、この怖さを知っていながら復讐を誓い、今もこうして立っている。
やっぱり、コンちゃんは強いね……。
「一人ぼっちはもう嫌! コンは、コンは……っ。絶対ここを動かない!!」
魂喰らいの大鎌が、コンちゃんの体に当たる直前……動きが止まった。
また遊ばれているのだろうか?
「父様……母様……」
コンちゃんの両親の魂は、魂喰らいに取り込まれている。
自分の娘を守るため、必死に抵抗しているのかも知れない。
初めて訪れた転機なのに、俺たちは反撃する術を持たない。
膠着状態が続いたが、やがて魂喰らいは姿を消した……。
「た、助かったのかな……」
「リサ……ごめんなさい」
「俺こそごめんね。まるで力になれなくて……」
「違う。リサは悪くない。全部コンが悪い。魂喰らいに勝てないことは分かっていた。でも、気持ちを抑えられなかった」
「俺がコンちゃんの立場なら、同じことをしたよ」
「それでも、コンのせいでリサを危ない目に合わせた。ごめんなさい」
「ちっとも危なくなかったよ。俺のほうが危ない女だよ」
冗談っぽい軽口を言える気力が戻ってきた。
でも、コンちゃんの表情はますます曇っている。
「勝てないって分かっていたのに……大事な友達まで失くすところだった。コンは、コンは弱――」
「コンちゃんは強いよ。相手はもっと強かった。それだけだよ」
「リ、リサ……」
「俺ももっと強くなる。次は必ず勝とうね」
「……うんっ」
この恨みはらさでおくべきか。
どこに消えても見つけ出し、必ずぶち殺してやる。
しかし、相手は強い。かなり上位の魔物のようだ。
仲間だ。仲間が必要だ……いや、待てよ?
俺の愛情はコンちゃんに向けられるもので、他の相手の都合を考えるのは面倒だ。
どうせなら戦える奴隷が欲しい。うん、それがいいね♡
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