ブサイクは祝福に含まれますか? ~テイマーの神様に魔法使いにしてもらった代償~

さむお

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絆編

きょきょきょクロノ死す

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 俺とライオネルが王都を出たとき、もうすっかり日が暮れてしまっている。それでも無数の松明で周囲はそれなりに明るい。夜であろうと人の出入りがある王都ならではの光景だ。


 1万ルフの夜景をぼけーっと眺めていると、いきなり頭を殴られた。


「痛ぇ! 何するんだライオネル。とうとう本性を見せたか」

「……? 知らんけど、俺が殴ったら、たんこぶじゃ済まないぜ。ほれ、この鎧だぜ」


 確かに、金属鎧で完全武装しているライオネルに殴られたとなれば、巨大なたんこぶが出来る。団子兄弟になっちゃう。


「ガァ……ガァ……」


 灯台下暗し。足元に落ちている黒い塊を拾い上げてみると、まさかのカークだった。


「カーク……お前、王都まで飛んできたのか!?」


 かすれた声で鳴くカーク。口を開かせ生活魔法で水を流し込む。少し元気を取り戻したので、相棒に通訳を頼もう。


『話は聞かせてもらった。ファウストの捜索を手伝う。赤龍戦でともに戦った仲間の危機なのに、羽を休めて待っているなんて出来ないぜ!』

「やだ……イケメン……っ」


 俺のペットとしての自覚が出てきたようだな。大変喜ばしいことだが……もう一羽のペットはどうしているのだろう。


『あいつは置いてきた。この先の戦いに付いていけそうにない。それに、あんなやつでも女だ。傷物になったら不憫だしな』

「やだ……イケメン……っ」


 カークは戦闘能力をほとんど持たない。しかし、鳥であるため飛行能力を持っているし、夜目が効くらしい。姿かたちは違えど、レスキューバードとしての役割を果たしてくれるだろう。


「よし、お前にも手伝って貰うぞ。ただし、無茶はするんじゃないぞ」

「カーッ!」


 肩に乗せてカークが落ち着くまで首元を撫でてやった。


「えっ、クロノは鳥と話せるのか?」

「あぁ、仲良しだからな。なんとなく分かるぞ」

「まじか。すげーな。まるでテイマーだぜ」


 俺の肩書にテイマーが加わったところで、遠くにルークとキャリィの姿が見えた。手綱を引かれて、馬らしき生物も歩いてくるが……。


「待たせたな。なんとか-確保してきた」

「キャリィたちに感謝するにゃん」


 こいつらが連れてきたのは、馬じゃない。毛がないが鱗がある。発達した後ろ足でどっしり歩き、退化したのか短い両手がぶらりと揺れる。これってまさか……。


「きょきょきょ、恐竜!?」

「レプトルだ。テイマーに飼育されてるから、人間慣れしてる。噛み付いたりしない」

「こいつには噛み付いてもいいにゃん。チャーシューみたいなものにゃん。晩ごはんにしてしまうにゃーん!」


 ダメ猫が焚き付けてくるが、レプトルは微動だにしない。この様子を見る限り、大丈夫そうだ。図らずも安全であることを証明してくれた。バカなのか有能なのか分からない女だな。


「乗り方は分かるか? 手綱で背中を軽く叩けば走るし、手前に引けば止まる」

「へぇ、親切にどうも。おかげで上手に乗れたよ。さて、道案内はよろしく」

「いや、降りてくれ。そいつらに荷車を引かせて移動するから」

「えぇ……だったら何で乗せたんだよ……」


 ここは普通、月夜に照らされた草原をレプトルに乗って駆け抜ける。そんな素敵なシーンが待っていると思っていたのに。


「荷車が壊れたり、もしものときのためだ。乗りたいなら別にいいが、何時間もレプトルの上で縮こまっているつもりか……?」

「教えないほうが良かったにゃん。もしもでくたばってくれたら、キャリィたち的には好都合だったにゃん」

「……あぁ、それもそうだ。ごめんなキャリィ」

「しょうがないにゃあ。許してあげるにゃん。どうせイゼクト大森林に送り届けたら、勝手に死んでくれる連中にゃん。にゃーっはっはっは!」


 高笑いをしてしまったら、それはもう内緒話ではない。送り届けると確約してくれるなんて、良いやつらじゃないか。


「よし、連結完了っと。そんじゃ乗り込んでくれ。すぐ出発だ」

「地獄への片道切符にゃん。さっさとするにゃん!」


 悪徳キャットに背中を押され、広めの荷車に乗り込む。操縦はルークがしてくれるらしく、ピシャンと軽快な音を立てて馬車? が出発した。


「……いやいやいや、ちょっと待てクロノ! いつの間に和解したんだ!?」


 大人しかったライオネルの突然のツッコミ。そういえば言いたいセリフを言ったきりで、諸々の事情を話していなかった。


 ルークとキャリィが生暖かい目で俺を見てくる。喋りたいなら好きにしろ。


「和解というより、脅された……」

「洒落にならない脅迫だにゃん。あんたに正義の心が少しでもあるなら、こいつを今すぐ牢屋にぶち込むにゃん」

「脅されたぁ!? おい、クロノ……限度ってものが……」

「ふん、反省はしてるさ。でも他に手がなかった」

「まったく……その、悪かったな。クロノは頭に血がのぼるととんでもないことを平然とやる節があるけど……いいやつなんだ。許してくれ」

「まぁ、別にいいにゃんよ。こいつがクソなのは知ってるにゃん。もうちょっと内容は選んで欲しかったけどにゃぁ」

「俺が敗けてから、王都ギルドの連中にはバカにされたし、キャリィの噂を知らないやつは居なかった。噂が残っても証拠を消し去れるなら、最終的には悪くないと思いたいね」

「本当にすまねぇな。行方不明になってるファウストは俺たちのダチでさ。強いけど、まだ少年なんだよ。誰かの助けが必要なんだ。お礼ってわけじゃないけど、この旅が終わったらアルバ出身のやつらに声かけとくから。少しはまともに接してくれるようになると思う」

「ライオネル……だったか。あんた、顔が効くんだな。ありがたいよ。それにしても、まだ少年、か。その少年に、俺たちは手も足も出ないんだけどな……。Bランク様の助けになるなら、少しは今の環境もましになるのかねぇ」


 ルークか。出会った当時はクソ野郎だったが、敗北を知って少しは落ち着きを取り戻したか。これなら、少しくらい話をしてやってもよさそうだ。


「あの年でBランク。それはユニークだからとか、強いからそうなったわけじゃない。どれだけの修羅場をくぐり抜けてきたのか。そう考えてやれば、少しは親近感を覚えるんじゃないか?」

「……違いない。それでもやっぱり、羨まずにはいられない。少し時間がかかりそうだ」

「それでいい。俺たちが必ず見つけ出して、助ける。その後はたまに絡めば自然と分かるだろう。あれはまだ、背伸びしてるだけのガキさ。乳首で感じたこともないガキなのさ……」

「最後の一言、いらないにゃん。見つけたらちゃんとキャリィたちの名前を出すにゃんよ!?」

「分かった分かった。感謝しているのは本当だからな。おじさんがお前らの名前を売り込んでおくよ」


 和解をしたのかは知らないが、あれから時間は経っている。少なくとも会話をできる程度には、お互いに大人になったということだ。


「感謝といえば……俺もルークには感謝してるぜ。赤龍に勝てたし」

「……あぁ! それが俺の金で買った鎧か!? なかなか、良いセンスをしてると思う!!」


 こいつ、ないわーって表情で見てたの知ってるぞ。自分が絡んでるとなった途端に褒めちぎるのかーい!


「……すまん。その鎧はもう鉄くずになった。赤龍にメタクソにされてさ……でも、ありがとうな?」

「お、俺の鎧が……はぁぁ」


 露骨に落ち込むルーク。そういえば、今は何の変哲もない槍を持っているようだ。そんな装備で大丈夫か? 俺が聞きたいくらいだぞ。


「良い装備が見つからないんだ。まともなものは高い。当面のあいだは、繋ぎの装備でやりくりするしかないんだ」

「あんたのアドバイスを元に、近場のクエストばかりやってるにゃん。戦力は落ちたけど、敵も弱いからあまり困ってないにゃんよ」

「そうだな。今こうして話をしているのも、あんたから聞いた助言で少しは余裕を取り戻したからだよ。脅してこなきゃ、もう少し穏やかな気持ちでいられたのに……」

「後でこそっと聞けば、イゼクト大森林の場所くらい教えてやったかもしれないにゃん。空気読めにゃん」


 やだよ。あの受付嬢にムカついたんだもん。煽ってやりたかったんだもん。言わないけどね。返事に困ったので、適当に作り笑いで答えとく。


――ブォォォォォッ!!


 突然、夜の静けさをかき乱す雄叫びが聞こえた。荷車から身を乗り出して周囲を見渡すと、遠くに太ったおっさんが見える。


「おいルーク。相乗りをする時間はないから、無視で頼む」

「いやいや、あれオークだろ!? あんた落ちてないよな!?」

「やっぱりオークにゃんね」

「あ、あぁ……オークだな。クロノ、あれがオークだぜ……?」

「何でみんな揃って俺を見るんだよ!? そんなに似てる!?」


 揃って頷くんじゃねぇよ。仲良しか!


「あれが俺にそっくりなオークかぁ。初めて見たよ。暗いけど、たぶん緑色だな。ところで、オークって強いのか?」

「あれははぐれにゃん。ザコにゃん」

「じゃあ、放っておいていいのか? ここ、お前らの管轄だろ?」

「仲間を呼ばれる前に倒すにゃん。【ナイトスロー】」


 オークの額に何かが刺さったようで、額から血を流して倒れた。立ち上がる様子はない。ワンパンかよ。


「つっっっっよ!! 遠くから一撃じゃん! 凄いじゃん!!」

「魔術師なのに何を言ってるにゃん……」

「うるせぇ。俺は闇と光の魔術師なんだよ」


 その後も散発的に魔物と鉢合わせたが、頼もしい護衛のおかげで快適な旅となった。目を開けた頃には、きっとイゼクト大森林の光景が広がっている。そう信じて、眠りについた……。
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