上 下
209 / 230
自由編

トップを狙え #51 ※微エロ

しおりを挟む
 他店の対抗により、我が店の一強状態は終わった。


「……よし、今日も微増だな」

「乗り切りやしたね。さすがアニキ!」


 うちの売上は横ばいを続けた後に微増を続けている。これは名店として、客に認められたことを意味する。


「今頃、ライバルも特訓してやすかねぇ」

「さぁな。だが、やらない店は沈むだろう。後追いとはそういうものだ。俺たちは先駆者として、常に先を行く努力をしなきゃならん」


 俺たちに焦りはない。回転率を重視する当店では、連日の繁盛が新たな日常となっている。聞こえはいいが、実態は激務だ。日々それらをこなし、特訓もしている。


 ライバルの存在は怖いが、これ以上の何かをしようものなら破綻するだろう。間違っていないうちは変えない。余計な混乱は避けたいと意見が一致した。


「あーあ、今回は花形店になれると思ったんですけどねぇ……」

「何だと? ロック、お前……ケツの穴を売ってんのか……? 菊形とお呼びしたほうが……?」

「違いやすって! 店の、花形で! 四半期ごとに最も売れた店は、花形店と呼ばれて箔がつくんでさ。それがまた客を呼ぶってなもんで」

「あぁ、そういうのあるのか。上には上がいるんだな。どれくらいだ?」

「少し前までは一騎打ちで。相手は高級娼館。普段なら同じ空気を吸うことすら出来ねぇ名店でさ」


 下から数えた方が早いこの店が、数ヶ月で人気店に仲間入り。ノーマークかつ、急激に伸びたもんだから、他店もこぞって真似をして今の状態だ。


 背中が見えた高級娼館は、独自の客層を持っている。だからこそ伸びたのだが、ライバルの出現により、庶民を取り合うとなれば、当店の勢いは落ちる、か。


「攻めの姿勢は、忘れてないな?」

「もちろんで。ただ、無策で攻めちゃお終いで。嬢たちも頑張ってくれてやす。これ以上はパンクしやす。だから、ここは堪えやす。後続が育てば、離れた背中を追い越せる日もきっと来ると思うんで」

「……合格だ。店長として何より求められるのは、現状の把握と、今後の方針だ。今は力を蓄える時期。俺もそう思っていた。もうお前に教えることはないな」

「ありがたい話で。アニキに認められるなんて、墓場でも自慢しちまいやす」

「ばかたれ。お前が自慢される側になれ」

「俺がアニキをみんなに自慢するのと、あいつらが俺を自慢する。別にどっちもあってもいいと思うもんで」

「全く、言うようになったな。俺は野郎に褒められても嬉しくないんだよ」

「嬢たちも俺と同じことを思ってると思うんで、勘弁してくだせぇ。今日もお疲れ様でしたァ!」

「おう、おつかれ。明日も時間厳守だ」


 俺が店長として過ごす日々も、もうすぐ終わる。趣味と実益を兼ねて始めたことだが、爪痕くらいは残せただろう。



 翌日、嬢の働きっぷりを覗く……もとい、監視してみると――。


「ガラナちゃん、アイス食べたい?」

「アイス! 食べるに決まってるでしょ!」

「おっとっと、ダメだよガラナちゃん。俺が食べさせるオプなんだから……はい、あーんしようか」

「うぅ、仕方ないわ。あ、あーん……」

「あぁっとォ!? 偶然にもチンポの上に、アイスを落としてしまったぞォ!?」

「あーっ! 何やってるのよ!」

「いやいや、ガラナちゃんこそ何やってんの。早く食べなきゃ溶けちゃうよ。食べ物を粗末にしちゃダメじゃないか」


 客は腰に手を当ててふんぞり返る。ちんぽをガラナの頬にグイグイ押し付けている……。


「そ、そういうことね。食べ物を粗末にしてるのはあんたでしょ!?」

「アイスが冷たくて、このままじゃお腹が冷えちゃうよ。そ・れ・と・も、ガラナちゃんは、おじさんのホットチョコレートが飲みたいのかなぁ?」

「ヒィィッ! 分かったわよーっ!」


 なんという上級者だ。ガラナの裏オプションであるアイスオプ。その隠しオプに速攻で気づくとは……。


『キミ、いつの間に分身できるようになったんだい? 水臭いじゃないか』

(俺じゃないっつーの。思考が似てるのは認める)


 イカ臭いチンポを即尺するガラナ。表情には若干の怒りが見て取れる。しかし、その上目遣いが、客を昂ぶらせるのだ。


 生まれ持ってのメスガキ・ガラナ。俺が抜けても大丈夫そうだな……。


(うーん、それにしても妙だな。アイスオプは、まだロックと打ち合わせの途中だったはず。現場とズレがあるのかな……まっ、成功してるからいいか)


 次に覗いた部屋は、アーネが居る。客と並んで寝そべり、話し込んでいるようだが……。


「……花がきれいなレストランを気に入ってくれてさ。またデートしてくれることになったんだよ。これも一緒にデートプランを考えてくれたアーネちゃんのおかげだよ」

「ふーん、あんたにしちゃ上出来かな。あそこ女子人気高いから、知ってたかもしれんけど」

「あはは、実はそうなんだ。途中、彼女がトイレに立ったんだけど、道を知ってたみたいで察しちゃったよ」

「デートか女友達と行ったか知らんけど、ライバルが居るなら勝ち取るしかないっしょ」

「う、うん。そうだよね……分かっているんだけど……」

「んじゃ、うちで抜いとくか」


 アーネは客の両足を掴むと、まさかのちんぐり返し。いやー、ちょっと気だるそうな感じとミスマッチしてエグいっす。


「ほらほら、元気出しなって。うちの膣内に思いっきりぶちまけていいからさ」

「あぁっ、アーネちゃん……まだ話が……これ最高っ!!」

「あんがと。時間押してるから、ちょい飛ばすよ……あっ、ダメって言った方が燃える?」

「うぅぅっ、最初はダメで……最後は認めてくれると……」

「はいはい。そこは変わらないね。時間ギリまで出しちゃダメ。その方が、気持ちいいもんね」


 そこから容赦ない腰振りで客をヒィヒィ言わせていた。


「うぅ、もっと話したかったのに……でも気持ち良かった!」

「もやもやするか、むらむらしたらまた来なよ。うちでいいならね」

「じゃあ、予約を……来週の――」


 客を送り出したあと、アーネはデコられた手帳を取り出し、今の客との会話をメモしていた。このマメさが人気の鍵だろうか。股からザーメン垂れ流したままだけど。


「……アーネさん、指名入りました。30分後です」

「あいよ、名前は?」

「新規です。それが終わったら、またいつもの人が――」

「おっけ。速攻でシャワー浴びてくる。10分後に通していいよ。間に合わなかったら客と一緒に入る。洗いっこオプ勧めといて」

「やる気ですね」

「んー、時期が時期だし。ちょっと気合入れないとね。舎弟くんも頑張んな」


 アーネも立派なプロだな。おまけにリピーター決定させてるし、息が長い嬢になれそうだ。


(今って何かあったかな。まっ、欲しいもののために頑張れるって良いことか)



 次は、ドゥーエちゃんだ。おっぱいは正義だ。花形の性技、覗く……もとい、監視しちゃおうかな。


「ママのおっぱい、おいちいでちゅか~?」

「ちゅぱちゅぱ……ま゛んま゛っ!」


 授乳手コキオプ……アーネちゃんを花形に押し上げた超人気オプだ。ちなみに、赤ちゃん言葉は客の希望で決められる。


 太陽のような微笑みに、エグい手コキ。このコンボは一度味わったが最後、癖になる。もっとも、乳首に吸い付く客は、豊満な胸に包まれて、アーネちゃんの顔はあまり見えないだろうが……それもまた良いのである。おっぱい!


「はーい、いつでもピュッピュしていいでちゅからね~」

「ま゛んま゛っ、ま゛んま゛ぁ゛ぁぁぁぁ!」

「よくイけまちたね~。偉い、偉い~。すぐきれいにしてあげまちゅね~。ちゅるっ、ちゅぱ、レロレロ……ちゅるるっ」

「マ゛マァ……ふぅ、最高だったよ。もうこれが楽しみで毎日生きてる」

「そう言って貰えると~、アーネちゃんも嬉しい! ママになる準備は出来てるから~、また来てね~」


 アーネちゃんは客に抱きついて、切り替えたばかりの顔をおっぱいで包み込む。すると半ニヤケ顔のリピーターが出来上がる。


 自分の武器を上手く使っている。さすがは花形だ。男嫌いのドゥーエがこの調子なら、もう心配いらないな。まぁ、おっぱい見たいから明日も覗くけど。



 最後に、マリーの部屋を覗こうとすると、何やら話し声が聞こえる。目を開けて周囲を伺うと、ロックと舎弟くんが、こそこそ荷物を運んでいた。


「おい、ロック。それは何の荷物だ?」

「あぁっ、いや、これは荷物で!」


 早足に歩み寄り、ロックが抱えている荷物を開けると、ひやりと冷たい。大量のアイスだった。


「アイスと言えば、裏オプはまだじゃなかったか? 意思の疎通が取れてないぞ?」

「……実は、俺が許可したんで。もうすぐアニキが抜けるじゃないっすか。最後くらい、男の花道として送り出したくて……花形店にしようって、みんなで決めたんでさぁ」


 ガラナのアイスオプ、アーネのやる気、男嫌いのドゥーエの抱擁……全部、俺のためだったのか。


「……期待してるぞ。やるからにはテッペンを取るぞ!!」

「がってんで! 必ず、アニキに相応しい花道を作ってみせやす!!」


 もう俺の役目は終わったと思っていたが、最後の最後まで、みんなの燃料としてやっていけそうだ……。
しおりを挟む

処理中です...