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第2章 やっぱり俺の仲間が優秀なんですけど…
26話 ソレイドのゴールデンメンバー
しおりを挟む「ん、んん。」
「あらあらあら、目が覚めたみたいやね。」
「ああ、ボタンさん。あの後どんぐらい俺は倒れてたんだ?」
「5分くらいやね。無意識に魔力循環速度を抑えてくれてはったみたいやから、もう治療は終わっとるよ。」
「ほんとだ。すげぇ調子いいわ。ありがとな。」
俺が再び目を覚ますと横に腰かけていたボタンさんが俺の顔を除いて声をかけてきた。
俺の体はさっきまで全身にあった傷が嘘のように消えていて、全く痛みを感じない。
ボタンさんの治癒能力はかなり高いみたいだ。
この人も中々に底が知れないな。
そんな事を考えながら立ち上がって周囲を見回すと、舞の姿が見えない事に気がついた。
「あれ、舞はどうしたんだ?」
「冒険者ギルドへ助っ人を呼びに行ってもろうてるんよ。」
「助っ人?」
「おい糞虫!ミレンたんの危機とはどういうことだ!」
俺がボタンさんの助っ人という言葉に首を傾げたその時、後ろから声をかけられた気がして振り返るとそこにはロリコン変態女騎士のシャーロットが立っていた。
脇には紫色の髪をツインテールにした女の子を抱えている。
誰だこの子?
「おい、オバハン獣人!私を助けろ!この女騎士がさっきから私の尻を撫でまわしてて気色悪い!」
「なぁボタンさん。助っ人ってシャーロットか?」
「こっちはマイムはんに頼んだのとは別口の助っ人やね。シャーロットはんはB級の冒険者やけど、その実力はソレイドでガンビルドはんに次ぐ程の強者なんよ。」
「お久しぶりですボタンさん。この紫色の髪の女の子は雲龍の新しい従業員ですか?」
「まぁ、従業員というよりはうちの下僕、やのうて小間使いやな。」
へぇ、この紫の髪の子はボタンさんの小間使い、もとい下僕なのか。
今まで見たことなかったけど、最近雇ったのか?
それよりも、シャーロットってそんなに強かったのか。
ガンビルドさんの次に強いのにB級って、よっぽど素行に難があるんだな。
ド変態め。
「それでは、雲龍に行けばこの子に会えるのですね!」
「そうやねぇ、10回来店するたびに一時間好きにしてええよ。」
「おお!それはなんとも素晴らしいシステム!足繁く通わせていただきます!」
「おおきになぁ。」
こうして紫っ娘をダシにボタンさんは上客を手に入れたのだった。
めでたしめでたし。
そんなどうでもいいやり取りを眺めていると、舞が頼りになる助っ人を連れて戻ってきた。
「フーマくん、怪我の具合はどうかしら?」
「ああ、ボタンさんのおかげで全快だ。それよりも、マイムの呼びに行った助っ人ってガンビルドさんだったんですね!」
「おう!冒険者ギルドで引き続き事後処理をやってたらこの嬢ちゃんが悪魔の叡智のボスを倒す手伝いをしてくれって頼みに来たからな。あっちはミレイユに任せて加勢に来た。未来の英雄と共に戦えるなんてそう無い事だからな!!」
ガンビルドさんはそう言うとガッハッハと豪快に笑った。
やっぱりこの人はかっけぇなぁと思ってその顔を見上げていると、舞が俺の脇腹をつついて耳元に口を寄せて話しかけてきた。
「ほら、風舞くんを英雄だと思ってるのは私だけじゃないみたいよ。」
「ああ、嬉しい限りだ。」
俺は胸の奥がぐっと熱くなるのを感じた。
この世界に来てまだ2週間も経っていないが、俺は思ってたよりも沢山の人に信頼を寄せられていたらしい。
その期待に応えなくちゃな。
そう思った俺は涙が流れそうになるのを根性でこらえながら、アイテムボックスから今日の昼に悪魔の叡智のメンバーから奪った槍と短剣を取り出した。
「はい、見た所マイムも剣を無くしたみたいだしこれを使ってくれ。流石に素手よりはましだろ。」
「そうね。…うん、重さもバランスもちょうどいいし十分に使えそうだわ。それじゃあ、私は少しあっちで練習してるわね。」
舞は槍を受け取って軽く確かめた後、俺達から少し離れて素振りを始めた。
おそらく短時間で槍術を習得しようとしているのだろう。
流石だ。
さてと、俺もさっさと自分の準備をしないとな。
「ボタンさん。この短剣の性能ってどんな感じだ?」
「あら、これは魔剣みたいやね。えーと、どうやら魔力を流すと炎の刃が出るみたいやな。」
「へぇ、…おお!本当だ。」
ボタンさんの説明通りに魔剣に魔力を流してみると短剣の刃を包み込むように炎が出てきて、いつも俺が使ってる片手剣と同じくらいの長さの炎剣になった。
炎でできているのに強固な芯があるようで、これなら攻撃も十分に受け止められそうである。
結構いい拾い物をしたな。
「さて、これでとりあえず準備はできたし、次はミレンがどうなっているのかとか現状を教えてくれ。」
「そうやね。うちがミレンはんに会ったんはすぐそこの第30階層へ向かう転移魔法陣のすぐそばやよ。その時うちはフーマはんとマイムはんの治療を頼まれたんやけど、ミレンはんはアセイダルが迷宮から出て来んように第30階層の迷宮王の広間に一人で戻って行ったんよ。」
なるほど。
どうやらローズは俺と舞が倒れた後、俺達を抱えてダンジョンの外まで走りそこで合流したボタンさんに俺達を託してから、たった一人でアセイダルを抑え続けているらしい。
まだアセイダルがダンジョンの外に現れていないという事は、ローズがは今も一人で戦い続けているのだろう。
「わかった。それじゃあ早速第30階層に行こう。今は一刻も早くミレンのとこに行かなくちゃならない。」
「そうね。私も準備OKよ。」
「ああ。私もミレンたんを助けに行く準備は、始めてミレンたんに出会ったその時からできている。」
「俺の仕事は冒険者を守る事だからな。さっさとアセイダルとかいう悪魔をぶっ倒しに行こうぜ!」
「あらあらあら。皆はんやる気みたいやし、これはうちも気張らんとなぁ。」
「なぁ、そろそろ私は帰っていいか?もう良いだろ?な?な?」
「キキョウはここで留守番やね。うちが帰ってくるまでここで正座して待っててなぁ。」
「おい!私の名は、ギャフ!!」
紫っ娘が何か言おうとしたが、ボタンさんが片手を振るうと地面にベタンと座り込んで正座を始めた。
何か言いたげな顔をしているが、口を開きたくても開けないようである。
本当に誰だよこの娘。
まぁ、今は良いか。
「よし、それじゃあミレンを助けてついでにアセイダルをぶっ倒しに行くぞ!!」
「「「「おおぉぉ!!!!」」」」
こうして俺達はローズを助けに第30階層へ向かった。
さっき気絶してる時にもう一回会ったフレンダさんがギフトについて教えてくれたおかげで、自分に秘められた力の輪郭を何となく掴めてきている。
検証も練習もなくていささか不安だが、今はぶっつけ本番で全てを出し切るしかないだろう。
今行くから待ってろよローズ。
もう少しの辛抱だ。
_______________________________________________
「フウマは助かったじゃろうか。」
妾は暴走するアセイダルの枝を斬りとばしながらそう呟いた。
迷宮を出てすぐにボタンに会えた為、腹を貫かれたマイはおそらく助かったじゃろうが、魔力の循環速度が速いフウマは命を繋げたか結構怪しい。
「くっ。もう吸血鬼の顎門も保てんか。」
ここまで妾のギフトで作った血の大剣でアセイダルを切り刻んできたが、ギフトを発動させるだけの精神力が遂に尽きてしまった。
「こんな事じゃったらフレンダの言うように予備の武器を持っておくんじゃったな。」
ここ300年程はギフトで作った武具以外まともに使わんかったから、アイテムボックスに入れておった武器もほとんど知り合いにやってしまった。
妾の自慢の双剣も城に置いたままにしてしまっておるし、武器として使えるものはもう自身の肉体と魔力しかない。
「はぁ、流石にもう見飽きてきたの。」
妾は貫手に雷を纏わせてアセイダルの枝をただひたすらに落とし続けながらそう愚痴をこぼした。
アセイダルは枝を落とされる度に再生能力の暴走によって無駄に自重を増やし動きが鈍くなってきておるが、再生する度にその容積もどんどん増えていっておって一向に終わりが見えない。
「これは、中々きついかもしれんの。」
そうして永遠にも思える戦闘の末、妾が魔力を使いきり枝を避けるのすら辛くなってきたその時、何者かが炎の剣で迫っていた枝を斬り払い妾の身体を支えて優しげな表情で頭を撫でた。
「待たせたなローズ。こっからは俺たちの番だ。」
「フウマか?」
「ああ。ローズだけに俺の立てた作戦の尻拭いはさせられないからな。少し休んでろ。」
フウマはそう言うと妾を転移魔法陣のある部屋の方へ転移させた。
その転移を抗うこともなく受け入れた妾は転移された先でボタンに受け止められ、壁に背を預けて座らされる。
ボタンがその妾の様子を確認すると、いつもの様に頰に手を当てて微笑みを浮かべながら口を開いた。
「あらあらあら、ミレンはんがここまで傷だらけになるなんてアセイダルはよっぽど強いんやなぁ。」
「よせ、この程度放っておけば直ぐに治る。それにアセイダルは自分の再生能力にのまれて身体を肥大させるだけの意思すらもないただの怪物じゃ。この結果は妾が弱かったというだけの事じゃよ。妾がもう少し強ければフーマやマイムは傷つかんかった。千年を生きる妾がこの様とは何とも情け無い限りじゃの。」
「あらあら、フーマはんと同じ事を言うんやね。」
「なんじゃと?」
「フーマはんもついさっき自分の力が及ばなかったからミレンはんやマイムはんに迷惑をかけてしまったって言ってたんよ。」
「ふむ、そうか。」
フウマは常日頃から自分の戦闘能力の低さを気にしておる様じゃった。
その分妾が年長者として守ってやらねばと思っておったが、どうやらそれは自惚れだった様じゃな。
事実、アセイダルの自我をああして消し去りただ暴走するだけのクズにしておきながら、妾達に迷惑をかけたなどとほざいておる。
そんな最大の功労者であるフウマが弱者なら、妾は何だというのじゃ。
フウマは妾なんぞが守ってやる必要のない十分に強い男であると、マイも言っておったではないか。
それに、妾もフウマの力の本質はその武力ではなく心じゃと気付いておったはずじゃ。
あやつらは出会った時から妾を対等な仲間として見てくれておった。
それがどんなに心地良くて嬉しかったか妾は忘れた訳ではないじゃろう。
それならば妾は…
「すまぬボタン。10分ほど妾は回復に専念するからそれまでフウマ達を頼む。」
「それは無理な頼みやなぁ。」
「なんじゃと?」
「10分もあったらフーマはん達だけでアセイダルを倒してしまうと思うんよ。この分やとうちの出番も無さそうやしなぁ。」
「ふん。それなら5分で済ませるだけの事じゃ。」
妾はそう言って目を閉じ、精神を集中させて回復に努めた。
すぐに妾も行くから待っておれ。
くれぐれも手柄を独り占めなんて無粋な事するでないぞ。
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