クラスごと異世界転移して好きな女の子と一緒に別行動していたら魔王に遭遇したんですけど...

がいとう

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第2章 やっぱり俺の仲間が優秀なんですけど…

32話 背中とお友達

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「ただいまー。」
「あ、おかえりなさい風舞くん。」
「うむ。おかえりなのじゃ。」

 雲龍を出てキキョウから逃げて来た後、家に帰ってリビングに向かってみると舞とローズがリビングでソファーに横になってぐでぇっとしていた。
 薄っすらと肌が上気していて少し色っぽい。

「なんでそんなにぐったりしてんだ?」
「ちょっと朝から長風呂しちゃって。」
「妾は舞に付き合われたのじゃ。」
「へぇ、そう。」

 俺は食料庫から持って来たジュース瓶のコルクを抜きながらソファーに腰掛ける。
 一口だけそれを飲んだ俺は、魔法が使えなくなった事を説明することにした。
 こういうのは早めに言っとかないと、どんどん言いづらくなるからな。

「二人に大事な話がある。」
「改まってどうしたんじゃ?」
「そ、それってもしかして…」

 俺が真面目な顔をして話を切り出すと、舞が桜色に染まっていた肌の彩度をぐっとあげてそわそわし始めた。
 ああ、なんか勘違いしているな。

 舞が動揺している理由はなんとなくわかる。
 アセイダル戦の合間で俺を励ましてくれた時に、俺のことが好きみたいなことを言った件だろう。

 正直な話、俺は自分でも今回の件をどう思ってるのかわからない。
 確かに舞が俺のことを好きだと言ってくれたのはその意味を度外視しても嬉しいし、三日三晩小躍りをしそうなぐらいテンションが上がっている。
 今朝舞に説教されている間も嬉し恥ずかしで、胸がざわついていたし。

 まぁ、それはともかく。
 俺が一番わからないのは、自分がこの後どうしたいかだ。
 確かに舞とお付き合いして行くとこまで行きたいとは常々思っているが、今すぐ舞に告白をして恋人同士になりたいかと言われたらそれも少し違う気がする。
 つまるところ、俺は今の舞との関係が割と楽しくて、この関係が進展するにしろ後退するにしろ今の状況を変えてしまうのは勿体ないと思っているのだろう。
 まだ異世界に来て二週間ぐらいなんだし、もう少しこの距離感でいても良いはずだ。

 とまぁ長々と一人心の中で語ってはみたが、正直なところ俺としては今回の件をなんでも無かった事にして素知らぬ顔をしていたい。
 とはいえ、舞の気持ちを考えてみたら俺の気持ちも少なからず伝えなくてはフェアでないのもまた事実なわけで、

「ああ。その話もしようと思ってたところだ。」

 俺は舞に少しだけでも自分の気持ちを伝える事にした。
 いつも舞にドキドキさせられっぱなしだし、少しくらいはやり返したって構わないだろう。

「な、何かしら?」

 舞はビクンと一度身震いした後で、身体をばっと起こし居住まいを整えた。
 ローズは俺と舞の方から顔を背けてソファーで横になったままでいる。

「俺はこの世界で舞と一緒にいられる事がすごく嬉しい。正直、これは日本にいるさみしい俺が見ている夢なんじゃないかと思うぐらいだ。」
「私も、私も風舞くんと同じよ。これは夢なんじゃないかと頰を何回引っ張ったかもう数えきれないわ。」
「それはどうかと思うが、多分夢じゃないと思うぞ。この前アセイダルに殴られた時はすげぇ痛かったしな。」
「ふふっ。私も目玉が飛び出るんじゃないかってくらい痛かったわ。」
「悪い。」
「もうっ。それは言いっこなしよ。」

 舞がそう言いながらクスクスと笑う。
 舞が本当に俺の責任だと思ってないようで、微妙に心苦しくなりながらも少し安心した。

「そうだったな。で、話を戻すんだが俺は舞とずっと一緒にいたい。今の生活がすげぇ楽しいし、舞にも一生救ってくれってお願いされちゃったしな。」
「風舞くん…。」

 舞がうるうるとした目で俺の方を見ている。
 だめだ。
 俺にはこれ以上この空気に耐えられるほどの神経がない。
 そろそろ勘弁してもらおう。

「それに、これは俺の密かな願望なんだが、死ぬまでに一度は舞のメイド服姿を見たいと思っている。」
「風舞くん!?」
「ぶっちゃけこの夢が叶うまでは舞と離れる訳にはいかない。ちなみにメイド服は伝統的なヴィクトリアンやクラシカルなものも良いが、アキバにいるようなメイドさんスタイルでも勿論良いぞ。大事なのは舞がメイド服を着ているという真実だけだ。」

 俺は驚いた顔をしている舞を置き去りにして話を続ける。

「メイド服の俺的フェイバリットポイントはヘアドレスとガーターベルトだ。舞がメイド服を着てくれるならこの2つにはこだわってもらいたい。まずはヘアドレスだが、これはメイドさんをメイドさんたらしめる大事なアイコンとなっていて、」
「ちょ、ちょっと風舞くん!」
「どうした?今いいとこなんだが。」
「風舞くんがメイド服を好きなのは十分に伝わったわ。そ、それで話はもう終わりなのかしら?」

 舞が上目遣いをしながら少し控えめにそう質問をしてきた。
 もうちょびっとだけ頑張るか。

「まぁ、話はこれでほとんどなんだけど。あとは、俺も舞と同じ気持ちだ。あの時の舞の言葉は人生で一番嬉しかった。」
「そ、それって。」

「ああ、そういえばローズ。この前フレンダさんに会ったぞ。」

 俺は舞が何かを言おうとするのを遮ってソファーに転がっているローズに話を振った。
 舞には悪いがここら辺で勘弁してほしい。
 いつか俺から月下のバルコニーで告白するから待っててくれ。

 俺はそう心の中で自分の願望と舞への謝罪をしながら目を逸らした。
 当の舞は俺のことをじっと見つめていたが、数秒ほどでソファーにボフっと倒れると身体を起こしていたローズの背に顔を押し付けてムゴムゴ言い始めた。

「これ舞!汚いからやめろ!」
「ふぃふぁふぁふふぁいふぁよ!」
「何て言ってるのか分からないんじゃが。」
「むごっ!?」

 体重を後ろにかけたローズとソファーの背もたれに挟まれた舞が短くうめき声をもらした。
 今は舞と目を合わせづらかったから結構助かる。
 ローズは穏やかな目で俺のことを見ているし、気を使ってくれたのかもしれない。

「それで、フレンダに会ったとはどういう事じゃ?」
「ああ。早く話そうと思ってたんだが、遅くなって悪い。」
「それは良い。近頃はなかなか落ち着いて話すタイミングもなかったからの。」
「ありがとな。それで、フレンダさんの話なんだが、」

 俺は自分の世界の中にいるフレンダさんについてローズに説明をした。
 フレンダさんはお姉様にくれぐれも内密にしてくださいと言っていたが、ギフトの説明をする上で話さない訳にはいかないし、今度謝っておけばいいだろう。

 ローズは俺の話を終始無言で聞いて、俺が話し終わると俺の前に置いてあったジュースを半分ほど一気に飲んで目を優しげに細めながらため息をついた。

「まったく、あやつは相変わらず妾の事となるとお転婆じゃな。」
「そうだな。でもまぁ、結構元気そうだったぞ。」
「そうか。フーマ、これからもフレンダを頼む。妾の妹はあれで優しいやつなのじゃ。良くしてやってくれ。」

 ローズは俺の顔を優しい雰囲気の大人な顔で見つめながらそう言った。

 言えない!
 実はフレンダさんにバニーやナース服を着せてリンボーダンスさせたり一緒におままごとしたりしている何て言えない!
 こんなに妹の事を大事にしていそうなローズにフレンダさんのあんなあられもない姿や情け無い姿を話したらショックを受けそうな気がする。

 ここは渾身の笑顔で誤魔化すとしよう。

「ああ!フレンダさんの事は俺に任せてくれ!」
「うむ。よろしく頼む。」

 ローズは俺ににっこりと笑いかけながらそう言った。
 うっ。
 ローズの純真な笑顔で心が痛い。

 俺がそんな感じで良心の呵責に耐えていると、俺が持ってきたジュースを全て飲みきったローズが再び口を開いた。

「それで、フウマの話はなんじゃ?他にもあるんじゃろ?」
「ああ。そうだった。俺、魔法使えなくなっちゃった。」
「えぇぇぇぇ!!?」

 俺がさらっと今日発覚した事実を伝えると、ローズの背中とお友達になっていた舞がガバっと起き上がって驚いた声をあげた。

 おお、舞が一番良いリアクションだな。
 俺はいきなり舞が立ち上がったため持っていた瓶を額にぶつけたローズを眺めながらそう思った。
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