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ハナ、元気ですか?
わたしは毎日元気にしています。

連絡をとるのは高校卒業以来ですね。

わたしは2男1女に恵まれました。長男が会社の後を継ぎ、他の子達もそれぞれ全員結婚しました。長男には女の子も産まれました。

今ふりかえってみると、同じ学校で過ごした中学校・高校時代が最も良い思い出となっています。

「橋本ハナといいます。趣味は読書です。よろしくお願いします。」

そう中学校の始業式で語るハナにわたしは一目惚れしました。りんとした瞳も、意志の強そうな口調も、背中までとどく濡羽色の髪も、ハナのすべてに心ひかれたのです。

席が隣だったのもあり、友達になるまでそこまで時間がかかりませんでしたね。友達として一緒に活動しながら、何度も告白しようかと迷いました。

ハナにもわたしにもすでに親が決めた許婚がいたから諦めたのです。それに、ハナは異性愛者だと思っていたので。

だからハナから告白してくれたときはとても嬉しかったです。学生の間しか付き合うことができない、家族にも同じ学校の生徒にもばれてはいけないという恐怖はあったけど学生生活の間だけは恋人でいられて幸せでした。

高校の卒業式の時に再びあったら恋愛感情を持ってしまうから会わないと約束したことを何回も後悔しました。元気な姿を少しでも見ることができたらと何度も思いました。

ハナに会わないために同窓会などもすべて避けてきました。会社は息子が継いだので次の同窓会には参加しようと思っています。ハナも参加するのでしたらそこで久しぶりに会いましょう。

わたしは永遠にハナを愛しています。














今日もまた出すことができないハナ宛の手紙を書いてしまった。もう日課になってしまっている。

ハナしか恋愛対象としてみられないが、夫もこども達も大事だ。そこに波風を立てるつもりはない。それに、ハナはわたしへの恋愛感情なんてもうないかもしれないのに。

そう考えてわたしは手紙を破り捨てた。
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