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9)帰り道
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「どうすりゃいいんだよ~!」
洗面器いっぱいの湯をかぶりながら叫ぶと、隣りで
身体を洗っていた鳥居がビクッとしていた。
平日の夜遅い時間帯は銭湯も空いているのか貸し切り状態だ。
だから色々と遠慮なく好き放題やれていた。
鳥居が「どうかしたのか」と問いかけてきたが、
「……いや、別に」と言うしかなかった。
まさかオマエとヤれるかヤれないかを考えていたなんて
言えないもんな……。
そうすると、鳥居は「何か悩んでいるのなら、おれで
良かったら話を聞くが」と言いだした。
「いや、その……」
「?」
口篭っていると、鳥居が顔を覗きこんできた。顔が近ぇよ! と
ツッコミを入れると、鳥居は「……すまん」と身を引いた。
傷つけてしまったみたいで、オレは少し落ち込んだ。
思えばオレってワガママばっかりだよなあ……。鳥居は
オレに色々譲歩しまくっているのに、オレはやっぱり鳥居に
甘えてばかりだ。
身体を洗い終えたオレは先に湯船に沈んだ。
考え過ぎてヒートアップした頭に熱湯はキツい。
うだうだしていると、鳥居が心配そうにしていた。
「大丈夫か?」
くそ……心配させちまった……不覚。
いや! 待てよ!? あーだこーだ悩んでるのは
性に合わねー! と、意を決して洗い場の鳥居に
「おい鳥居」と呼びかけた。
「何だ?」
「オマエってさあ……」
頷きながらシャワーを使う手を止めたアイツを前に、
オレは湯船に首まで浸かりながら呟くように問いかけた。
「……オマエってさあ、将来どうしたいと思ってんだ?」
とてつもなく遠回しに質問してしまった所為で、鳥居は
首を傾げていた。
「将来か?」
「そう。将来だよ」
オマエは男でオレも男だろ? 今は何となくで同居してるけど、
もしもオレがオマエと付き合うようになっても結婚とかムリだし、
絵に描いたような幸せ家族計画とかも生物学的に絶望的だし……
それに男2人で暮らしてると、確実にホモだとかゲイだとかで
噂されるだろうし……と、ごにょごにょ言っていると、
鳥居は「……何だ。そんな事か」と呆れたように答えた。
おまっ、オレが真剣に悩んでるのに! と立ち上がりかけたが、
鳥居は「お前と結婚したくて好きになったんじゃない」と
言い出した。
え……?
オレが驚いているのに、鳥居は平然としていた。
そしてシャワーのノズルを捻り、湯を浴びだした。
落ちた泡が排水溝に吸い込まれてゆく。
それを見つめていると、鳥居が口を開いた。
「お前以外のヤツと一生一緒に居られる気がしない。お前がいい。
それがおれにとっての『一番』だ。将来だとか家族だとか面子を
気にして生きるよりも、おれはおれの好きなヤツと共に
生きる方が幸せだと思っている」
「……」
「だが、それを樺に強制したりはしない。いつかお前が、
共に生きたいと思う奴が現れたのなら、そっちに行けばいい」
表情を見ていると、鳥居の言葉に嘘偽りは無かった。
そもそも、こいつはオレに嘘をついた事が無い気がする。
「オマエ……もしもオレが他のヤツと結婚したりしても
いいって言うのか?」
「いい」
「いいのかよ!? オマエはどうするんだよ!?」
鳥居の健気さに思わず胸がキュンした瞬間、オレの
質問に鳥居は即答した。
「死ぬ」
「待て待てまてぇええええええええ!! オマエ!!
それ脅迫だろうが!!!!」
「樺が他のヤツと××したり○○したりするのを
見るくらいなら、死ぬ。耐え切れない」
「やめろよ! オレが××とか○○とか、勝手に色々
妄想すんなよ!!!! それに何でいつも
Love Or Dieなんだよ!?」
「樺はオレの魂だからだ」
「重いな! オマエ、そーゆーのってヤンデレっていうんだって、
伊藤(高校の同級生でオタク)が言ってたぞ!?」
「……伊藤……」
「そう! 伊藤だよ! ほら、ちょっとぽっちゃりしてて
癒し系のヤツ!」
「……」
目に見えて鳥居が嫉妬し始めた。
無表情だが、セッケンを握り潰しだしたのだ。
鳥居の剛力がムダに発揮されたーーー!!
メキメキと音をたてて、セッケンがプラスチックみたいに
砕けていっている。
やめろ! 銭湯の人が困るだろうが! と慌ててセッケンの
カケラを片付けたが、鳥居は唇を噛み締めていた。
「落ち着け! 鳥居! 王蟲みたいに怒るな!」
「……おれも樺とヤンデレというものについて語りたいのに……伊藤め……」
「ヤンデレってのは、オマエの事だよ! それでいいだろ!」
だが鳥居は「伊藤……」と、重低音ボイスで呟いている。
伊藤逃げろ。超逃げろ。
鳥居を落ち着かせる為に、洗面器のお湯をぶっかけると、
ようやく我に返ったようだった。
ドライに見えて、コイツは嫉妬深い。オレがご近所の
十勝さんや細井さん、編集の今井さんと喋ってると、
やけに輪をかけて無口だなと思っていたが、
どうやらヤキモチを妬いていたらしい。
今井さん相手には蹴りまで入れていたしな。
オマエ……オレが十勝さん達とどうにかなるわけ
ないだろうが と呆れていると『樺を信用していないとか
じゃなく、樺の可愛さや格好良さは人を惹きつけるから、
お前が物陰に連れ込まれたりしないか心配だ』と
防犯ブザーやスタンガンやサバイバルナイフを
手渡してきたのだ。
オレが居酒屋のバイトで帰宅が遅くなるのも鳥居的に
心配だかららしいが、どう考えてもサバイバルナイフは
過剰防衛だろ! オーバーキルだろ!
もしもオレが女だったら、確実にコイツはストーカー
みたいに着いて回るんだろうな……。
そう思って、ふと訊いてみた。
「オマエ、オレが女だったらいいとか思うのか?」
身体を洗い終えた鳥居は湯船に浸かり、考え込んでいた。
どうでもいい事だが、鳥居は何故か風呂に浮かべる
アヒルちゃんを持ってきていた。水面の上を
揺れるアヒルの親子を見つめていると、鳥居が呟いた。
「そう思った事もある。だが、どっちでもいいと今は思っている」
思った事があるのか……。もしもオレが女だったら、
鳥居の想いにもストレートに応えてたんだろうか?
鳥居と付き合うとか色々な事、今みたいに悩まずに
受け入れられたのだろうか?
いや、男女同士でも悩む事はあるんだろうけどさ。
何ていうか男同士とは根本的に悩みの部分が違うだろ?
そうしていると、鳥居が付け足した。
「樺が女だったら、あまりにも可愛くて
確実に夜道で襲われて危ないから、
永久に部屋から出さない……と、思う」
オレは咳き込んだ。ものっそい驚いたからだ。
「うぉい!? さらっと監禁宣言するな!!!!!」
「おれの事だけ考えさせたいと思う」
「もう充分、オマエの事で頭がいっぱいだよ!(イヤな意味で)」
「/////」
「無表情で喜ぶな! ていうか、危ねえ!
オレ、男で良かった!!! 監禁される所だった!!」
心の底から男で良かったと思った。
何だかんだ話していると、結構な時間が経っていた。
そろそろ帰るか という話になり、風呂から上がった。
扉を開けて脱衣所に向かう途中、鳥居のアホが
ロッカーの鍵を紛失しかけている事に気づき、危うく
アイツが全裸で帰宅しなければならなくなる所だった。
(カギは失くさないようにアヒルの中に収納されていた)
オマエ、ノーパンで帰宅から全裸に帰宅に
レベルアップとかマジで止めろよ!?
ホコホコに温まった帰り道、約束どおりコンビニに寄った。
時間帯が時間帯なだけあって、若い女の子は
店員くらいしかいない。
ヤンキーみたいな兄ちゃんとかリーマンとかばっかりだった。
鳥居は安心したみたいだ。ちなみに鳥居が店内を歩いていると
背丈がデカいので見つけ易くて便利である。
オレはカゴを持ちながら、おつまみコーナーを
チェックしていた。
「おーい、鳥居~。あんまアイスばっか買うなよ~」
声をかけると、鳥居が「わかってる」と言いながら
アイスのスペースで商品を吟味していた。
オレは適当なおつまみと、メッツコーラとQooを
カゴに入れると、鳥居に近づいて一緒にアイスを探してみた。
むー……。やっぱりチョコミントアイスは夏場が旬か~……。
売ってなくて残念だ と思っていると、鳥居が何か
オレの背後でごそごそしてた。
「何してんだよ?」
振り返ると、アイツはうろたえていた。
「いや……樺が……」
「オレが何だよ!?」
「……いい匂いがしたから、驚いた」
……どうやら、オレのシャンプーの匂いに気づき、つい
クンクンしちゃった、等と供述していた。犬かオマエは!
オレは高校の頃から同じシャンプーを愛用していた。
飽き性なのにこだわってるのは、父親の頭皮が
何というか、その……切ない感じなので、オレも
遺伝したら怖いなーという恐怖心があった。だから髪と頭皮に
いい『めっちゃオレンジシャンプー』という商品を
愛用していた。すごい柑橘系の匂いだけどな。
「オマエだって同じ匂いがするだろ。おんなじシャンプー
使ってんだから」
「それもそうか……」
何となく鳥居は嬉しそうだった。
オマエはフサフサだからいいだろうけど、オレは
将来を考えると怖くて仕方ねえよ と呟くと、鳥居は真顔で
「樺がどうなっても、おれの気持ちは変わらない」と
言い出した。
誰かに聞かれると困るのと、照れ隠しで鳥居の腹筋に
肘鉄を叩き込んだ。
さて、そろそろレジに行くか……。
レジの店員さんも困惑してるっぽいしな と、思っていると
鳥居はラーメンコーナーに走って行った。
何してんだー! と思ったが、戻ってきた鳥居は
両手に『ふなっしーソースラーメン』を持ってきていた。
オレもふなっしーは大好きだが、ラーメンを置いといたら
オマエ、夜中に食うだろうが! とオカンの心境になった。
「おい! 買わねーぞ! 戻してこい!」
「……」
「そんな目で見ても買わないから、戻してらっしゃい!」
口調がお母さんになったが、鳥居は「アイスは止めるから、
これを買ってくれ……」と、譲歩してきた。
大好物のアイスを我慢してまで……オマエってヤツは……!
と感動したので、買う事にした。
はい、鳥居を甘やかしてます。
でも明日のオレとオマエの昼飯、コレとおにぎりな。
そんなこんなでコンビニで色々買った。
帰り道でアイスを食べてみる。美味い。
木造建築の裏路地を歩いていると、月が眩しく見えた。
でも少し寒くて、手袋を持ってくれば良かったと
後悔したが、冷え性の鳥居はクシャミをしていた。
「くちん!」
「オマエ、くしゃみは可愛いのな」
「樺の方が可愛い」
「可愛くねーよ! オレのくしゃみ、オッサンみたいだぞ!?」
ぶぇっくしょーいこんちくしょー とか言っちゃうしな。
そう言っていると、鳥居がモフモフ付きのジャンパーを脱いだ。
何してるんだオマエ と思っていると、それを着せかけてくる。
「何してんだよ」
「いや……樺が風邪をひいたら、おれは悲しい」
「オマエの方が風邪ひきそうな格好だろうが!」
「おれは平気だ……むしろ、熱い」
そう言いながら、鳥居は赤面していた。
何でそんなエロい顔してんだ と思っていると、鳥居が
ちょいちょいとオレの手を指差してきた。
オレは棒のアイス(ミルクバー)を買っていたのだが、
それが溶けて手を伝っていた。アイスを舐めていたら、
やたらと鳥居がジロジロ見てくると思ったら……!
こいつ、オレとアイスでいかがわしい事を考えてたな!
それに気づいたオレは慌てて鳥居の足を蹴る。
「オマエ! 何考えてんだよ!」
「すまない……」
「そう言いながら、オレとアイスを見るなー!」
裏路地は少し暗くて、こういう場所なら少しだけ
鳥居と手を繋いで歩いてもいいかもなー なんて考えていた
けれど、見事にその想いはフッ飛んだのだった。
洗面器いっぱいの湯をかぶりながら叫ぶと、隣りで
身体を洗っていた鳥居がビクッとしていた。
平日の夜遅い時間帯は銭湯も空いているのか貸し切り状態だ。
だから色々と遠慮なく好き放題やれていた。
鳥居が「どうかしたのか」と問いかけてきたが、
「……いや、別に」と言うしかなかった。
まさかオマエとヤれるかヤれないかを考えていたなんて
言えないもんな……。
そうすると、鳥居は「何か悩んでいるのなら、おれで
良かったら話を聞くが」と言いだした。
「いや、その……」
「?」
口篭っていると、鳥居が顔を覗きこんできた。顔が近ぇよ! と
ツッコミを入れると、鳥居は「……すまん」と身を引いた。
傷つけてしまったみたいで、オレは少し落ち込んだ。
思えばオレってワガママばっかりだよなあ……。鳥居は
オレに色々譲歩しまくっているのに、オレはやっぱり鳥居に
甘えてばかりだ。
身体を洗い終えたオレは先に湯船に沈んだ。
考え過ぎてヒートアップした頭に熱湯はキツい。
うだうだしていると、鳥居が心配そうにしていた。
「大丈夫か?」
くそ……心配させちまった……不覚。
いや! 待てよ!? あーだこーだ悩んでるのは
性に合わねー! と、意を決して洗い場の鳥居に
「おい鳥居」と呼びかけた。
「何だ?」
「オマエってさあ……」
頷きながらシャワーを使う手を止めたアイツを前に、
オレは湯船に首まで浸かりながら呟くように問いかけた。
「……オマエってさあ、将来どうしたいと思ってんだ?」
とてつもなく遠回しに質問してしまった所為で、鳥居は
首を傾げていた。
「将来か?」
「そう。将来だよ」
オマエは男でオレも男だろ? 今は何となくで同居してるけど、
もしもオレがオマエと付き合うようになっても結婚とかムリだし、
絵に描いたような幸せ家族計画とかも生物学的に絶望的だし……
それに男2人で暮らしてると、確実にホモだとかゲイだとかで
噂されるだろうし……と、ごにょごにょ言っていると、
鳥居は「……何だ。そんな事か」と呆れたように答えた。
おまっ、オレが真剣に悩んでるのに! と立ち上がりかけたが、
鳥居は「お前と結婚したくて好きになったんじゃない」と
言い出した。
え……?
オレが驚いているのに、鳥居は平然としていた。
そしてシャワーのノズルを捻り、湯を浴びだした。
落ちた泡が排水溝に吸い込まれてゆく。
それを見つめていると、鳥居が口を開いた。
「お前以外のヤツと一生一緒に居られる気がしない。お前がいい。
それがおれにとっての『一番』だ。将来だとか家族だとか面子を
気にして生きるよりも、おれはおれの好きなヤツと共に
生きる方が幸せだと思っている」
「……」
「だが、それを樺に強制したりはしない。いつかお前が、
共に生きたいと思う奴が現れたのなら、そっちに行けばいい」
表情を見ていると、鳥居の言葉に嘘偽りは無かった。
そもそも、こいつはオレに嘘をついた事が無い気がする。
「オマエ……もしもオレが他のヤツと結婚したりしても
いいって言うのか?」
「いい」
「いいのかよ!? オマエはどうするんだよ!?」
鳥居の健気さに思わず胸がキュンした瞬間、オレの
質問に鳥居は即答した。
「死ぬ」
「待て待てまてぇええええええええ!! オマエ!!
それ脅迫だろうが!!!!」
「樺が他のヤツと××したり○○したりするのを
見るくらいなら、死ぬ。耐え切れない」
「やめろよ! オレが××とか○○とか、勝手に色々
妄想すんなよ!!!! それに何でいつも
Love Or Dieなんだよ!?」
「樺はオレの魂だからだ」
「重いな! オマエ、そーゆーのってヤンデレっていうんだって、
伊藤(高校の同級生でオタク)が言ってたぞ!?」
「……伊藤……」
「そう! 伊藤だよ! ほら、ちょっとぽっちゃりしてて
癒し系のヤツ!」
「……」
目に見えて鳥居が嫉妬し始めた。
無表情だが、セッケンを握り潰しだしたのだ。
鳥居の剛力がムダに発揮されたーーー!!
メキメキと音をたてて、セッケンがプラスチックみたいに
砕けていっている。
やめろ! 銭湯の人が困るだろうが! と慌ててセッケンの
カケラを片付けたが、鳥居は唇を噛み締めていた。
「落ち着け! 鳥居! 王蟲みたいに怒るな!」
「……おれも樺とヤンデレというものについて語りたいのに……伊藤め……」
「ヤンデレってのは、オマエの事だよ! それでいいだろ!」
だが鳥居は「伊藤……」と、重低音ボイスで呟いている。
伊藤逃げろ。超逃げろ。
鳥居を落ち着かせる為に、洗面器のお湯をぶっかけると、
ようやく我に返ったようだった。
ドライに見えて、コイツは嫉妬深い。オレがご近所の
十勝さんや細井さん、編集の今井さんと喋ってると、
やけに輪をかけて無口だなと思っていたが、
どうやらヤキモチを妬いていたらしい。
今井さん相手には蹴りまで入れていたしな。
オマエ……オレが十勝さん達とどうにかなるわけ
ないだろうが と呆れていると『樺を信用していないとか
じゃなく、樺の可愛さや格好良さは人を惹きつけるから、
お前が物陰に連れ込まれたりしないか心配だ』と
防犯ブザーやスタンガンやサバイバルナイフを
手渡してきたのだ。
オレが居酒屋のバイトで帰宅が遅くなるのも鳥居的に
心配だかららしいが、どう考えてもサバイバルナイフは
過剰防衛だろ! オーバーキルだろ!
もしもオレが女だったら、確実にコイツはストーカー
みたいに着いて回るんだろうな……。
そう思って、ふと訊いてみた。
「オマエ、オレが女だったらいいとか思うのか?」
身体を洗い終えた鳥居は湯船に浸かり、考え込んでいた。
どうでもいい事だが、鳥居は何故か風呂に浮かべる
アヒルちゃんを持ってきていた。水面の上を
揺れるアヒルの親子を見つめていると、鳥居が呟いた。
「そう思った事もある。だが、どっちでもいいと今は思っている」
思った事があるのか……。もしもオレが女だったら、
鳥居の想いにもストレートに応えてたんだろうか?
鳥居と付き合うとか色々な事、今みたいに悩まずに
受け入れられたのだろうか?
いや、男女同士でも悩む事はあるんだろうけどさ。
何ていうか男同士とは根本的に悩みの部分が違うだろ?
そうしていると、鳥居が付け足した。
「樺が女だったら、あまりにも可愛くて
確実に夜道で襲われて危ないから、
永久に部屋から出さない……と、思う」
オレは咳き込んだ。ものっそい驚いたからだ。
「うぉい!? さらっと監禁宣言するな!!!!!」
「おれの事だけ考えさせたいと思う」
「もう充分、オマエの事で頭がいっぱいだよ!(イヤな意味で)」
「/////」
「無表情で喜ぶな! ていうか、危ねえ!
オレ、男で良かった!!! 監禁される所だった!!」
心の底から男で良かったと思った。
何だかんだ話していると、結構な時間が経っていた。
そろそろ帰るか という話になり、風呂から上がった。
扉を開けて脱衣所に向かう途中、鳥居のアホが
ロッカーの鍵を紛失しかけている事に気づき、危うく
アイツが全裸で帰宅しなければならなくなる所だった。
(カギは失くさないようにアヒルの中に収納されていた)
オマエ、ノーパンで帰宅から全裸に帰宅に
レベルアップとかマジで止めろよ!?
ホコホコに温まった帰り道、約束どおりコンビニに寄った。
時間帯が時間帯なだけあって、若い女の子は
店員くらいしかいない。
ヤンキーみたいな兄ちゃんとかリーマンとかばっかりだった。
鳥居は安心したみたいだ。ちなみに鳥居が店内を歩いていると
背丈がデカいので見つけ易くて便利である。
オレはカゴを持ちながら、おつまみコーナーを
チェックしていた。
「おーい、鳥居~。あんまアイスばっか買うなよ~」
声をかけると、鳥居が「わかってる」と言いながら
アイスのスペースで商品を吟味していた。
オレは適当なおつまみと、メッツコーラとQooを
カゴに入れると、鳥居に近づいて一緒にアイスを探してみた。
むー……。やっぱりチョコミントアイスは夏場が旬か~……。
売ってなくて残念だ と思っていると、鳥居が何か
オレの背後でごそごそしてた。
「何してんだよ?」
振り返ると、アイツはうろたえていた。
「いや……樺が……」
「オレが何だよ!?」
「……いい匂いがしたから、驚いた」
……どうやら、オレのシャンプーの匂いに気づき、つい
クンクンしちゃった、等と供述していた。犬かオマエは!
オレは高校の頃から同じシャンプーを愛用していた。
飽き性なのにこだわってるのは、父親の頭皮が
何というか、その……切ない感じなので、オレも
遺伝したら怖いなーという恐怖心があった。だから髪と頭皮に
いい『めっちゃオレンジシャンプー』という商品を
愛用していた。すごい柑橘系の匂いだけどな。
「オマエだって同じ匂いがするだろ。おんなじシャンプー
使ってんだから」
「それもそうか……」
何となく鳥居は嬉しそうだった。
オマエはフサフサだからいいだろうけど、オレは
将来を考えると怖くて仕方ねえよ と呟くと、鳥居は真顔で
「樺がどうなっても、おれの気持ちは変わらない」と
言い出した。
誰かに聞かれると困るのと、照れ隠しで鳥居の腹筋に
肘鉄を叩き込んだ。
さて、そろそろレジに行くか……。
レジの店員さんも困惑してるっぽいしな と、思っていると
鳥居はラーメンコーナーに走って行った。
何してんだー! と思ったが、戻ってきた鳥居は
両手に『ふなっしーソースラーメン』を持ってきていた。
オレもふなっしーは大好きだが、ラーメンを置いといたら
オマエ、夜中に食うだろうが! とオカンの心境になった。
「おい! 買わねーぞ! 戻してこい!」
「……」
「そんな目で見ても買わないから、戻してらっしゃい!」
口調がお母さんになったが、鳥居は「アイスは止めるから、
これを買ってくれ……」と、譲歩してきた。
大好物のアイスを我慢してまで……オマエってヤツは……!
と感動したので、買う事にした。
はい、鳥居を甘やかしてます。
でも明日のオレとオマエの昼飯、コレとおにぎりな。
そんなこんなでコンビニで色々買った。
帰り道でアイスを食べてみる。美味い。
木造建築の裏路地を歩いていると、月が眩しく見えた。
でも少し寒くて、手袋を持ってくれば良かったと
後悔したが、冷え性の鳥居はクシャミをしていた。
「くちん!」
「オマエ、くしゃみは可愛いのな」
「樺の方が可愛い」
「可愛くねーよ! オレのくしゃみ、オッサンみたいだぞ!?」
ぶぇっくしょーいこんちくしょー とか言っちゃうしな。
そう言っていると、鳥居がモフモフ付きのジャンパーを脱いだ。
何してるんだオマエ と思っていると、それを着せかけてくる。
「何してんだよ」
「いや……樺が風邪をひいたら、おれは悲しい」
「オマエの方が風邪ひきそうな格好だろうが!」
「おれは平気だ……むしろ、熱い」
そう言いながら、鳥居は赤面していた。
何でそんなエロい顔してんだ と思っていると、鳥居が
ちょいちょいとオレの手を指差してきた。
オレは棒のアイス(ミルクバー)を買っていたのだが、
それが溶けて手を伝っていた。アイスを舐めていたら、
やたらと鳥居がジロジロ見てくると思ったら……!
こいつ、オレとアイスでいかがわしい事を考えてたな!
それに気づいたオレは慌てて鳥居の足を蹴る。
「オマエ! 何考えてんだよ!」
「すまない……」
「そう言いながら、オレとアイスを見るなー!」
裏路地は少し暗くて、こういう場所なら少しだけ
鳥居と手を繋いで歩いてもいいかもなー なんて考えていた
けれど、見事にその想いはフッ飛んだのだった。
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