琥珀の夜鷹_ep1. 星降りの守り人

朝河 れい

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EP1_3章

3章_8 動き出すメルヴィア

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 時を同じくして、
星鏡台地を治めるエンタール公国の北東に位置する隣国、
メルヴィア公国では、静かに事が動き出していた。


「さて、首尾はどうなっているかな?」

ラムサス・メルヴィアは、
城に参集した将軍たちに広く問いかける。

しばしの間、広間に静謐が流れたが、
やがて将軍が一人、前に進み出た。


「彼の地に侵攻するために、
十分な装備が整う算段がついています。
既に五千振り程、ふさわしい武具を揃えております。
これでいつでも、ご所望の通り進められます。」

エンタール公国からの回答が保留となっている手前、
星鏡台地を越えるには、極めて厄介な存在、
迷い星の対処策としての星晶石制の武具の確保は、
ラムサスの描く筋書きの中に欠かせないものだった。

それをこの青銀色の甲冑を纏った将軍は成し遂げたというのだ。
その場にいた将軍たちは、
驚きを隠せない様子で、皇帝と青銀の将軍とのやり取りを見守る。


「五千振りか。それだけあれば、
手練れの兵には行き渡ろう。策が見事に花開いたな、」

満足げにほくそ笑むラムサスは、旗下の将軍たちに命令を下した。


「さて、我らの働きに対して、
第一公女エンヴィの下手な外交政策は知っての通り、
我らと同じく北英の民を祖とする同胞、
エンタール公国からの助力は現状望み薄である。

この大陸を真の意味で開放するには、
我ら一国だけでは中々厳しい。

だからこそ我々は彼の国に本気を見せる必要がある。
このメルヴイアの側につく他無い事を理解させなければ。


このままでは代々メルヴィアを育ててきた父祖に顔向けができない。
大陸の盟主とうたいながら、
我々メルヴィアへの薄情ぶりを知らん人間はいない。

憎きトルトゥーザには、
国民ももう我慢の限界ではないかな?」


ラムサスの問いかけに将軍たちは槍を床に突き、ド
ンという響きで応える。

「力及ばぬ姉上がもたらした外交関係をまずは覆す。
父上に代わり軍を預かった私は、
今や怨敵トルトゥーザに劣らない陣容を揃えてみせた。
民の声を代弁するに相応しいのはこの私である!」

槍が鳴らす突音に、ラムサスはなおも言葉を続ける。

「もはやこれまでだ!諸侯に次ぐ!
優秀なるメルヴィア臣民の為、
愚かしい第一公女エンヴィを追放せよ!
この私、ラムサスの元で新たなるメルヴィアを建てるのだ!」

一際大きく響いたドン、という音を最後に、
将軍たちが各々の命に従って公宮を去っていく。
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