琥珀の夜鷹_ep1. 星降りの守り人

朝河 れい

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EP1_7章

7章_5 思惑

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 「その名はとうの昔に捨てた。
母を奪い、娘を殺しかけた男の下で、
おめおめと働き続けた父親が、今更何をしようと?

私の怒りは、王一人だけに向かっていたのではない!」

怒りと悲しみの入り混じったような目でロクサリオを睨め付け、
その首筋に剣先を押し当てた。


刃が押し当てられた首から、血が滲み出す。
しかし、ロクサリオは下がろうとはしなかった。


「家族。私には選べなかった選択肢だ。
シンシアも、本心ではなんと思っていただろうか。
思い返せば後悔ばかりだ。

しかし今、失ったと思っていた娘を目の前にして、
また引き下がるくらいならば、それこそ、
死んでしまった方が幾分か良い・・・。」


一歩、前に足を出す。
首元に当てられた刃に血が零れて伝う。


次の一歩で、その刃は恐らく動脈にたどり着く。

その感触を感じ取ったロキシェルは、無意識に剣を首から離した。

剣を握る手の力が緩んだ一瞬、
ロクサリオは娘をその胸に抱き留めた。


「ミラーナ、本当に寂しい思いをさせた。
済まなかった・・・。」

温かく、柔らかな力強さ。

懐かしさを感じる父を前に、
ロキシェルは動揺を隠すことに必死になった。


「く!敗戦国の軍人が、立場を弁えろ!」

必要以上の力でロクサリオを押し退け、
ロキシェルは冷たく言い放つ。


「・・・捕虜の同時返還には応じよう。
しかし、こちらの要求を、

いえ、私の願いを、断ったりはしないはず。
・・そうでしょう、父上?」

美しくも、輝きを放たないその目をロクサリオに向け、
彼女は静かに言葉を続けた。


新月の闇深い夜、
客間の灯は空が白みはじめてもなお揺れていた。
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