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居場所を探して
しおりを挟む「着いたわ」
北ソザーレは農業の村。土地のほとんどが田畑で、ぽつぽつと平屋の家が建っている。こんな見通しの良いところで、しかも住人が皆顔見知りという状況で、本当にここが人身売買の現場となっているのかにわかに信じられない。
「……」
リオンは村に着いてからずっと喋らない。ずっと追ってきた母の仇まであと一歩のところまで来ているのだから、いろいろ思うところがあるのだろう。
「さて、ここにいきなり都会の令嬢が現れたら、どうなりますか?」
いきなり隣のアルが周囲を見渡しながら質問をしてきた。遠くの方で農作業をしていた住民がこちらの様子を伺っているのがわかる。
「かなり目立つと思うわ。今もかなり視線を感じるもの。絶対に気が付くはずよ。それなのになぜ王都まで情報が上がってこなかったのかしら」
「彼女たちが自ら訪れたと思ったのならどうでしょう。もしかしたら、都会で何か罪を犯したのでは? 婚約破棄でもされて行く当てがないのでは? そうだとしたら、報告するまでもないでしょう」
「アル、何が言いたいの?」
「つまり、そういった訳アリの方が訪れるところに彼女たちがいる可能性が高いということです。どこだと思いますか?」
「まさか、教会!」
「ご名答」
私たちは急いで教会へと向かった。
村はずれにひっそりと建っている教会は質素な作りながらも、そこそこ大きい。裏手には川が流れていて、なるほど、ひっそりと物を運ぶには都合がよさそうだ。
窓から中の様子を伺おうとするも、窓は固く閉ざされていて、中はカーテンのようなもので覆われており全く見ることができない。
「昼間なのに窓が締め切られているのはおかしいわ。どうにかして中の様子がわかる方法はないかしら」
「ここで何かが行われようとしていることは間違いなさそうですね。動きがあるまで外で待つか……いや、周囲に隠れるところがなさ過ぎて無理だ……どうすれば……」
「そんなの簡単よ、正面突破あるのみ! 先に中の奴らを捕らえる。そして、何も知らないライオネルがやってくるのを待ち伏せしてやっつける。どう?」
「危険です! もしすでに中にライオネルがいたら令嬢たちに被害が及ぶかもしれません」
「大丈夫よ、アルがいるもの。ね?」
さっき、アルは謙遜して自分のスキルは弱いって言っていたけれども、そんなことはない。だって今までずっと一緒にいていくつものピンチを乗り越えて来たんだもの。アルになら任せられる。
「リオンもそれでいいかしら」
「ああ。問題ない。行こう」
リオンはそう言うと教会の扉から勢いよく中へと入っていった。
「追うわよ、アル!」
「急ぎましょう」
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