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エピローグ:私の結婚したい人
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アルと私、二人手をつないで玉座の間へと入る。
お父様は私たちを見ると、にこりと笑ってうんうんとゆっくりと頷いた。
私は一歩前に出て、深く礼をする。
「お父様、ご心配をおかけしました。私は運命の人を見つけました。今、私の隣にいるアルバートです。彼は先日のライオネル捕縛に関して、その自分の強みであるスキルを最大限活かし戦い勝利しました。私は彼のその心身の強さを尊敬しています。私の人生にはずっと隣に彼がいました。隣に彼のいない人生など考えられません。私は彼を愛しています。どうか、彼との結婚をお許しください」
「アルバートは、それでよいのか?」
アルもまた一歩前へ出て跪く。
「はい。私は幼き頃からずっとステラ様をお慕いしておりました。陛下から結婚の打診のあった日、私の方からも結婚の申し出をさせていただくつもりでした」
その言葉に驚き、つい隣のアルを見てしまう。アルは私に気が付き優しく笑うと話を続けた。
「しかしステラ様は私が相手とは知らず、結婚を拒否されていました。陛下はステラ様に自ら結婚相手を選ぶチャンスを与えたと同時に私にも選ばれるチャンスをくださったこと、誠に感謝いたします」
「あの時、結婚相手探しの旅にも関わらず、異性であるアルを同行させたのってそういう意図もあったってこと? もっと早く言ってくれたらよかったのに」
自分が聞かなかったことを棚に上げて、ぽつりとつぶやく。どうやらそれはお父様にも聞こえてしまったらしい。
「それでは、あの時、結婚相手がアルバートだと聞かされていたら、受け入れることができたか?」
「それは……」
確かに、あの時の私はただ力が強い人を求めてしまっていて、当時線が細く身長も私と変わらないくらいのアルは結婚の対象外と思っていた。だから、すんなりと受け入れることはできなかったかもしれない。
私が、自分の気持ちを、本当に大切にしたい人を見つけるためには旅に出る必要があったんだ。
「結果としてステラ様に選んでいただけて光栄です。私はステラ様を一生大切にいたします」
「うむ。ステラは一人で突っ走ってしまうこともある。どうか、ステラのことをよろしく頼むぞ」
「はい!」
「ありがとう、お父様!」
ここはホーリー伯爵邸。今日からここで暮らし始める。何度もこっそり通ったところが今日からは私の帰る場所。なんだかこそばゆい気持ちになる。
伯爵邸では義両親、使用人とも温かく迎え入れてくれた。
「息子を選んでくれて本当に嬉しく思う。今日からは玄関から堂々と入って来ておくれよ」
「ふふっ。アルバートったらね、ステラ様に認めてもらうんだって、ずっと早朝に稽古をしていたんですよ。よかったわね、アルバート」
「ちょ、母様! 余計なことは言わないでください」
アルがずっと私のことを思ってくれていたことが伝わってくる。アルを選んで本当に良かった。この家族となら、幸せになれると確信する。
「まさか、この部屋で暮らすことになるとは半年前の私が知ったら驚くわね」
案内されたのは、良く知るアルバートの部屋。夫婦の寝室はまだ伯爵夫妻が使用しているため、引退するまでの間、しばらくはこの部屋で暮らすこととなっている。
「ステラ様、申し訳ありません。父が引退するまでご辛抱ください」
「そういうことじゃないわよ。慣れ親しんだ部屋で嬉しいの。あと、私たちは夫婦よ。様付けはいらないわ」
「で、では……ステラ」
「は、はい」
私から呼び捨てにするように言ったのに、いざ言われてみるとドキドキする。お互いに気持ちが通じ合っていたとはいえ、どこか王女と配下の関係があったけれど、それはもうなく、対等の関係。
いつの間にかすっかり私よりも頭一つ分大きくなったアルと見つめると、優しく抱きしめられる。
「ステラ、愛しています」
「私も」
少し屈んだと思ったら、軽々とお姫様抱っこをされてしまった。アルの首に腕を回し、たくましく成長したアルの胸に身を預ける。心臓がドキドキ煩い。
そしてそのままベッドへと運ばれ……
この先は、二人だけの秘密。
一つだけ言えるのは、二人はその後も仲睦まじく幸せに暮らしたということ。
おしまい。
お父様は私たちを見ると、にこりと笑ってうんうんとゆっくりと頷いた。
私は一歩前に出て、深く礼をする。
「お父様、ご心配をおかけしました。私は運命の人を見つけました。今、私の隣にいるアルバートです。彼は先日のライオネル捕縛に関して、その自分の強みであるスキルを最大限活かし戦い勝利しました。私は彼のその心身の強さを尊敬しています。私の人生にはずっと隣に彼がいました。隣に彼のいない人生など考えられません。私は彼を愛しています。どうか、彼との結婚をお許しください」
「アルバートは、それでよいのか?」
アルもまた一歩前へ出て跪く。
「はい。私は幼き頃からずっとステラ様をお慕いしておりました。陛下から結婚の打診のあった日、私の方からも結婚の申し出をさせていただくつもりでした」
その言葉に驚き、つい隣のアルを見てしまう。アルは私に気が付き優しく笑うと話を続けた。
「しかしステラ様は私が相手とは知らず、結婚を拒否されていました。陛下はステラ様に自ら結婚相手を選ぶチャンスを与えたと同時に私にも選ばれるチャンスをくださったこと、誠に感謝いたします」
「あの時、結婚相手探しの旅にも関わらず、異性であるアルを同行させたのってそういう意図もあったってこと? もっと早く言ってくれたらよかったのに」
自分が聞かなかったことを棚に上げて、ぽつりとつぶやく。どうやらそれはお父様にも聞こえてしまったらしい。
「それでは、あの時、結婚相手がアルバートだと聞かされていたら、受け入れることができたか?」
「それは……」
確かに、あの時の私はただ力が強い人を求めてしまっていて、当時線が細く身長も私と変わらないくらいのアルは結婚の対象外と思っていた。だから、すんなりと受け入れることはできなかったかもしれない。
私が、自分の気持ちを、本当に大切にしたい人を見つけるためには旅に出る必要があったんだ。
「結果としてステラ様に選んでいただけて光栄です。私はステラ様を一生大切にいたします」
「うむ。ステラは一人で突っ走ってしまうこともある。どうか、ステラのことをよろしく頼むぞ」
「はい!」
「ありがとう、お父様!」
ここはホーリー伯爵邸。今日からここで暮らし始める。何度もこっそり通ったところが今日からは私の帰る場所。なんだかこそばゆい気持ちになる。
伯爵邸では義両親、使用人とも温かく迎え入れてくれた。
「息子を選んでくれて本当に嬉しく思う。今日からは玄関から堂々と入って来ておくれよ」
「ふふっ。アルバートったらね、ステラ様に認めてもらうんだって、ずっと早朝に稽古をしていたんですよ。よかったわね、アルバート」
「ちょ、母様! 余計なことは言わないでください」
アルがずっと私のことを思ってくれていたことが伝わってくる。アルを選んで本当に良かった。この家族となら、幸せになれると確信する。
「まさか、この部屋で暮らすことになるとは半年前の私が知ったら驚くわね」
案内されたのは、良く知るアルバートの部屋。夫婦の寝室はまだ伯爵夫妻が使用しているため、引退するまでの間、しばらくはこの部屋で暮らすこととなっている。
「ステラ様、申し訳ありません。父が引退するまでご辛抱ください」
「そういうことじゃないわよ。慣れ親しんだ部屋で嬉しいの。あと、私たちは夫婦よ。様付けはいらないわ」
「で、では……ステラ」
「は、はい」
私から呼び捨てにするように言ったのに、いざ言われてみるとドキドキする。お互いに気持ちが通じ合っていたとはいえ、どこか王女と配下の関係があったけれど、それはもうなく、対等の関係。
いつの間にかすっかり私よりも頭一つ分大きくなったアルと見つめると、優しく抱きしめられる。
「ステラ、愛しています」
「私も」
少し屈んだと思ったら、軽々とお姫様抱っこをされてしまった。アルの首に腕を回し、たくましく成長したアルの胸に身を預ける。心臓がドキドキ煩い。
そしてそのままベッドへと運ばれ……
この先は、二人だけの秘密。
一つだけ言えるのは、二人はその後も仲睦まじく幸せに暮らしたということ。
おしまい。
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