占い師が不良少女でも信じてくれますかっ!?

しんしょう

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占いと終わりと始まり

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 部室を飛び出た不良少女は、校内を駆け回り、昨日会った王子を探す。

 「ハァッハァッハァッ・・・」

 「チッ! あいつはどこにいやがんだ? 」

 闇雲に駆け回り、全身汗だくになったところで、教室にポツンと一人でいる王子を発見した。

 「テメェ! こんなとこにいやがったんか! 」

 「ッ! やぁ、昨日ぶりだね? そんなに慌ててどうしたんだい? 」

 相変わらずの王子様口調。

 「どうしたもこうしたもねぇよ、あたしはただなぁ・・・」

 啖呵を切った不良少女だったが、次に続く言葉が出てこない。その顔には、ただ単に呼吸が乱れている以外の理由がうかがい知れる。

 そうして、荒い息遣いだけが聞こえる沈黙が二人を包む。

 そんな沈黙を破ろうと、意を決した不良少女が口を開く。

 「昨日は悪かっ…

 「昨日はありがとう」

 不良少女の言葉にかぶせるように、王子は感謝の意を伝えた。

 「はぁ? ありがとうだぁ? 」

 いきなり感謝された不良少女は、戸惑うばかり。
 そう戸惑う不良少女を無視して、王子は言葉を続けていく。

 「昨日君が言った言葉の意味を、僕は一晩中考えたんだ。そして、一つの見解に達したよ」

 「そう、僕が僕自身なんだとね」

 「・・・はい? 」

 素っ頓狂な言葉に、呆気にとられる不良少女。

 「いや、この思いを言葉にするのは難しいね。でも、自分がどうすべきかは分かったよ。王子様にしてもらうんじゃなくて、なるんだとね」

 「僕は、さっき、みんなの王子様をやめるって伝えたんだ」

 「その結果は見た通りだ。誰も周りからいなくなってしまったよ」

 ハハッと、笑う元王子の声のトーンは低い。

 「でも、これが本当の僕なんだ。みんなに着飾ってもらっていたものを全部無くしたら、何も残らなかった」

 だけど、と言葉を紡ぐ元王子様

 「これでいいんだ、これで。だって、おかげでようやく素の自分に出会うことが出来たんだから。」

 「今感じている心の軽さは、君のおかげだ。ありがとう」

 重ねて感謝を伝える元王子。その目には昨日には無かった力強さが伺える。

 「・・・それでテメェは、幸せなんか? 周りに誰も居なくなってんのに、それでも前よりも幸せだって、言えんのかよ! 」

 吹っ切れたように話す元王子に噛み付くように、そしてただ、吐き捨てるように不良少女は言う。

 「うーん、幸せかどうかは分からないな。なにせ昨日の今日だからね」

 不良少女の剣幕を意に介さず、元王子はさらさらと話していく。

 「でも、やっぱり僕は幸せ者なんじゃないかな? だって、僕を心配して泣いてくれる女の子が目の前にいるからね」

 「う、うるせぇ! 泣いてねえっつの! 」

 そう言うものの、不良少女の顔に、大粒の涙が零れおちていた。

 「さあっ! 優しいお嬢さん、僕はもう大丈夫だから、次の悩める少女を救ってあげてくれっ! こんなところにいちゃいけないよ」

 不良少女の背中を押すように、元王子は声を出す。

 「ハッ、言われなくても分かってるっての。 んじゃあな」

 そう言って、教室を去る不良少女。

 「やれやれ、彼女の手前、ああは言ったものの、辛いよね、やっぱり。みんなは本当に、僕のキャラだけが好きだったのかってね・・・」

 「ダメだダメだ、こんなんじゃ! また彼女を心配させてしまうよ。さぁ、僕も帰ろうか」

 ハハハッ、と高笑いしながら、元王子も教室を出て行く。



 そしてまた、占い部と書かれた張り紙のある扉をノックする者が一人。
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