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3.夜の訪問
しおりを挟むのんびり読書をし、夜は1人食堂で夕食。
素材も味もいいけど、1人で食べるのは味気ない。
それがあと2年続くと思うと、何となく切ない。
せめてヘルベルト様と軽口を叩ける位には親しくなれたら楽しいだろうに。
まぁ、先のことは分からないので、期待もしない。
夜はワインでもいただこうかしら。
「カリーナ、お部屋にワインを持って来ていただけるかしら?ちょっと飲みたい気分なの。湯浴みは1人で大丈夫だから、ワインは置いといてくださる?」
「承知しました。」
「ありがとう。」
お風呂上がりのワイン。
よく分からない名前だけど、美味しい。
さすが公爵家。
高いワインなのかしら。
鼻歌を歌いながら、ついでに持参した裁縫箱を引っ張り出し、ハンカチに刺繍をしていたら、ドアがノックされた。
「はい?」
「ヘルベルトだ。少し話がある。」
「あ、どうぞ。こんな格好で申し訳ございません。」
質素なナイトドレスが恥ずかしい。
しかし、何だろう?夜に女性の部屋を訪ねるなんて。
ラフな格好に着替えたということは、今夜のお仕事は終わったらしい。
美しい金髪も少し濡れて乱れているので、湯浴みのあとかしら?
金髪にグレーの瞳。セクシーな男だなーなんて見惚れる。
「酒が好きなのか?」
ソファの向かい側に座るヘルベルト様。
「あまり飲めないですけど、嫌いではないです。今日は引っ越し祝い的な?ワインは詳しくないのですが、美味しくいただいておりました。ヘルベルト様もお飲みになりますか?」
「そうなのか。少し貰おうか。」
喉が渇いていたのか一気飲み。
視線はおかわりをねだっているように見える。
「あとは手酌で、ご自分のペースでどうぞ。」
少しじゃないじゃん。
「分かった。ふふっ、君らしい対応だ。あ、ここに来たのは、カリーナに温室のことを聞かれたからだ。婚約者だから好きに見て回って構わない。この敷地内は、盗みとケガさえしなければ何をしても構わない。」
「盗みって…それは無いです。こちらに居る間は自分の評判を下げることは一切しません。だって2年後は20歳ですよ?公爵家に婚約破棄されたキズモノなのに、更に盗みだなんて悪評が付いたら、益々結婚なんて出来なくなりますから。寧ろ品行方正なイメージで、次の相手がすぐ見つかれば、位に考えていますけど?」
「そうか。それは失礼した。君はこの後のことを見据えているんだな…」
ワインを飲むペース、上がってる。
「当たり前です。先日もお話しましたが、親も弟もポンコツなので…はぁ…溜め息しか出ません。」
この2年も不安だらけだわ。
「そう言いつつ、家族思いなんだな。」
初めて微笑んだ。やっぱりイケメン。
「ダメな子ほど可愛いんですよ…ところで、髪が濡れてますけど、拭きましょうか。」
立ち上がってタオルを手に取り、了承も得ずに後ろから拭き出す。
「えっ?ちょっ、やめっ…」
慌てるヘルベルト様。
振り返って、私と向き合う感じになる。
「大人しくしててください。風邪を引いたら大変です。」
酔っ払いは無敵なのだ。
「君はこういったことに慣れているのか?男の髪を拭くとか…」
ヘルベルト様の耳が赤い。
「弟が居ますからね。15歳にもなるのに甘えん坊で、慣れるどころか、しょっちゅうです。でも、人に頭を触られるって気持ち良くないですか?嫌いな人だったら絶対に嫌だけど、そうでない人だと寧ろウトウトしちゃったり。」
「そうでない人かぁ…悪くないな。君も拭いてあげよう。」
タオルを引ったくられ、ソファに向き合って座らされる。
「君の髪は綺麗な金髪だな。手入れが行き届いてる感じがする。こうして近くで見ると肌も綺麗だ。」
「髪も肌も特にお手入れしてません。母譲りかもしれません。高いお手入れ用品も要らないし、安上がりな女なんですよ。」
にっこり笑ってみる。
「君の薄茶の瞳も綺麗だ。光の加減で金色に見えるのだな。」
両手で頬を挟んで、じっと見つめて来る。
「ヘルベルト様?ちょっと近…」
「マリアベル…」
キスで唇を塞がれる。
「ん、んんんっ。」
どんどん深くなっていくキスと、頭と背中を押さえ付ける力強い手。
動けない。
なんでこんなことに?!
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