【完結】 仮面で隠していた傷痕を撫でたら愛が溢れてきた大公様 〜普通じゃなかったらしい私の中の普通〜

２８．取り合い

お茶会から七日後。
すっかり火傷の痛みも治まり、普通に日常生活を過ごせるようになった。
テオドリクスも安心したようで、ベッタリ付きっきりの状態は、やっと解消した。
それまでは、食事も湯浴みも身支度も、全てテオドリクスが手伝ってくれていた。

そしてリリアナは、テオドリクスが私に張り付いていたので、専属侍女はしばらく休業状態だったらしい。
今日は久しぶりに身支度を手伝ってもらっているが、何だか嬉しそうでもあり、不満げでもある。

「もう、奥様聞いてくださいよ！閣下に私の仕事、全部取られて寂しかったんですよ？いくら奥様を愛してるからって、これは酷くないですか！？久々に馬に草あげましたよ！奥様のお世話は、私の大切なお仕事なのにーーー！！」

「あははは、リリアナったら！」

ぷりぷり怒るリリアナが可愛くて、私は大笑いしてしまう。
テオドリクスと取り合いなんて、勝てるわけないけど、こんなふうに思ってもらえるのは嬉しい。

「閣下はそういう方だから。私には甘過ぎるけど、定常運転よ？ふふ。」

「いゃいゃ、前はそんな方じゃなかったのを奥様が変えちゃったんですよ？もうビックリですよ？別人級！誰っ！？って感じですよ。」

「まぁ、そんな閣下に慣れてくれたら嬉しいわ。」

「分かりました！でも、邸内の皆はとても喜んでるんです。閣下に、やっと幸せがやって来たって。あ、この前のお茶会も閣下と奥様の仲が良くて、招待客の皆さんもほっこりしてましたよ！」

お茶会の招待客は、意外な反応だ。
てっきり、気の強い嫁の尻に敷かれた大公と、言われているかと思ってた。

「そうなの？カトリンを煽っちゃったから、私の評判は良くないんじゃない？」

リリアナは首をブンブン振って否定した。

「カトリン様は、元々あまり評判が宜しくない方なので、寧ろ奥様は、よくあの程度で我慢したなぁと。火傷までさせられて、お可哀想って話になってますよ！」

「あらまぁ…そうなのね…」

「そこからの閣下のブチ切れ具合が最高！ってなってますよ。奥様をお姫様抱っこして、颯爽とお邸に戻った後ろ姿が、もう閣下の溺愛っぷりが凄いって！仲の良さが広まりましたね！」

「は、は、恥ずかしい…」

嬉しいような恥ずかしいような、複雑な気持ちでいっぱいだ。
テオドリクスに少し控えてもらおうか。

「照れないでください。巷では『大公妃に手を出す奴は死罪』と言われてますから！！」

「やめて！死罪はない！！ていうか、外を歩けないじゃない！？」

「大丈夫、大丈夫！これで、奥様の安全は護られますから！！」

リリアナは笑って部屋を出て行った。