【完結】 初恋を終わらせたら、何故か攫われて溺愛されました

紬あおい

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60.我が家

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首都から帰宅したら、北部は一面の銀世界だった。
陛下の馬車じゃなかったら、春まで帰って来られなかったかもしれない。

たくさんの支援物資も届いて、領地民に配給したり、備蓄を倉庫に入れたり。
やっとゆっくり休めたのは、帰宅して三日後だった。

「サラ、軍馬なら散策出来るから、近場でいいなら行くか?」

「行きます!」

もちろん即答だ。
ヴィルの体温を背中に感じて、ゆっくり走り出す。

雪に覆われた山々や草原。
真っ白な世界、澄んだ空気。
厳しい冬と言われるけど、私は初めての雪景色にココロオドル。

「この景色を、綺麗だと思って見たのは初めてだ。」

「それだけ余裕も無く、孤独で、あたたかさに飢えていたのかもしれませんね…」

「人の温もりなんて、幼い時以来、感じたことがなかったな。別に特別酷い親でもないし。でも次男だからかな。長男より優遇されないし、そのうち期待もしなくなる。俺は意地っ張りなのか、寂しいとも思わなかったし。」

「寂しくないわけはないと…だって、今はすぐ寂しがるし。ふふ。」

「受け止めて返してくれないと、何もしなくなるんだろう。サラはいつも応えてくれるし。それ以上のものをくれる。だから、つい…はははっ。」

「私達の子どもには、たくさんの愛で応えてあげましょうね。」

「もちろんだ。可愛いに決まってる。」

この雪景色を『綺麗だ』と感じる豊かな心でいたい。
もう二度とヴィルを孤独にしない。
私も、何れ出会う子ども達も。
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