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12.煽る人
しおりを挟む翌日、セドリックの着替えを準備し、身支度を整える手伝いをし、朝食も一緒に取った。
レオン陛下に関わる前の、今までと変わらない朝のようにセドリックは接してきた。
一緒に馬車に乗り、皇宮に着くとセドリックは言った。
「しばらくは、ここに常駐する。ノエル、気を付けるんだぞ………」
最後に「陛下に」と聞こえた気がしたが、聞き返す間もなく、セドリックは持ち場へと行ってしまった。
私は迎えに出て来てくれたヘリオスと共に、レオン陛下の元へ向かった。
「今日は使節団との会議があるので、俺の隣で出席してくれ。販売ルートの新たな経路を検討するんだ。国有地が該当する箇所があるのと関税の話で、俺とも話が必要らしい。当たり前だが、会議の内容については守秘義務があるから、まだセドリックにも話さないように。決定すれば、クリフト伯爵から話があるだろう。」
「はい、承知致しました。」
「ミレイユは、キースハルトと一緒に、ファーガソン侯爵やクリフト伯爵と合流して、サファイヤとダイヤモンドの採掘場と加工職人達を見学に行った。そちらの通訳は、クリフト伯爵が担当してくれる。」
「お父様が同行するなら、きっと私よりも安心ですね。」
「そんなに謙遜するな。伯爵家でも勉強していたと、セドリックから聞いている。期待しているよ。」
微笑んだレオン陛下に、ちょっとドキッとしつつ、私はこの役割をきちんと果たしたいと思った。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
会議は夕方まで掛かり、使節団が退室した時は、流石にレオン陛下は疲れていたようだ。
その後、応接室に移動し、お茶を飲むことにした。
「ふわぁーっ、疲れた!ノエルもご苦労だった。スムーズに進行したのは、ノエルのおかげだな。ありがとう。」
「いえ、たいしてお役に立ってないような…?陛下、通訳無くても大丈夫じゃないですか。」
「まあ、何とか聞き取れたけど、こちらの意向がちゃんと伝わったのはノエルがいたからだぞ?助かったよ。」
「ありがとうございます。初めてまともに陛下と話している気がします。ふふ。」
「おい、不敬だな。全く…可愛い奴め。」
「…っ!?……また、揶揄って…」
レオン陛下と笑い合っているところに、セドリックが入ってきた。
「陛下、失礼します。晩餐は出席なさいますか?」
「今夜はやめておく。ノエルと夕食にするから。」
レオン陛下は、セドリックの目を真っ直ぐに見つめて言った。
「承知しました。」
セドリックは、そのまま応接室を出て行ったが、その顔は無表情だった。
「陛下、夕食のお約束はしていませんが?」
「まあ、いいじゃないか。俺だって、たまにはのんびり食事を楽しみたいのだから、付き合えよ。」
「分かりました。」
私は腑に落ちない気分だったが、空腹には勝てなかった。
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