【完結】 私の全てを狂わせた暴君

紬あおい

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14.在るべき姿

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口付けを交わしてから、レオン陛下は人目がある場所では揶揄ってこなくなった。
その代わり、二人で夕食を取りたがるようになった。
だからと言って、口付けより先に進むことはなく、一定の距離を保っている。

私は正直、自分の気持ちが分からなくなっていた。
初恋の人であるセドリックを夫とし、皇帝であるレオン陛下と親密になり、自分がどうしたいのか、酷く混乱した。

『女は、想うより想われた方が幸せよ』
昔、お母様が言っていた言葉が頭の中をぐるぐる回る。

そんな時、時間が空いたので皇宮の庭園をレオン陛下と散歩していたら、セドリックとクラリスを見つけた。
あちらも時間が空いたのか、四阿で話している。

レオン陛下は、私の腕を掴み、四阿近くの木の陰に連れて行った。

「ちょっと、陛下!」

小さな声で話し掛けると、レオン陛下は黙れという顔をした。

「セドリック、ノエル夫人とはどう?」

クラリスはセドリックに話し掛ける。

「どう…って。政略結婚だからな。どうってことないさ。クラリスは、兄上とどうなんだ?」

「キースハルトは…ミレイユ王女に夢中みたい…」

「兄上が!?何故…」

「顔を見たら分かるわ。あなたが私を見ていた時のように、熱い眼差しをしているわ…」

「クラリス…俺は…まだ、君を…」

「セドリック…私もあなたが好きだった…でも、結婚て、それだけじゃだめでしょう?キースハルトとファーガソン侯爵家を守っていこうと思っていたのに…私、どうしたらいいか分からない…」

「クラリスっ!!」

二人がしっかりと抱き合った。
もう、この先は見たくないと思ったら、レオン陛下が私の手を引いて、反対方向に歩き出した。
しばらく歩くと、温室があり、中のベンチに座った。

「ノエル、すまない。あんな場面を見せるつもりではなかったんだ…」

「大丈夫ですよ。あれが在るべき姿なのかもしれません。」

私はレオン陛下を見つめて微笑んだ。

「そんな偽物の笑顔なんか見せなくていい。つらかったら、泣いていい。」

レオン陛下の偽物の笑顔という言葉に、セドリックが言っていた言葉が腑に落ちた。

「あぁ、私、無理して笑ってたんですね…セドリック様には『俺には張り付いたような微笑みしか見せない』って言われました。逆に、陛下には『普段見たことのない表情ばかり見せる』と…」

「それは…俺は喜んでいいのか…?」

「分かりません…」

「そうか。ノエルは、セドリックとこのまま結婚生活を続けていきたいか?」

「それも…今は分かりません…結婚した時は、セドリック様の心までは求めないけど、隣で笑っていることは許して欲しいと言いました。家の為に、後継ぎとなる子どもを産むことも。でも、今は分からない…私は…どうしたいんだろう…」

「自分の気持ちに正直になれ。まずは、そこからだ。」

レオン陛下は私を抱き締めて、大きくあたたかい手で頭を撫でた。
溢れ出した涙が止まるまで、レオン陛下の胸の中に包まれていた。
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