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30.騎士団と応援団 Side ヘリオス
しおりを挟む俺はヘリオス。
レオン陛下の最側近として働いている。
そして最近、レオン陛下の浮かれっぷりと暴君振りに、頭を悩ませている。
ノエル様に一目惚れし、想いが叶い嬉しいのは分かる。
凄く分かる。
だが、しかぁーし!!
我が皇帝とはいえ、まさか離縁させてまで一人の女性を欲しがるとは!!
執務は大事な物だけやって、あとは俺に丸投げとは!!
全く、呆れてものも言えなかった。
それでもやり遂げて、明日は結婚式だ。
ここまで来れば、めでたい、めでたい。
祝うしかないだろ、レオン。
レオンとの出会いは、レオンが八歳、俺が十二歳の時だった。
先の皇帝陛下が平民で孤児の俺を拾ってくれた。
街でたまたま会って、腹を空かせた俺を皇后様直営の施設に入れてくれて、読み書きから剣まで、そこで教わった。
「ヘリオス、私の騎士団に入らないか?」
そう聞かれた時は冗談だと思った。
平民だぞ?親の顔も知らない孤児だぞ?
そんな俺が騎士団だと?
何度も聞き返して本当だと言われた日、俺は皇帝陛下と皇后様に忠誠を誓った。
毎日が充実していて楽しかったし、寝食を保障されるのはありがたかった。
しかし、そんな優しいお二人が毒殺された。
可愛がり、信頼していた実の弟にだ。
俺ですら怒りで震えた。
泣きたい気持ちを堪えてレオンを見に行くと、お二人の寝室だった部屋の隅で蹲っていた。
その日のレオンは、意識を保っているのがやっとだった。
背中を丸めて泣くレオン。
親を亡くしたこいつも俺と同じかもしれないと思った。
「レオン皇太子殿下、皇帝になる時が来ました!」
やだやだと泣くレオンを張り飛ばす。
「お前がやらなきゃ誰がやるんだ!しっかりしろ、この馬鹿がっ!」
不敬罪を覚悟で叫ぶと、顔を上げたレオンの目に徐々に光が宿り、レオンはゆっくりと、でも、はっきりと言った。
「ヘリオス、背中を任せていいか?俺は目の前の敵だけ倒す。」
レオンと俺には騎士団の仲間がいた。
「背中はヘリオス任せろ!右も左も俺達がいる。皆、レオン殿下と戦う!!」
陛下と皇后様に拾われた仲間達が即座に集まり、金の騎士団は結成された。
即席騎士団だけど、皆の意志は堅く、恐怖を感じようと、決して後ろには下がらないという気持ちを胸に、怯まず戦った。
そりゃそうだ。
貴族として上品に育った暗殺者や金で雇われた無法者より、俺達の方が生きることに貪欲だし、陛下や皇后様の敵討ちはレオンだけのものではなかった。
それに、レオン殿下は剣の達人だった。
絶対に訓練では得られない、天性の素質を見せ付けられた。
無駄のない流れるような剣捌きと、躊躇うことなく仕留める覚悟。
一度だけ、一瞬の隙を突かれて、レオンは背中を酷く斬り付けられてしまったことがある。
しかし、それでもレオンの覚悟は揺るがなかった。
それは、反逆者を一掃するまで途切れることがなかった。
そんなレオン殿下は、全てをやり遂げた時、腑抜けた。
そして、皇帝の執務が回り出すと、また腑抜けた。
一日中、庭園の花を見つめる日々。
たまに街にふらりと出て、暗くなると戻ってくる。
そんな時に出会ったのがノエル様だ。
「面白い令嬢を見つけたんだ!」
赤ら顔でノエル様の話をするレオン陛下に金の騎士団だった臣下は唖然とした。
でも、皆、応援したかった。
「陛下の恋を実らせるぞ!」
誰の発案か分からないが、自然と『金の応援団』が結成された。
未だに結束は堅く、街どころか帝国のあちこちに散らばって、こっそり治安維持に駆け回る騎士団員は、レオンの初恋を耳にするや否や応援団に早替わりして、今も尚、レオン陛下に従っている。
明日、無事にレオン陛下とノエル様の結婚式が終わったら、久しぶりに皆で飲み明かそう。
実の親よりも俺達に優しくしてくれたあなた達の大事な一人息子は、立派になって結婚しますよ!って叫びたくなりそうだ。
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