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36.裏切り
しおりを挟む「ノエル皇后陛下、ヘリオスです。レオン陛下の言い付けでお迎えに上がりました。」
ヘリオスならと一瞬開けようとして、私はレオン陛下の言葉を思い出した。
「俺以外の人間はダメ」
すると、ヘリオスは別の部屋のドアをノックして、同じように声を掛けたり、ドアを開けて中を確認している。
どうやら私を探して、いろんな部屋を見て回っているらしい。
ヘリオスが三つ目の部屋をノックした時、レオン陛下の声がした。
「ヘリオス、これはどういうことだ?何故、離宮に刺客がいるんだ?」
「陛下、こ、これは…」
「言い訳はいい。お前が首謀者か?それとも事情があるのか?」
「…………」
「言えないのか。お前は今、ノエルを探していたよな?ノエルを連れ去るつもりだったのか?」
「…………」
「他の奴らと同じように、ここで死にたいようだな。」
「陛下、申し訳ありません…今朝、スザンナを人質に取られました…ノエル皇后陛下を連れて行けば、スザンナは返すと…」
「スザンナとは、お前の恋人か…首謀者は誰だ?外に待たせている馬車の者以外、刺客として送り込まれた奴らは、皆仕留めた。だから、正直に言え。」
「リーガン侯爵とザカリー皇弟の息子のアレクシスです…」
「ああ、あれか。大方、自分の娘のミシェルが皇后になれなかったことや、ミレイユ王女が来た時に、何の声も掛からなかったことを根に持っていたんだろう。クリフト家の陞爵も気に食わなかった筈だ。アレクシスはあの時、幼いからと生かしてやったのが仇となったか…皇弟と同じように処分しておけば良かったな…」
「ノエル皇后陛下を人質にして陛下を暗殺し、アレクシスを皇帝にする計画だったようです。申し訳ありません…」
「ヘリオス、お前はどうしたい?ここで俺を斬るのか?力づくでノエルを攫うのか?それとも、俺に従うか?」
「陛下に従います…従わせてください…」
「では、今から大至急、内密に金の騎士団を招集しろ。その後、ノエルの格好させた人形を馬車に乗せて、リーガン侯爵やアレクシスが指示した場所に向かえ。そこで仕留める。スザンナを救出してから、お前の処罰は考える。もちろん、今から裏切った時点でお前の命はないし、スザンナも助からない。出来る出来ないで迷っている暇はない。心して動け!」
「御意!」
ヘリオスが走り去ると、レオン陛下は私に声を掛けた。
「俺だ、開けていいぞ!」
血塗れのレオン陛下に、私は涙が溢れる。
「レオン、怪我したの…?」
「いや、返り血だ。俺は怪我なんかしてないさ。ただ、抱き締められないのが残念だがな。」
「今から行くの?」
「ああ、ノエルをクリフト家に預けたら、ちょっと片付けてくる。大丈夫だ。無事に帰って来ると約束する。」
「分かりました。どうか、ご無事で。」
血塗れのレオン陛下を、私は力一杯抱き締めた。
その後、レオン陛下は馬で私を実家に送り届け、そのまま金の騎士団と合流していった。
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