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5.台風一過
しおりを挟むクリストファー殿下が帰り、私と父はへなへなとソファに座り直した。
「リーチェ…何だったんだ、今のは…」
「さあ…私にも、何が何だか…?」
私も父も、クリストファー殿下がここに居たことすら夢のようだ。
黒上黒眼の地味な親子の目の前に、黒髪赤眼のイケメン皇子。
色合いは似ていても、月とスッポン、天地の差、雲泥万里、あと似た言葉ある?って位にクリストファー殿下は美しい。
そんなクリストファー殿下が入り婿とは、天変地異が起こりそうだ。
「まあ、無事にテオナルド・チカプリオン伯爵令息との婚約破棄は出来そうだが、殿下はどうしたもんかのう…」
「お父様、一気に十歳は老けたみたいよ?その喋り方はやめて?」
他人事のように呑気に話したら、父に怒られた。
「誰の所為だと思っているのだ、この阿呆め!皇子殿下と他人の情事を目撃した令嬢など、聞いたことないわっ!!」
「だって、あの時、クリストファー殿下しか周りに居なかったんですもの…でも、テオナルド様が絶対に言い逃れ出来ない証人を捕まえたじゃないですか。」
「それはそうだが…ああ、頭が痛い…」
「婚約破棄は確定だから、お父様、ちゃんと書類の方お願いしますね?」
「分かった。ちょっと見目がいいからと、私がうっかりテオナルドを選んでしまった所為で、リーチェには嫌な思いをさせて、すまんかった…しかし、このことをエリザベスに何と伝えればいいのだ?」
母のエリザベスは、友人と旅行中で、明日帰宅予定なのだ。
今日この場に居たら、父よりもパニックになったかもしれない。
「お母様には、私から話しますわ。きっとテオナルド様よりクリストファー殿下のお顔の方がお母様好みよ?結婚したら、の話だけど。」
「そこだよ!殿下は本気なんだろうか…明日になったら、冗談でしたーって言われそうだぞ?」
「それならそれで仕方ないじゃない。私が一番不思議に思ってるんだもの。今は、不実なテオナルドと結婚しないで済んだから、取り敢えず良しとしましょう?」
「ああ、そうだな。もう頭が働かん。リーチェも、今夜はゆっくりお休み。」
「お父様もね!」
はぁという父の大きな溜め息を背に、私は私室に向かった。
(考えても仕方ないし、湯浴みして、寝ようっと!)
飽く迄もお気楽な私であった。
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