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7.父と殿下の想い
しおりを挟む私と父のディーゼル、クリストファー殿下と母のエリザベス、茫然自失と浮かれぽんち。
二組の真逆の精神状態が集う応接間。
一旦落ち着こうと父が言い、ソファに移動し、四人でお茶にすることにした。
こんな時でも、我が家の最高級のアールグレイは美味しい。
父もそう思ったのか、顔付きがまともに戻っている。
そして、父が難しい顔で口を開く。
「殿下、本当にリーチェをお望みでしょうか。こんな阿呆な娘ではありますが、私にとっては命よりも大事な大事な娘です。もし!もしも、殿下のお戯れでしたら、このお話はヴァーミリアン侯爵家の存続を賭けてでも阻止致します。」
父は、真っ青な真顔でクリストファー殿下を見つめた。
母のエリザベスは、父の顔を見て、先程までのおちゃらけた態度を改め、姿勢を正す。
その様子に、クリストファー殿下もきりりとした顔付きで答える。
「ヴァーミリアン侯爵、私は真面目にリーチェ嬢を妻にする気持ちで動いたのだ。あの勇敢で無茶苦茶な姿に惚れたのだ!それだけではない。凛とした横顔は美しく、慌てるとぽかんと開くふっくらした唇。愛らしくて、ちょっと間抜けだ。それに体は小さいが可愛くて、話すと妙に頓珍漢なところも好ましく思う!」
凛々しく言い放つが、褒め言葉と貶し言葉が交互に鬩ぎ合っているのは気の所為ではない。
「えっと、殿下…?褒めるか貶すか、どちらかにしていただけます?」
クリストファー殿下は、心底驚いて、私を振り返る。
「全て褒め言葉だが!?」
「えっ…無茶苦茶とか頓珍漢も…?」
「もちろんだ!そこが可愛いのだよ。」
そこで、父は吹いた。
「あははは、この阿呆な娘に、ずけずけものを言う殿下!この出逢いから短期間で、リーチェの特徴を見抜いていらっしゃる。悪くない組み合わせですな。」
「お父様!?」
「先程、ヴァーミリアン侯爵家の存続を賭けてでも阻止するとは言ったが、これは皇命だ。普通なら抗うことすら許されない。しかし、私は既にテオナルドで、一度失敗した。家のことは考えなくてよい。今後は、リーチェの気持ちを無視した結婚など望まない。愛し愛され幸せになってくれたらいい。だから、リーチェ、お前の意思を尊重する。」
父の視線は私を射るように鋭い。
しかし、そこには娘への愛情と信頼が込められていることを私は知っている。
「覚悟も何も、たまたま手を掴んだお方が殿下で、しかも夫って!?テオナルド様への断罪も済んでませんのよ?それが終わらないと…私は一歩も踏み出せません!」
そうなのだ、まだ断罪も残っている。
無実の罪を着せられ、社交の場で肩身の狭い思いをした日々。
恨み晴らさずおくものか。
私は腸が煮え繰り返る気持ちを思い出した。
1,000
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