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8.似ている二人
私が一人、ぐつぐつ煮え立っていると、クリストファー殿下は不思議そうな顔をした。
「リーチェは、慰謝料だけでは不足か?チカプリオン伯爵家からの慰謝料とは別に、テオナルドとかいう奴の私財を取り上げて、奴はすっからかんにするのだが?」
「へっ!?私財?あいつ、私財なんて持ってないでしょう?」
「いや、唯一、奴名義の牧場を持っていた。奴は、その価値に気付いていないから、使用人をただ同然の安い賃金でこき使い、あとは放置しているようだ。しかし、その使用人達は善良な人間で、良い馬や羊を育て、きちんと管理していた。私は、その牧場と使用人達を丸ごと慰謝料として貰えばいいと思う。そして、近くには美しい湖があるから、別荘を建ててもいいな。」
「…すると、その牧場経営を…?」
「先行投資は必要だが、商売として成り立つと思うんだ。」
「そんなに…いつの間に調査されたのですか?」
「私はこれでも皇族だからね。急げと言えば、直ぐに報告が上がるさ。いくらヴァーミリアン侯爵家の財力が帝国屈指の家でも、いつ何があるか分からない。妻に金の苦労をさせない為の手駒は、いくつあってもいいだろう?それに、リーチェと結婚したら、私も領地を管理する立場になる。善良な者達は、大切にしていきたいのさ。」
調べた側近は、今頃げっそりとしているだろうと想像したが、クリストファー殿下の考え方には共感出来る。
父の手腕を指南してもらえるならば、牧場経営は直ぐに軌道に乗せられる筈だ。
「まあ!殿下のお考えは、お父様と似ているわね。リーチェ、そう思わない?」
「そうね、似ているかも。」
ヴァーミリアン侯爵家の邸は、父が愛する母の為にせっせと事業を拡大し、贅の限りを尽くした邸と思われている。
しかし、邸だけでなく、衣食住全てにおいて、父はお金を稼いでは使うことを実践し続ける。
別に贅沢を好んでいる訳ではない母は、最初不思議に思ったそうだが、経済を回すことが低層階級を守ることでもあると父は考えていた。
財産とは、お金や宝石だけでなく、人も、なのだ。
いつも家ではほわんとしていて、懸命な姿は見せないくせに、家族や自分が守らなければならない人々に苦労させたくないという、不器用で愛らしい父の信念なのよと、母が笑って話してくれたことがある。
父は、母の二人が似ているという言葉を聞いて、嬉しそうに頬を赤らめながらも、威厳を保とうと必死に表情を作っている。
(お父様ったら、殿下を気に入ったみたいね。)
「リーチェ、ここまで殿下がしてくれたのだ。後は、正式な婚約破棄の書類にサインするだけだ。チカプリオンと会うのも最後だな。無実の罪も払そう。」
「分かりました。けっちょんけちょんに断罪して差し上げますわ!」
「あははは、我が妻はやはり勇ましいな。是非同席させてもらおう。」
元婚約者との破棄の場に、既に陛下承認された夫が同席するという前代未聞の話し合いとなる。
(結婚云々よりも、あいつらを先に片付けなきゃ!)
私は、やる気満々でその日を迎えるのだ。
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