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37.ナディエのお茶会 ①
しおりを挟むナディエのお茶会の日、私は母のエリザベスに相談し、人妻らしいドレスを選んだ。
母曰く、シンプルでスタイリッシュなドレスということだが、私にはさっぱり分からない。
淡いブルーのドレスに、クリストファーの瞳の色に似たルビーのネックレスを付けた姿は、背の低い私でもまあまあイケてると、思いたい。
「リーチェ、綺麗だよ。ああー、外に出したくない!行くのやめない?」
「またそんなことばかり言って!今日行かなくても、また招待状が来たら面倒じゃないですか。」
既に客間に住んでいるクリストファーは、相変わらず大絶賛だが、誉め殺しキャラなので、あまり当てにならないのが残念だ。
「しつこく誘ってきたら殺る?」
「ちょっ、物騒なこと言わないでーーー!大丈夫だから、たぶん…取り敢えず、行ってきます。」
「送って行く。」
「大丈夫よ?」
「駄目だ。」
「では、お願いします…」
頑固なクリストファーに私も折れるしかない。
「でも…」
「でも?」
「クリストファー様のお衣装、何気に色味が似ているのは…気の所為…?まさか、お茶会に乱入するおつもりでは…!?」
「それこそ気の所為だよ。さあ、行こう。」
新たな不安を抱えつつ、私はアランカス公爵邸へと向かった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「お招きいただきまして、ありがとうございます。」
「ようこそおいでくださいました、リーチェ様。」
馬車を降り、案内された庭園に向かうと、ナディエ・アランカス公爵令嬢が一人で待っていた。
「今日は二人きりでお話がしたかったの。」
上品な佇まいのナディエは、私に座るよう勧めた。
「お話とは、夫のことでしょうか?」
「夫…そうね、クリストファー様のことです。」
お淑やかを絵に描いたようなナディエの表情が一変した。
「どうしてですの!?あなたみたいなちんちくりんが、どうしてクリストファー様と結婚出来たのよ?どんな手を使ったの!?」
(あちゃー、本性丸出しかー!)
「どんな手を、と言われましても………この手?」
私は、あの日クリストファーの手を掴んだ右手をほらほらと見せた。
「ふざけないでっっっ!」
「ふざけてませーーーん!」
にこやかに答えると、ナディエが更に白熱する。
「何なのよ、人の目の前で手をひらひらして!私を馬鹿にしているの!?」
「いえ、事実ですから。婚約破棄の証人になっていただこうとして、その辺にいた令息の手を掴んで引っ張って行ったら、クリストファー第三皇子殿下だったというだけです。その時の私を気に入ってくださって、今に至るのです。」
ナディエは、真っ白な顔で呆然とした。
目には薄らと涙を浮かべている。
「私は…そんな阿呆みたいな人に負けたの…?」
(ここでも私は阿呆なのか!?取り敢えず、涙が止まるまで黙っとこ!!)
目の前のガレットを頬張りながら、私はナディエが落ち着くのを待った。
(うんまっ!これ、美味し過ぎる!!)
そろそろお菓子のトレイが空になりそうな時、ナディエは泣き止んだ。
「あなた、よくこんな時にむしゃむしゃ食べられるわね!?」
腹が立ったのか、トレイで私を殴ろうとした準備、あの人は現れた。
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