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5.元婚約者の妹
いよいよ結婚式当日となった。
ヴェルハルトの過去の事情や想いとは別に、公爵令息の結婚ということで、結局は豪華な結婚式と披露宴となってしまった。
招待客もかなりの人数だ。
その中に、亡くなったクレアの妹のマリア・センティ公爵令嬢もいた。
結婚式の直前、親族の控え室にマリアが訪れて来た。
「少しだけお時間宜しいでしょうか?」
父のライアン・リンデルン侯爵、母のノエル、兄のクリフォードは、何事かと驚いた。
もちろん私もだが、マリアの真剣な顔付きに承諾するしかなかったので、家族には一旦部屋を出てもらった。
「センティ公爵令嬢様、お話とは何でしょうか?」
「ヴェルハルト様のことです。皇命で仕方なくご結婚されるようですので、何れ離縁されるのでしょう?その後は、私に返してください。」
どうやらマリアはヴェルハルトを想っているらしい。
噂で聞いた姉のクレアによく似た容姿だなと思った。
「返す返さないというお話ではないと思います。一番大切なのは、ヴェルハルト様のお気持ちです。」
「そんなの分かっています。ヴェルハルト様はきっと私を選びたかった筈です。姉にそっくりですから!私でもいい筈です!!」
私は呆れてしまった。
見た目がそっくりであれば、受け入れてもらえるという考え方に。
「似て非なる者という言葉があります。ヴェルハルト様にとってセンティ公爵令嬢様は、正にそれなのでは?」
「そんなことありません!私ならきっとヴェルハルト様を悲しみから救えます!」
「では、センティ公爵令嬢様は二年間、何をしていらしたの?ヴェルハルト様と向き合ってこられましたか?私と初めてちゃんと話した時のヴェルハルト様は、お顔の色も悪く、瞳は燻んでいました。でも、今は半年前よりも良くなってきています。」
「そ、それは…会っていただけなくて…」
「それがヴェルハルト様の答えだとはお考えにならないのでしょうか。せっかくいらしてくださったのに申し訳ありませんが、お引き取りください。今日は私にもヴェルハルト様にも大切な日ですので。」
マリアは俯いて、無言のまま控え室を出て行った。
きつく言い過ぎたかもしれないが、私は後悔しない。
ヴェルハルトと白い結婚をする気は毛頭なく、私達は幸せになる為に結婚するのだと、この瞬間、改めて心に誓った。
マリアが出て行ったのを確認したのか、父と母と兄が入ってきた。
皆、私の顔見て、何となく安心している。
「追い返したようだな。今後、何か言ってきたら、相談しなさい。皆で対処しよう。さあ、ヴェルハルト殿が待っている。行こうか。」
父が笑って手を差し出すと、母も兄も笑った。
これが家族だと思う。
誰か困っていたら、手を差し伸べる。
顔を見ただけで、大体の心境は察することが出来る。
親愛と信頼を積み重ねてきた証。
私はこの家族の一員で良かった。
そして、ヴェルハルトとも家族になっていくのだ。
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