【完結】 兄上にヒトカケラの想いも残さぬよう俺が愛してやると言われて溺愛されています

紬あおい

文字の大きさ
35 / 35

【外伝】バトラーの想い

しおりを挟む

気付けば、レオリス様に仕えて五年。
護衛として、いろんな経験をした。
そして、今はマジェスティ侯爵となったレオリス様の邸の敷地内に家を持たせてもらい、男爵という爵位を授けていただいた。
治める領地がない代わりに、俺はレオリス様の傍にいられることになった。

妻のライサとは、レオリス様が視察の際に必ず行く市場の食堂で出会った。
そこの女主人エルザの娘がライサだ。
平民にしては、品のある器量好しで、気さくな女だった。

俺やマーティン、サミュエルに近付いて来る女は、大抵レオリス様目当てなので、ライサもその一人だとずっと思っていた。

しかし、奥様が妊娠し、エルザが市場の食堂を離れて、奥様に付きっきりになった為、ライサが食堂を切り盛りすることになった。

護衛の任務が休みの時に、一人でふらっと立ち寄ると、ライサは見事に食堂を仕切っていた。
手際が良く、接客も卒なくこなしている姿に心が揺さぶられた。

だが、俺は侯爵家の汚れ役だ。
単なる護衛だけでなく、レオリス様や奥様に危害を加えた者を粛清するのも俺の役目だと思っている。
とても普通の結婚など出来る訳はない。
だから、俺はライサに感じる気持ちを封印した。

しかし、ある日、他所から来たと思われる子爵にライサが絡まれた。
最初はライサも笑顔で遇らっていたが、体に触るなど、だんだんと容認出来ない位に絡み出した。

俺は立ち上がり、そいつの腕を捻り上げた。
何をするんだと騒ぐ子爵の腹を殴って気絶させ、その辺にあった縄で縛り上げて、そいつの従者の馬車に放り込んだ。

「お前の主人、次ここに来たら斬る。」

「すまない。酒癖が悪くて、首都の店は出入り禁止なんだ。でも、ここにはもう来ないから見逃してくれ。」

従者は怯えながらそう言うと、馬車で走り去った。

そんなことがあってから、俺は非番の日に、勝手に用心棒気取りで、店で飲んでいた。
ライサは、そんな俺に感謝して、つまみを一品余計に振る舞ってくれた。
俺は、それだけで充分満足していた。

そんな俺とライサの関係が変わったのは、雨のせいだった。
いつものように非番で店で飲んでいたら、帰る時に大雨が降ったのだ。
店の客は俺で最後で、しばらく雨宿りさせてもらったが、一向に止む気配がない。

「バトラー様、宜しければ店の奥に休憩出来る部屋がありますから、今夜はそこでお休みになりませんか?」

ライサに言われ、ありがたく休ませてもらうことにした。
そして、ライサは酒とつまみを振る舞ってくれた。

「バトラー様は恋人とかいらっしゃいますの?」

急に聞かれて咽せた俺の背中をライサが摩った。
その時、酔った勢いもあり、俺はライサを抱き締めてしまった。

「恋人なんかいない。俺の仕事柄、大切な人は作れない…」

やってることと言ってることが真逆で、俺はすぐにライサから離れた。

「バトラー様をお慕いしております。」

不意にライサに言われ、驚いて顔を見ると、真っ直ぐな瞳に吸い込まれそうだった。

「バトラー様のお仕事は、侯爵様と奥様を守ることですよね。それがどんなお仕事の内容でも、私はバトラー様のことが好きです。私ではダメでしょうか…?」

潤んだ瞳のライサに欲情が抑えきれず、俺はライサの唇を奪った。
それは、ふっくらとして甘い唇だった。
舌を入れるとライサはそっと絡めてくるが、不慣れな感じがまた俺を昂らせる。

「ライサ…抱いていいか…?」

「はい。初めてですが、バトラー様なら後悔はしません。」

俺は箍が外れたように、夢中でライサを裸にし、体を貪った。
女を知らない訳ではないが、ライサの純潔を奪うことに興奮し、その狭さと締め付けに一度目はすぐに果てた。
しかし、それで終わる訳もなく、朝までライサを抱き潰した。

それからは、非番の度に食堂に行き、夜はライサと過ごすようになった。
それでもライサは、俺に結婚をせがむことはせず、ただ恋人として傍にいてくれた。

そんな俺を叱ってくれたのはレオリス様だった。

「惚れた女なら、全力で幸せにしろ!中途半端なことはするな。」

そう言って、俺を男爵にしてくれた。

「元々そのつもりだった。お前は生涯俺に仕えてくれ。」

公爵家のボンボンだと思っていた少年が、主人であり友人であり、恩人となった。
大切な人との出会いは、全てこの食堂から始まった。
不思議な縁だなと思う。

そして、俺とライサは結婚し、侯爵家の敷地内に家まで建ててもらった。
レオリス様曰く「俺が呼んだらすぐ駆けつけろ!」だそうだが、単に俺に傍にいて欲しいのだと、奥様は笑った。

平民として産まれ、親に捨てられ物心ついた時は一人だった俺。
レオリス様に出会わなければ、とっくに死んでいたかもしれない。

そんな俺が家庭を持ち、もうすぐ親となる。
こんな幸せをもたらしてくれたレオリス様に感謝を伝えたら、レオリス様は言った。

「バトラーも幸せになることが、俺への恩返しだぞ?」

ああ、この人はこういう人だった。
信じた人を信じ切るレオリス様。
その中に、俺やマーティンやサミュエルがいたことは幸運だった。

これからは、ライサも一緒に侯爵家に仕えていく。
それは、想像以上に楽しくて、やり甲斐のある日々だ。

来年には子どもも産まれる。
その子が大きくなったら、レオリス様と奥様の恋の話でもしてやろう。

愛する人を決して諦めなかったカッコいい領主様と、愛らしくも勇敢な奥様の話を。


【外伝・完】




◇ ◇ ◇ ◇ ◇



外伝まで完結しました
お読みいただき、ありがとうございました
💗☺️💗

次の連載は、2025.7.11 スタートです❣️
6時と18時の更新となります

作者をお気に入りに登録していただけますと、更新がお知らせ出来ます
よろしければ、お願い致します🤲

また、短編集や完結済みのものもご覧いただけましたら幸いです

よろしくお願い申し上げます😊

しおりを挟む
感想 4

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(4件)

rujin
2025.07.21 rujin
ネタバレ含む
2025.07.21 紬あおい

わざわざ読み直しもしていただき、ありがとうございます❣️

確かに分かりにくい感じだったので、『今はマジェスティ侯爵となったレオリス様の邸の敷地内に家を持たせてもらい』と修正しました🙌

正直、よくやらかします😣

なので、また何か気になる部分がありましたら、是非教えてくださいませ🙏

解除
はちみつレモン
ネタバレ含む
2025.07.11 紬あおい

お読みいただき、ありがとうございます❣️

いつか来ると思ってました、避妊へのツッコミ‼️🙂‍↕️
そこはファンタジーで、欲しいタイミングで授かるということで❣️
↑ どういうこと⁉️😱

お兄ちゃん夫婦にも甘かったですよねぇ
まあ、弟よりも不出来な兄が頑張って家を継いで苦労したまえー的な仕上がりとなっております🙇‍♀️

今朝からスタートした連載もお読みいただけて嬉しいです👏👏👏

ありがとうございます☺️💖

解除
ファル子
2025.07.09 ファル子
ネタバレ含む
2025.07.09 紬あおい

お読みいただき、ありがとうございます❣️
4日振りに意識が戻り、最初に見たのがリアということになっています😊
それまでのことは神のみぞ知る⁉️
でも、大腿骨折ってますから、何もないでしょう💡

解除

あなたにおすすめの小説

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

働かないつもりでしたのに、気づけば全部うまくいっていました ――自由に生きる貴族夫人と溺愛旦那様』

鷹 綾
恋愛
前世では、仕事に追われるだけの人生を送り、恋も自由も知らないまま終わった私。 だからこそ転生後に誓った―― 「今度こそ、働かずに優雅に生きる!」 と。 気づけば貴族夫人、しかも結婚相手は冷静沈着な名門貴族リチャード様。 「君は何もしなくていい。自由に過ごしてくれ」 ――理想的すぎる条件に、これは勝ち確人生だと思ったのに。 なぜか気づけば、 ・屋敷の管理を改善して使用人の待遇が激変 ・夫の仕事を手伝ったら経理改革が大成功 ・興味本位で教えた簿記と珠算が商業界に革命を起こす ・商人ギルドの顧問にまで祭り上げられる始末 「あれ? 私、働かない予定でしたよね???」 自分から出世街道を爆走するつもりはなかったはずなのに、 “やりたいことをやっていただけ”で、世界のほうが勝手に変わっていく。 一方、そんな彼女を静かに見守り続けていた夫・リチャードは、 実は昔から彼女を想い続けていた溺愛系旦那様で――。 「君が選ぶなら、私はずっとそばにいる」 働かないつもりだった貴族夫人が、 自由・仕事・愛情のすべてを“自分で選ぶ”人生に辿り着く物語。 これは、 何もしないはずだったのに、幸せだけは全部手に入れてしまった女性の物語。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました

蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。 そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。 どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。 離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない! 夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー ※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。 ※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。

【完結】失いかけた君にもう一度

暮田呉子
恋愛
偶然、振り払った手が婚約者の頬に当たってしまった。 叩くつもりはなかった。 しかし、謝ろうとした矢先、彼女は全てを捨てていなくなってしまった──。

私が嫌いなら婚約破棄したらどうなんですか?

きららののん
恋愛
優しきおっとりでマイペースな令嬢は、太陽のように熱い王太子の側にいることを幸せに思っていた。 しかし、悪役令嬢に刃のような言葉を浴びせられ、自信の無くした令嬢は……

王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る

家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。 しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。 仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。 そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。

「戻ってきてもいいぞ?」という傲慢――許せませんわ。

ちゅんりー
恋愛
隣国の第一王子・レモンの婚約者であったマーマレード・オレンジは、甘いものしか愛せない王子の心変わりと、甘ったるい声で媚びる令嬢シュガーの計略により、「可愛げのない、苦くて酸っぱい女」として婚約破棄され、国外追放を言い渡される。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。