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26.再会
ゆっくり山道を歩くと、牧場が見えてきた。
荒屋からは、かなりの距離があったのだなとファニアが考えていると、突然大きな声で名前を呼ばれた。
「ファニア!!!」
青白く痩せこけた顔のクライスが走ってきた。
「ファニア…一体今まで、どこに居たんだ…探したんだぞ…毎日、毎日…」
ファニアの足元に跪き、クライスは肩を震わせていた。
「申し訳ありません…」
「いや、謝らなくていい。俺が悪かった。」
クライスは、項垂れたままファニアに詫びた。
その背中は以前よりも小さく見えて、ファニアは悲しくなった。
「クライス様、頭を上げてください。」
「いいんじゃね?この男は反省するべきだ。」
その時、ジェラールが声を発し、クライスは驚いて顔を上げた。
「ファニア…誰…?」
「ジェラールです。山で迷子になった私と着いてきたポトちゃんの面倒を見てくださいました。」
「ファニアは…男と暮らしていたのか?」
唖然としたクライスは、段々と厳しい表情になり、握った拳を震わせていた。
「そうか、ファニア…行く宛があったから出て行ったのか?」
「ちっ、違います!ジェラールとは、そういうんじゃ…」
「ジェラール、ねぇ…親しげだな。」
クライスの瞳は怒りで血走っていた。
「おいおい、元はと言えば、ファニアがここを出る羽目になったのは、お前の所為じゃないか。
何でお前が怒ってんだ?」
「何だと!?不敬な奴だな!!」
「じゃあ、ファニアに契約婚を迫って、最愛とやらに追い出させて、今頃探しただなんだと言っているお前は、一体何様だ?お貴族様ってぇのは、そんなに偉いのか?
ファニアの後を着いて来た山羊の方が、まだマシだな。」
図星を突かれたクライスは、地面に手をついた。
そして、静かに泣き出した。
「ファニア、どうすんだ?このろくでなしの泣き虫。はははっ!」
「クライス様、お立ちください。ジェラールは、もうそんなに揶揄わないで?二人で話し合えって言ってくれたじゃない。」
「だってよ、こいつ、泣き出したぞ?その位心配するなら、最初からファニアを大事にしてやれよ!」
「す…すまない…何度か伝えようと思ってはいたのだが…タイミングが…」
「取り敢えず、ファニアは送ったからな。あとは好きにしろ!」
「ジェラール、ありがとう。」
「山羊も、元気に暮らせよ!」
「メェ~~~!!」
ジェラールは、ポトに微笑んで荒屋へと帰って行った。
ジェラールが見えなくなるまで見送るファニアとポト、未だ足元で項垂れるクライスを見ながら、ジェラールはきっと上手くいくと願うのだった。
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