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36.ポト、護衛騎士となる
黙り込むジェラールに、クライスは決意したように語り掛ける。
「ジェラール、俺はファニアが目覚めたら、公爵邸に帰るように話す。
その後、ジェラールにファニアを任せるから頼めるか?ポトも連れて行ってくれ。」
「はっ?何を!?」
「俺はファニアが傷付いている時、更に傷付けた。心の一番傷付けてはいけない所を抉ったんだ。その事実は消えない。」
「だからこそ、傍に居て挽回すべきではないのか?」
クライスは静かに後悔を口にするが、ジェラールは納得がいかない。
「ジェラールは、初めて会った日からファニアの傷ごと包んだ。
これが俺とジェラールの決定的な違いだ。
ファニアが心から笑ったり泣いたり出来るのは、俺じゃなかった。
そこに気付ける位、俺も成長したと思ってくれ。」
「そんな…子はどうするんだ!?」
「ゆっくり落ち着いた気持ちで赤子を産んで欲しいと思っている。
俺が傍に居ることでファニアの心が沈んでしまうなら、傍に居るのは俺ではない方がいいだろう。」
クライスの気持ちを理解しようとするが、ジェラールには正解は分からなかった。
「ならば、俺とポトは一時的にファニアの護衛ということにしてくれ。」
「母上、ファニアを頼むよ。俺はここでやれることをやるよ。」
「クライス…分かったわ。ジェラールの代わりに手伝える人を寄越すから、牧場は任せた。
ジェラールさん、ポトちゃん、ファニアをお願いね。」
「メェェ!」
「あ…ああ…」
そうしてポトの公爵邸行きが決定した。
ジェラールは、自分はおまけなのではないかと思うのだった。
目覚めたファニアは、クライスから話を聞き、それに素直に従うことにした。
考える時間が欲しいと言ったのはファニアだ。
クライスと離れて、もう一度自分の気持ちを見つめ直す時間が欲しいのと、落ち着いた環境で赤子を産みたいという気持ちもあった。
「お元気で。」
「ああ、ファニアもな。ジェラールとポトを護衛に付ける。」
「ポトちゃんも!?ジェラールはここの仕事をするのでは!?」
「ここは父上や母上が人を派遣してくれる。ジェラールやポトが居なくても大丈夫だろう。
寧ろジェラールやポトが居なくて寂しいのは、ファニアの方だろう?」
クライスはファニアを思い遣ったつもりだったが、また二人の気持ちはズレていた。
(クライス様は…私が居なくても平気なのね…)
「そうですね、ポトちゃんと一緒なら嬉しいですわ。ジェラールもお兄ちゃんみたいですし。
では、もう行きますね。」
ポトが走って来てファニアに寄り添う。
まるで護衛騎士ポトの誕生のように。
「ポトちゃん、よろしくね?」
「メェェ~~!」
こうして、ポトとジェラールは、ファニアやマリーナと公爵邸を目指し馬車に乗った。
ファニアを気遣い、ゆっくり進む馬車が公爵邸に着いた瞬間、クライスの父であるアルト・イグネシアス公爵と使用人達がポトを見て唖然とするのは、それから五日後の話だ。
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