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38.ほのぼのとした雰囲気の中で
帰宅後、応接間に集まった公爵夫妻、ファニア、ジェラール、ポトは、これからについて話し合うことにした。
「先ずは、ファニア、クライスの行動や失言について詫びる。申し訳なかった。」
「本当にごめんなさいね、ファニア。」
「いえ、お義父様、お義母様、私も…決意も我慢も足りず悪かったのです。」
「ファニアは悪くないわ。クライスの契約婚に付き合わされて…」
ジェラールはやり取りを見ながら、口を挟んだ。
「ファニアの体調を考えるなら、このぐだぐだはやめて、これからの話をした方が建設的では?」
「あっ、そうだったな。ジェラールくんの言う通りだ。」
「あっ、いえ、公爵様、申し訳ありません。平民の分際で、ご主人様に生意気を申し上げてしまいました。以後、改めます。私のことはジェラールとお呼びください。」
「気にすることはない。ジェラールは我が家の騎士となり、ファニアを護ることを仕事としてもらうが、同時にファニアの心も護ってもらいたい。
使用人達の手前、最低限の礼節を持ってもらえれば、建設的な意見は大歓迎だよ。
何かあれば遠慮なく言いなさい。」
「ありがとうございます。腕には多少自信はありますが、立ち居振る舞いについては、これから学んで参りたいと思います。」
アルトはジェラールの瞳に宿る決意や為人に満足していた。
同時に、ファニアが慕う理由も分かった気がした。
「ファニア、ここではゆっくり過ごしなさい。もし、何かしなければと焦る気持ちがあるならば、山羊のチーズのレシピを書き記しておくれ。
それをクライスに再現させよう。」
「ファニア発案のチーズ、私も大好物なのよ!
クライスでも再現出来るように、丁寧にレシピ集を作ってあげてちょうだいね?
でも、決して無理はしないこと!」
「はい、お義父様、お義母様。」
ファニアは、穏やかな微笑みを浮かべ、アルトとマリーナの指示に従った。
「そうそう!ジェラールとポトちゃんに騎士服も準備しないとね。
ジェラールの赤い髪には、黒の騎士服が似合うと思うの。
ポトちゃんにも、ジェラールとお揃いのクラバットを作りましょうね。
イグネシアス公爵家の騎士だもの。」
「あら、ポトちゃん、あなたにもクラバットですって!良かったわね!!」
「メェェ!!」
「おっ!?この山羊は本当に賢いな。クライスより賢いのではないか!?
これから頼むぞ、護衛騎士ポト!!」
「メェェ、メェェ~!」
ジェラールは、ほのぼのとした雰囲気の中で、アルトとマリーナの言葉に、自分が見てきた貴族とは違うものを感じた。
ジェラールの見た貴族とは、利用し蔑み、下層階級の人々を嘲笑いながら踏み躙る存在だ。
しかし、アルトやマリーナは、自分の目で見て受け入れる器の大きい人間だった。
ファニアを、自分を、ポトまでも、有りの儘に受け入れるアルトやマリーナに、ジェラールは心の中で忠誠を誓ったのだった。
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