【完結】 契約が終わったら静かにお引き取りくださいと言ったのはあなたなのに執着しないでください

紬あおい

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47.家族




フィデルはすくすくと育ち、もうすぐ一歳になるので、今日は女医のアルベッタの健康診断だ。
ファニアの体も順調に回復していたが、ついでに診てもらうことにした。

「クライス様、今日は私も診察を受けますので、しばらく休憩なさってくださいね。」

「分かった。」

何だかんだ一日中フィデルの世話をしているクライスは、急に一人にされると何をしていいか分からず、ポトと庭園を散歩することにした。

そこにジェラールが合流し、男三人ガゼボでぼうっとしている。

「フィデルが居ないと寂しいな…」

「よく世話をしていると思うよ。馬鹿旦那は返上しただろう。」

ジェラールが微笑むと、クライスは首を左右に振り、否定した。

「まだファニアには許されていない…一緒に子育ては出来ているかもしれないが、夫婦としてはどうなんだろうか…
ジェラールと居る時のような笑顔を、俺には見せてくれない。」

ジェラールは、鈍感さに半ば呆れながらも、クライスに教えてやることにした。

「なぁ、クライス、いつか俺を兄貴みたいだと言ってくれたから、兄貴として話す。
ファニアは俺と居るから笑っているんじゃない。
俺とクライスの話をしているから笑っているんだ。
ファニアの笑顔、ちゃんと見たか?
お前を見つめる眼差し、あれが許していない顔に見えるか?
そうだったら、お前の目は節穴だ。」

「……えっ…?」

「なぁ、ポト。ファニアはちゃんとクライスを愛してるよな?」

「メェェ~~~!」

クライスは、驚きながらも顔をくしゃくしゃにして泣いていた。

「おいっ、お前、泣き虫だな!一児の父がいちいち泣くな!!
そんなんじゃ、俺はここから去れないだろ?」

「えっ!?ジェラール、居なくなってしまうのか!?駄目だ、そんなの駄目だ!!」

ジェラールは前を見つめながら、呟いた。

「惚れた女が無事に居場所に戻れたんだ。もう俺の役目は終わりだろう?」

「ジェラール…」

「もうお前達は大丈夫だろう。だから、俺も元居た場所に帰ろうかと思う。」

「山奥の荒屋あばらやに帰るつもりか?」

「ああ、そうだ。あそこしか帰る場所がないからな、俺には。」

「だったら、ここに居ればいいじゃないか!」

クライスは、ジェラールの存在を認めていた。
ファニアへの想いも引っくるめて、ジェラールを頼りにしていたのだ。

「お前、変わってるな。普通は嫌だろう?自分の妻に懸想する男なんて。」

「だってジェラールは、ファニアの兄貴でもあるじゃないか!だったら、もう俺達は家族だ。
人里離れたあんな寂しい場所に帰らなくていい。
ずっと護衛騎士をしてくれよ!」

「クライス…」

出来の悪い弟が覚醒したら家族になった。
こんな甘い話はない、きっと公爵夫妻には却下されると思いながら、ジェラールはそっぽを向いたまま涙した。

こんな時のポトは、二人の間で大人しくしている。
クライスは、きっとポトも同意しているのだと思うのだった。



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