山王学園シリーズ〜カサブランカの君へ〜

七海セレナ

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90.【教師の過去】

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俺達は好みのタイプ談義でさっきから結構な大声で話しているが、どれだけ騒がしくしても何も問題がないというのは本当に気楽でいい。

今まで大した活動もしていないが、教室でやるより先輩達とも距離が縮まったようで皆くつろいだ雰囲気だ。

諦めずに掃除の提案をして良かったと少し嬉しくなっていると外からノックする音が聞こえてきて、


小夜「うお!!めっちゃ綺麗になってんじゃん!!」

夕太「あ!小夜先生!!」


担任は部屋をぐるりと見渡して入ってくると机の上に袋を置いた。

出迎えた柊が早速何なに?と袋の中を覗くと、嬉しそうに顔を上げる。


夕太 「やった、ジュース!」

小夜「全員お疲れ様な、購買でジュース買ってきたから好きなの飲め」

蘭世「まじ!?」


柊と一緒に梓蘭世が袋から物色しつつジュースを出すと、一条先輩にいちごミルクを渡し自分はパックのミルクティーを手に取った。

柊がコーラを取って蓮池もどれどれと選びに行く。

俺は別に余り物でいいかと待っていると、三木先輩が2つ目の前に差し出してきた。


三木「藤城、オレンジとミックスどっちがいい?」

雅臣「えっ」


早く選べともう一度ジュースを前に出され、素直にミックスジュースを受け取った。


三木「俺はオレンジが良かったからちょうどいいな」


そう言って素早くストローを刺す三木先輩の気配りがどこか桂樹先輩に似ている気がした。


小夜「え、このエアコンまだ動くの?」


2階も一通り見てきて満足した担任がリモコンを手に温度調節をするが、何でここにエアコンがあることを知ってるんだ?


楓「よく知った言い方ですね」

小夜「そりゃあまぁね。これ俺らが高3の時取り付けたから」


………………。


全員が顔を見合わせる。

先程見た卒アルの中の担任は姿そのままに当時はしっかりヤンチャしていたんだろう。


夕太「……先生ヤンキーだったんだろ」

小夜「ヤンキー!?誰が言ったそんなこと!」


俺はそれはもう真面目な学生で、と半笑いで話す担任に柊がさっきの卒アルを開いて見せた。

ペラペラとページを捲り、ほら、と突き出すと担任は目を見開く。


小夜「俺、若っ!……まぁでもこの頃はもう落ち着いてたけどな」


___落ち着いてた?

これで??


梅生「お、落ち着いてた」

蘭世「金髪で耳に1.2…7個ピアス空いてて?」


俺と同じ気持ちの2年生が写真と担任を見比べて心底呆れた顔をした。

気にしたことが無かったが、よく見ると担任の耳には穴を開けた名残りが両耳ともあった。


夕太「校則でピアス駄目だったんじゃないの?」

小夜「まぁでも生まれた時に開けられてたらそれはさぁ?ねぇ?」


宗教なら仕方がないよなと至極当然のような口ぶりをするが、嘘八百の胡散臭い言い分に当時の教師はかなり頭を抱えたことだろう。

担任の昔を知る教師全てが苦い顔をする理由が分かった気がした。

多分この人にどう注意しても思いもよらない角度から説き伏せてきたに違いない。

蓮池も感が良くてそういう所が多々あるけれど、この飄々と嘘を言ってのける感じはあいつより遥かにタチが悪い気がする。


三木「元は資料室なのに学校側じゃなくて、生徒だった顧問がつけたんですか?」


確かに。

三木先輩の質問が的を得ていて、一介の生徒が何故わざわざエアコンを取り付けるのか。

いくらヤンキーでもそんな勝手な事したらかなり怒られるよな。


小夜「そもそも、ここ元は用務員室だったんだよ。で、新しく用務員室が出来たと同時にモリゾーに許可取らせてここを俺ら写真同好会の部室として使い始めて___」


あ、ちなみにモリゾーがそん時の顧問なと笑う担任に教頭とかなり親しく話している事にも納得がいった。


小夜「そしたらまさかのエアコンは新しい用務員室に持ってかれちゃってさ、クソ暑いから俺と友達で業者呼んでデブなモリゾーが勝手に取り付けたことにしたんだよね」


…………。

暑さに耐えられないデブを盾にしたってわけ、と至極突然のように頷く担任によく通ったなと皆細い目をして呆れてしまった。

確かに教頭は巨漢だが、撤去されたからといって1教師が許可もなく勝手に取り付けれるわけがない。

しかもお金を出したのが当時生徒だった担任とその仲間だなんて、教頭は相当苦労してたんだろう。


夕太「えー、写真なんて意外。何撮ってたの?」

小夜「アイドル追っかけてパンチラとか」


担任の言葉に目眩がしそうになる。

ヤンキーとアイドルの世界線が一体どうやったら繋がるというのか。

しかもこの人が追っかけするとは思えなくて理解不能だが、この缶の中身だけは納得がいく。


小夜「そもそも俺らの時は同好会もOKでさ、生徒会に許可とかなかったから自由に作れたわけ」

楓「あぁ、自由にしすぎると後の代にツケが回ってきますもんね」


蓮池の絶妙な嫌味に担任は苦笑しているが、相当やらかしてきたんだろう。

写真同好会とは名ばかりで実際はこんな犯罪ギリギリに近い写真ばかり撮っていたとなれば、今のようにサークル設立が厳しくなるのも無理はない。


蘭世「げー、先生アイドルとか好きなん!?」


全然見えねーと顔を顰める梓蘭世に、


小夜「馬鹿、違うわ!同好会はモリゾーの為に俺らが作ったの!!」


モリゾーって、教頭のために?

一体何しにと全員の頭に疑問符が浮かぶ。


小夜「モリゾーがもうあずにゃんの物凄いファンで…… あずにゃんてのはな、昔の栄の地下アイドルでダイヤモンドシスターズのメンバー__」

夕太「もしかしてこれ?」


柊は缶を指さすと、そうそうと担任は缶の中を漁り出す。


小夜「そうこの子!!あずにゃんだけピンクの高級菓子缶でランダムブロマイドかなんかがそっちの……」


なるほど、色んな子が入混ざっていたのはお目当ての子を得るために必死になった結果だったわけか。

あの教頭が若かりし頃地下アイドルの追っかけをしていただなんて信じられなかった。


小夜「モリゾー1人が推してもあんまり売れねーから同好会全員で見に行ってあげてたんだよ。俺らは部活に所属してる事になるしモリゾーは顧問になれるし一石二鳥でな」


担任はモリゾーの為とか言って美談にしているが、本当は自分達が部活に所属しなきゃならないから教頭を利用したようにしか思えない。


三木「そうですか…」

小夜「あ、この建物の裏側に行くと塀が低くなってるからパーティーするなら食べ物系はそこから宅配受け取れよ」


こうやって自由にやりすぎた人達がいるから校則は改訂されサークル設立のルールも厳しくなったんだなぁ……。

いいんだか悪いんだかの担任の話を聞きながら、柊は俺の横で未だにあずにゃんの写真を眺めていた。


楓「何、夕太くんもそういうのがタイプなの?」


蓮池が知らなかったと片眉を上げると、


夕太「いや、俺は綺麗系のが好きだから…じゃなくて、こーゆう子って今何してるのかなって」


しっかり好みのタイプじゃないと明言しながら、柊は売れなかった地下アイドルの行末を気にしていた。

確かに一昔前とはいえこんなに際どい露出をさせられて、アイドルとはいえ大変な商売だよな。

ふと梓蘭世を見ると余計に人気が出るなんて一握りの世界だよなと思う。

一般人に戻ってそんな時もあったなと幸せにやっているのが1番だと考えていたら、


小夜「あずにゃん?今モリゾーと結婚してるぜ」


「「「「「「えぇ!?!?!?」」」」」」


担任の爆弾発言に全員同時に驚愕の声を上げてしまった。

やべ、と担任は舌を出すが、言ってしまってはもう遅い。


蘭世「あの人結婚してたんだ……」


梓蘭世の言葉に俺もそういう認識の元でいたのでびっくりしてしまった。

指輪だってしてないし……いや、これは見下してるとかではない。

失礼だけどあのなりで結婚してるとは到底思えなかたのだ。


梅生「独身だとばかり……」


分かりますと一条先輩を見て何度も頷いてしまう。

こういってはなんだが教頭は某オタクのイベント会場に確実にいる雰囲気で結婚とは程遠い。


三木「俺らが卒業するまでに結婚するか賭けていたが……リオには教えないでおこう」


何してるんですか高3にもなってあんた達は本当に……。


楓「あのデブがねぇ……」


待て待て蓮池、もう少しオブラートに包んで言え。


夕太「豚に真珠ってこと?」


柊の言い方も絶対に使い方がおかしい。


雅臣「……オタクの大逆転結婚」


皆のコメントを聞きながらもつい口が出てしまった俺の一言が全員ツボだったのか、部屋が大爆笑に包まれた。

再び一気に騒がしくなる部室に、担任は気まずそうにしながらお前らはよ帰れ!と一括した。





____________
【後書き】

読んでいただきありがとうございます。
お気に入りやいいねがいだだけて本当に嬉しいです!
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そしてついに90話!
読んでくださる皆さんのおかげで書き続けられています!これからも毎日更新しますのでよろしくお願いします✨
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