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蓮池楓のゲーム日記1
しおりを挟む楓「美沙子さんありがとうございました」
「いいのよぉ!楓さんのお友達びっくりしてて可愛かったわぁ!」
高校生なら誰でもいいのか。
ババアはほんときめぇな。
大体あのアホはアホで何しに俺んとこに電話掛けてきたんだとは思ったがある意味ナイスタイミングだった。
こちとら絶賛華展の準備前、とはいえジジイが横からあーだのこーだの口出ししてくるわハゲは俺と似たような作品作りやがるわでもうキレそうだった。
少し抜けて休憩しようとしたところにトイレから出てきたあの勘違い発情ババアとバッタリ遭遇してしまった。
無駄に話したがる素振りを見せてきて勘弁しろよと心で中指を立てていると、良いんだか悪いんだかのタイミングで陰キャから電話がかかってきた。
ババアと立ち話なんてする気もない俺は咄嗟にあの女に電話に出させて滅多にない男子高校生と話せる機会を与えてやり、陰キャには女と話す機会を与えてやって……。
はぁー、俺っていい奴だわぁ……。
ババアとはいえ生物学上はメスだし、母性に飢えとるあいつはそれはさぞかし嬉しかっただろう。
ブランドを買い漁っていても発散しきれない苛立ちをどうしたもんかと考えながら自室に移動する。
一旦帯も襟も全てを弛めてから、自室に設置してある簡易冷蔵庫を開けて炭酸の入ったオランジーノを取り出した。
ベッドに腰をかけて一気にそれを煽るとしゅわしゅわと弾ける炭酸が口に広がりようやく肩の力も一緒に抜けた気がする。
楓 「これ廃盤になる前に買い占め……あ、」
スマホでブランドのサイトを漁りながら、ふと足元に夕太くんのくれたマヌルネコのマスコットが落ちていることに気づいた。
気に入って買った螺鈿細工の飾り棚の上に飾っておいたのに何かの拍子に落ちてしまったのだろう。
今まで夕太くんから貰ったものは大切に棚の上に1つずつ並べてある。
慌てて拾い上げると何となくそれと目が合って、苛立つ気持ちも全て引いて自然と口元が綻んだ。
夕太くんが俺の為にわざわざマヌルネコを取ってきてくれたと知って、久しぶりにそんなことをして貰えて本当に嬉しかった。
夕太くんは元々UFOキャッチャーが大好きでゲーセンに立ち寄ってはアームの強さを見るとか言って数回やるのはざらだった。
前はたまたま取れたぬいぐるみを俺にくれたのに、中2ぐらいからパタッと止んでしまい最近はめっきりそんな機会もなくなっていた。
楓 「……言えないよな」
どうしてくれなくなったのなんて、夕太くんに言えるわけがない。
マヌルネコの頭を撫でて元の位置に戻す。
瞬間スマホの通知音が鳴って、画面に目をやれば〝おすすめの新しい思い出〟と通知が表示されている。
スマホの新しい機能なのかフォルダに入ってる華の写真が纏められていて、そういえばとチャットのアルバム欄を覗いた。
楓「ははっ………」
1枚の写真につい声を上げて笑ってしまう
それは夕太くんがコアラのマーチングを巨大チョコボールに変える技を披露した時の写真だ。
『箱を思い切り振りまくってから袋を開くと全てのコアラのマーチングは1つに纏まりチョコボールになる』
夕太くんは昔からそう豪語していたけれど、もし本当にそんなことをされたらそれを食べるのは俺になる。
それが嫌で俺は絶対食べないからね、と断ると渋々諦めた夕太くんが1つずつ食べるのがコアラのマーチングを買った時の一連の流れだった。
しかしこの日は無類の甘いもの好きが横に座っていたおかげで夕太くんは念願叶って妙技を披露できたわけだ。
楓「うわ」
よく見るとその横には目をひん剥いて無様に口を開けたままの陰キャも写りこんでいて舌打ちしてしまう。
___こいつほんと…くそ、またイライラしてきたな。
あのバカは夕太くんが俺のマヌルネコのついでに取ったクロヒョウを後生大事に新学期から通学カバンにぶら下げてくるのがもう見える。
プールでも友達気取りで俺と夕太くんの写真を撮ってやるだなんて偉そうに、相変わらずどこポジだよと死ぬほど腹が立ってきた。
楓「……俺は写真なんか嫌いなんだよ」
何とか写真を撮ろうする陰キャを躱した時のことを思い出す。
わざと飲み物を買いに行くフリをしたけれど、しばらくして遠目に見た夕太くんは浮かない顔をしていた。
楓「はーやだやだ、きも、最悪、何だってこんな……」
てか、あの陰キャ本当にしょーもない内容で電話なんかかけてきやがってなんなんだ。
とび森のフレンドとか抜かしてたけど夕太くんにかけた方が確実なのに__。
………。
待てよ?
夕太くんじゃなくてこの俺と通信したい理由が何かあるのか?
夕太くんが陰キャにとび森を勧めたと言ってたのはほんと最近のことだし、多分今日か昨日あたりにゲームが届いたはず。
………となると、アイテムか素材欲しさに俺に情けなく頼んできたってところか。
我ながら名推理だわ。
それにあの気取り散らかした男が作る部屋なんかもう簡単に想像がつくが、暇つぶしに覗きに行くのも悪くない。
フレンドコードを要求すれば浮かれて直ぐに送ってくるだろとチャットに送れば、ものの数秒で返ってきて巣に絡まった獲物を食う蜘蛛の気持ちがよく分かる。
楓「掛かった……」
適当に放置してあったゲーム機を取り出してテレビに繋げると画面に透けて映る俺の顔はものすごく口角が上がっていた。
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